推しの為に死ぬ話。   作:ざるそば

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推しの為に全てを出す。

 

 

 

 

 

 マギラに連れてこられた場所――館の地下。子どもが走り回って遊べそうなほどの広さを持つ部屋。そこにあるのは巨大な魔法陣ただ一つ。

 彼女と共に世界の各地を回ってきたが、ここまで広いのは初めて見た。

 

「ここに足を踏み入れるととある場所に跳ぶわ。いい? 決して失礼のないように」

「は、はい」

 

 足を踏み入れると魔法陣が光り出して、辺りが眩い光に包まれる。

 目を開けると、黒い空間に黄金の玉座。一人の男がそこに腰かけていた。足を組み、上から俺を見降ろしてきている。

 マントを羽織り、金の装飾をつけた精悍な男性が一人。まるで王のような気配を漂わせていた。

 

「ほう、その小僧か」

「ええ、私と彼で見定めました。貴方様の前に立つ資格があると」

「ふむ……あぁ、別に名乗る必要は無い。余には不要だ」

 

 俺の全てを擲っても、この人物には届かないと。魂の底からそう思ってしまう程の威圧感があった。

 

「ヴァン、改めて言うけど決して失礼のないように。この方は、世界を創られた方。この世の終わりまでこの場で貴方達の生きる世界を見届けているのよ」

「うぇっ」

 

 想像以上の人物であったことに思わず、変な声が出てしまう。

 

「ちょっと……!」

「構わん。余の前に立つのが小僧であれば、失神してもおかしくなかろう。赦す、二度目は無いがな。

 ……マギラ、こやつにこの場へ来る意味は伝えてあるか?」

「いえ、そこまではまだ。まずは貴方様の眼前で正気を保てるかの段階でしたので」

「ははははは、確かに。来たのが見るに堪えない者であれば、貴様ごと消していた」

 

 その傲岸不遜な口調と尋常ならざる気配。

 本能が、目の前の存在を次元の違うモノだと捉えていた。

 

「――貴方は」

「ヴァン、まだ話す許可を得てないから……!」

「良いぞ、申してみよ」

 

 

「――貴方はもしかして、魔王と呼ばれていた存在ですか?」

 

 

「は、ははははははははははは!!!!! 全く、人と言う物はこれだから!!

 ――それも、貴様が有する前世の知識か? 良い、久々に興が乗った」

 

 バレている、前世の事も何もかも。

 つまりこの世界の神であるという事に一切の偽りはない。

 

「小僧、名前は何と言う」

「ヴァンです、ヴァン・カーハインと言います」

「ほう、カーハイン……。ああ、人の世から零れ落ちた者か。余の世界に異物が混ざる事は珍しいのでな。大抵は名を馳せるか、富を築くかのどちらかと聞いている。

 ――おっと許せ、こちら側の話だ気にする必要は無い」

 

 神様――本当にこの世界にいただなんて。

 そう考えてふと、ある考えが脳裏をよぎる。聞いても、いいのだろうか。

 

「ふむ、質問の答えがまだだったな。如何にも、余は人にとって魔王と言う存在に他ならぬ。人を脅かす魔物を作り出しているのは確かに余だけだ」

「……何故、ですか。貴方はだって」

「つまらぬからだ」

 

 顔色一つ変える事無く、神様はそう告げた。

 飽きたと言わんばかりの表情で。

 

「人の世が繁栄して数千年。争いも無かったわけではない。それは理の常だ。夜が明ければ日が昇るように、海があれば大地があるように。

 だが、同じだ。結局は繰り返しだ。新たな進歩がない、次の繁栄が無い。――そんな世界、見ていて何が面白い?」

 

 その言葉に、ようやく神と人の違いが分かった。

 視点が違いすぎるのだ。限られた時を生きる者と永遠を生きる者。その価値が同じになんてなる訳が無い。

 

「だから魔物を作り出した。人の世を憎むものに試練と力を与え、苛烈なモノとした。あのウェルナスと言うヤツめも同様だ。

 アレの憎しみは、人を脅かす。故にそれから身を守るべく世は進歩と発展を進めていく」

「……貴方にとって、人は楽しみなんですね」

「ほう、その通りよ。――さて、話はここまでだ。貴様の望みは何だ? 試練を乗り越えれば、対価として叶えてやらんでもない」

 

 それは契約なのだと、本能が理解した。

 言葉にしたが最後、決して反故にする事は許されない。後戻りは出来ない。

 

