推しの子 〜Revenge of the Brother and Son〜 作:よもぎもなか
重曹ちゃん「ドラマってのは部屋の中で主演級が本読みやリハーサルをしてそれを元に監督やDがコンテを切る 撮影場所でドライやカメリハランスルーを踏んでから本番……っていうのが一般的なんだけどこのロケ地は一日しか確保出来なかったらしいから ドライからランスルーは全部一纏めでリハーサル扱い 練習は一回切りよ」
アクア「雑だなぁ うちの監督でももうちょい丁重だぞ」
重曹ちゃん「予算も時間も無いのよ」
皇帝「クソみたいな現場だな……まじで」
重曹ちゃん「あ……」
⁇「よう かなちゃん 今日の雨ヤバない? 撮影延期して欲しかったわ」
重曹ちゃん「ちょっと雨漏りしてる所あるみたいだけど平気よ」
⁇「湿気あるとさー髪 広がるんだよねー なんかココジメジメしてて不快だし……」
重曹ちゃん「紹介するね こっちの人は今日の………あっ ストーカー役の」
アクア「星野アクアです よろしくお願…………」
⁇「よろー」
皇帝「なんだあの演技ど素人 自分が一番とでも思ってんのかよ」
アクア「確かに態度は悪かったですけど落ち着いてください っていうか名前聞けてないんだけど」
重曹ちゃん「名前は
アクア「はじめまして苺プロ所属の星野アクアと申します 本日はよろしくお願いします」
鏑木「ああよろしくね」
アクア(…………鏑木勝也 星野アイとなんらかの関係があった男……俺とルビーの血縁上の父親でアイの死に関わったかもしれない男)
皇帝(隙を見てDNA鑑定に回せるもの回収するか)
重曹ちゃん「今の人がこの現場の責任者 あの人意見が監督やDを通して現場に伝わる モデル事務所との繋がりが強い人でね 今回のキャスティングはほとんど彼の仕事 とにかく顔面至上主義の人でね アクアを使って貰えたのもその辺よ」
スタッフ「リハ始めまーす」
重曹ちゃん「行くわよ 台本は頭に叩き込んでるわよね」
皇帝(アクアの役はヒロインに付きまとうストーカー役……アイを殺したストーカーの事を思い出しちまう)
スタッフ「はい スタッ!」
〜・〜・〜・〜・〜
スタッフ「一旦止めまーす」
重曹ちゃん「普通に演技できてるじゃん 何が裏方志望よ」
アクア「こんなの練習すれば誰でも出来る 他人の邪魔をしない程度に下手じゃないだけで俺自身になんの魅力もない」
(あの日 有馬かなが見た俺の演技はあくまで年齢とギャップが引き起こした 精神年齢に肉体が追いついた今となっては俺はどこにでもいるただの役者)
「なんか 凄い演技を求めてたなら悪いな」
重曹ちゃん「そんな事……まぁちょっとも期待してなかったと言えば嘘になるけどじゅーぶん」
皇帝「アクアの演技は細かいテクが親切で丁寧っていうか 自分のエゴを殺して物語に寄り添ってる感じがするな」
重曹ちゃん「全部セリフ取られた!」
皇帝「悪い悪い …っというか良くこんなとこで働けるな」
重曹ちゃん「確かに少しアレだけど ずっと仕事が貰えずネットでは終わった人扱いされて でもずっと稽古だけは続けてて 何のために努力してるか分からなくなって 何度も引退って言葉が頭をよぎって…………だけど!こうやって実力が評価される時期がきたのよ!」
皇帝「なるほどね………」
皇帝(マルボロのメンソール……鑑定に出すなら吸い殻三本は欲しいな)
鏑木「撮りの再開まだ? メルト この後雑誌の撮影入ってるけど」
スタッフ「もうすぐです キャスト陣は有馬さんが宥めてくれてるって言ってていうので…………」
鏑木「かなちゃんねー 使い勝手楽でいいよね 誰にでもいい感じに尻尾振ってくれるから雑に据えとくには丁度いい」
皇帝・アクア「!」
鏑木「有馬かなっていう名前はいちおー世間に浸透してるし 事務所抜けてギャラの殆どただ同然でネームバリュー使えるんだから得したよ まぁ演技にうるさいのは迷惑だけどな 演技力なんて求められてないのに そこだけはわかって位ないみたいだけど」
アクア「評価されてねぇじゃん」
(世の中そんなもんだぞ有馬かな 適切な評価なんて与えられる方が稀だ 採取も終わって皇さんに渡した 目的は果たせた…けど……)
「せっかくだから滅茶苦茶やって帰るか」