「俺に、力を。ウェルナスを倒すための力を」

「――ふむ、貴様とアレの差は著しい。何せ数年と数百年だ。その差を埋めるのであれば一つの試練では足りぬぞ?」

「はい、覚悟の上です」

「……心得た。試練を乗り越えられなければ、罰として貴様の命を貰う。無論、マギラめもな」

「なっ……!」

 

 何で、彼女は関係ないと言おうとして――心の何処かで納得した。

 

「ああ、そうだ。ここにくるのであれば、相応の格がいる。それを見定められぬ者に余の従者たる資格は無い」

 

 大丈夫、背負うものが増えただけだ。

 超えたらいい、超えられればいい。

 

「では、行くぞ。次に目を開けた時、既に試練は始まっている。せいぜい、楽しませるがいい」

 

 その言葉に心して目を瞑る。心を強く、気を保つ。

 ふと、耳に聞こえたのは神様の言葉。

 

『落ちる手を掴もうとするのであれば、せめてその重み程度は知っておけ。自らの命を賭けるならば猶更な』

 

 眼を開ければ見えたのはアイリスと言う少女の幼少時代。

 前世の俺が知り得たのは内容。そんなモノ、彼女の人生からすればたった一ページの数行程度しかなくて。

 

「――」

 

 その内容に俺は言葉を失うしか無かった。

 

 

 

 

 私には、何の意味もありませんでした。

 私には、何の理由もありませんでした。

 でも、きっと生まれて。生きているだけで、幸福なのだと分かっていたので。

 短くとも納得のいく、人生でした。

 

 

 

 私はアイリス。勇者を幾度も生み出した家系に零れ落ちた者。

 父は剣を振るい武勇を誇り、母は魔道を以て知を探求する。

 兄は剣に優れていました。姉は人の才に溢れていました。弟は知に富んでいました。妹は魔道に秀でていました。

 そんな私にあるのは半端な回復。傷を癒す事しか出来ない、誰にでもできる初歩的な事。父母や兄弟姉妹のような力は無く。

 私には、何もありませんでした。この無力な体に流れる血と生まれだけしか。ああ、強いて言えば簡単な傷を癒す程度。でもそんなもの、診療所にでも行けば誰にだって叶うものです。私である必要はありません。

 

「アイリス、私の言う事を聞きなさい」

“はい、お父様”

 

 これでいい。

 

「アイリス、私の言う通りにしなさい」

“はい、お母様”

 

 これでいいのです。

 だって私には何も生み出せない。何も変えられない。

 なら、そんな私が選ぶ事なんかに意味はないのですから。

 

「さすがだ! さすが長男だ! 次の勇者候補だ!」

 

 お兄様は戦いで戦果を挙げました。凶悪な魔物を打ち倒し、脅威から人々を救いました。

 私には出来ません。

 お姉様は人を集め、街をより良いモノへと発展させました。あの人の下で生きていたいと、人々が次から次に集っていきます。

 私には出来ません。

 弟も妹も、皆が人の世に貢献出来る力を活かしています。

 私にあるのは、誰にでも出来る簡単な事だけ。流れる血の癖に、大した力も持たないこの両手が余りにも軽すぎて。

 何を握ればいいのか分からないまま、ただ時間だけが過ぎ去っていく。

 どこを目指すべきか、どうあるべきなのか――それら一つとて、見えないまま。

 ああ、でも憧れる事があると言えばそれは一つ。

 いつか、大きなパーティに呼ばれた時自由奔放に振舞う人がいました。周りなど気にせずに、自分のやりたいようにやっていた少年を。

 幼馴染でありながら、その手は遠いと感じてしまう。

 彼のように振舞えたら、彼のように生きられたら。

 ふと、そんな意味のない事を考えてしまいました。

 そんな事、期待に応えられなかった私になんか許される筈が無いのに。

 私に自由はありません。

 私に未来はありません。

 でも、それでいいのです。

 

 私は、例えどうあっても生きていけるだけで幸せだったのです。それに形なんて求める必要は無かった。

 例えその終わりが唐突で無慈悲なモノだったとしても。

 きっと、その終わりは私にとって恵まれたものでしょう。

 

 

 

 

 

 ふざけるな。

 そんなもの、どこが人生だ。

 何一つ自分で意味を見出せずに終える生。そんな終わりのどこに満足をしたと言うのか。それのどこを幸福だと言えるのか。

 

『ほう、可笑しな事を言う。お前の目指す終わりとどこが違う?』

 

 違う。全く違う。

 俺はこれが自分のやりたい事であり、何よりも叶えたい願いだ。

 その果てに終わりだとしても、俺はそんな理由で走り抜ける事に悔いはない。

 

『……』

 

 何より、俺はこの世界を知った。師匠に、あの人に。多くの人に教えて貰った。

 世界は自分が考えているよりももっと広くて、大きくて。

 どこまで行っても、知り尽くせる事なんかなくて。

 誰かと共に食卓を囲み今日を振り返り明日に思いを馳せる時間。例え歩みは遅くとも昨日の自分より良くなったと教えを認めて貰った一時。背中を預ける者と共に未開の大地へ足を踏み入れる瞬間。命の削り合いで、互いの命を繋ぎ止めながら強大な存在へ向かっていく刹那。

 そんな全てを、俺は愛しく。手放したくないと思ったんだ。

 

『――』

 

 そんな事を知らないまま死ぬなんて、悲しいじゃないか。心から美しいと思ったモノは、決して裏切れないモノは絶対あるんだ。

 そのためなら、人はどこまでも足掻くんだ。

例えその先が無様な終わりだとしても、大事なモノのために傷を負ってでも駆け抜けようとするその生き様を。一体誰が、笑う事なんて出来るのだろうか。

 だから俺は、そんな人に幸せになって欲しいと心の底から願うのだ。

 

『――……そうか、お前は。あの娘を美しいと、そして裏切りたくないと思ったのだな』

 

 ああ、そうだ。

 俺にとっての輝ける星。それは見上げればいつだって輝いていて、道標のように真っ直ぐな光。

 前世でも、そして今の世界でもそれは変わらない。

 

『例えそれが、決してその身に振り向く事が無いとしてもか?』

 

 俺にとって怖いのは彼女がこの世界に存在しない事を目の前で見てしまう事。

 だから、もう二度と会えなかったとしても。もう二度と言葉を交わせなかったとしても。

 彼女が笑って生きてくれてるのなら、それでいい。

 

『……そうか、それがお前の覚悟か』

 

 ふと、視界が白く染まる。

 辺りはどこまでも同じ色が続く世界。見えたのは謎の影が一つ。それは、顔の無い存在でありながら強い威圧感を放っていた。

 

『余の声が聞こえているな? 貴様は確かにその人間を救うに値すると余は見定めた。

 だが、お前の払う代償では例えどう足掻こうと時間が足りん。ありとあらゆる備えをしようと、絶望的なまでに技量が無い』

 

 そうだろうとも。ウェルナスの生涯と俺の生涯では、時間も経験も何もかもに差があり過ぎる。

 才能では埋めれない時間は、凡才にとって致命的だった。

 

『故に、ここで死に続けろ。時間も概念も、この世界では既に何一つ関係が無い。

 この試練を超えて見せろ。それを以て、余はお前の行く末を見届けるか決断する』

 

 最初の百回は何も出来ずに殺された。

 耐えろ、こんなの。心が苦しいよりずっとマシだろ。

 

「ぐっ、がっ……!」

 

 次の二百回からかろうじて受け止められた。

 まだ耐えられる。師が亡くなった時の空白に比べれば全然。

 

「ぎぃっ、ぁっ……」

 

 そして千を超えたあたりからやっと打ち合いが成立して。

 泣くな、彼女の苦しみに比べればただ痛いだけだ。

 

「……ぁ」

 

 万を超えてから傷を与える事が出来るようになった。

 思考が鈍くなる。

 

「……」

 

 殺され、殺され、殺され続けて。

 心が折れそうになる。痛みに、死に悲鳴を上げてのたうち回って、目を閉じたくなる。

 だけど、それでも。

 

“満足のいく人生でした”

「おぉ……!」

 

 それでもまだ。

 

“私は私の人生に納得していますから”

「おぉぉぉ……っ!」

 

 彼女が笑って、未来を生きてくれるなら。

 俺は――。

 

「おおおおおおっっっっ!!!!」

 

 死を超えて幾星霜。

 凡才の剣はやっと最強へ届くに至った。

 

『見事だ――勇者とは、貴様のような男を示すのだろうよヴァン・カーハイン。

 選んだ運命を、果たしに行くがよい。余はここから、貴様の終わりを見届けよう』

 

 

 

 

 激戦の最中に、ヤツは急に距離を取った。何か大技の兆候かそれもフェイントか思案するも、動き出す気配はない。

 数秒が経過した後、ウェルナスは構えを解いた。

 けれど俺は構えを解かずに、足に力を込めて剣を握りしめた。この男にとって、予備動作など無くとも俺を殺す事が出来るなんて分かっているからだ。

 けれど技は来る事無く。様子を見守っているとヤツは俺に向けて頭を下げた。その意図が分からず、思考が僅かの間混乱する。

 

「お前を弱者と侮った事、心の底から謝罪する。――お前は紛れも無い戦士だ。

 儂の前に立ち続け、単身で打ち合い、折れる事無くそこに立っている」

「……俺一人だけの結果じゃない」

「構わん、儂にとってそこに大差はない。

 強き戦士よ、改めてその名を聞きたい」

 

 剣を構え、小さく息を吐く。

 本来、この物語にとって取るに足らない存在だった者。世界の片隅で忘れ去られ、誰の記憶にも残らず生を終えたであろう者。

 そして、今この場では本当にどうしようもなく、身勝手な理由で走り続ける者。

 

「ヴァン。ヴァン・カーハイン」

「良い名だ、良き顔だ、良き戦士だ。俺の生涯はお前と出会う為にあったと呼んでも過言ではない程に。

 故に――儂の全てを擲って倒すべき戦士であると認識する」

 

 その体から、残った膨大な魔力があふれ出す。

 来る。ウェルナスの力の秘奥。生ある者にとって死を免れぬ絶対の破壊。

 

「父よ、母よ! 友よ、民よ! 無益な戦を見届けたまえ! 訪れる死に安寧を与えたまえ!

 かつて、世界を破滅させ混沌に陥れたモノ。万象を滅ぼし、新たなる理を紡いだ創生の光!

 深き死の海で輝く終わりの星よ! その光を以てして、運命に抗いを!!」

 

 空が、綺羅星で満たされていく。その一つ一つが一点に集い巨大な球体へと変化を遂げていく。

 大地が大きく振動していた。

 まだ技を解放している途中だと言うのに、その余波だけでこの世界が焼け落ちようとしていた。

 

「覇王臨界――止めて見せろ!! 勇者よ!!!」

 

 その球体から、一筋の光が怒涛の如く押し寄せる。

 それが地表に着弾した途端、俺は間違いなく死ぬだろう。

 

「鍛造炉心、鋳造融解。我が師よ、ここまで支えてくださった貴方の剣に惜しみない感謝を」

 

 息を吐きながら剣を構える。魔力が数多の光となって刀身に集いながらその輝きを増していく。

 それは神様に見せて貰った、星が生まれる時のような眩さ。

 

「貴方の生涯を、此処に――」

 

 振るえば、それはウェルナスの放つ魔力と激突し互いに相殺し合っていく。

 魔剣解放――剣が消滅する代わりに絶大な効果をもたらす奇跡。生半可な出来の剣では叶わぬ秘法。

 あの人が命を賭けて打った剣が、それに至らぬ筈が無い。

 その剣に込められた願いは守り。自身をあらゆる破壊から守り抜く、決して砕かれる事の無い誓い。

 激突しあうソレは、一際大きい閃光となって世界を包み込んだ。

 

「ありがとう、ございました。貴方に出会えて良かった」

 

 砂煙と轟音――それが明けた時あったのは文字通りの地獄。

 地面は溶け、まるでマグマのように燃え滾っていて。そこから立ち上る蒸気は大地の悲鳴のよう。

 結界として構成されていた世界は燃える破片となって、砕け落ちている。

 そんな最中で、ふと多くの人の影が見えた。

 

「あれ、は……?」

 

 現実の世界――どれだけの時間が経ったのか分からないが、王国騎士達が周囲を囲んでいた。

 

「囲め、油断するな! 僅かでも気を緩めたら殺されるぞ!」

「少年、下がれ! 後はこちらが請け負う!」

 

 騎士達の言葉に俺が返そうとした時、衝撃が辺りを駆けた。

 ウェルナスが拳を大地へ叩きつけている。ヤツにとっては両手を叩いたようなモノだろう。

 たったそれだけで、誰もが息を呑んでしまう。

 

「――騒ぐな有象無象。貴様らはそこで見ておけ。この戦いに水を差す事は、この国の終わりと同意義である事を理解せよ」

 

 声と殺意。それだけで騎士達は思わず背後へ下がってしまった。

 確かに、戦っていた俺ですら寒気を感じてしまう程だったのだから。騎士達にとっては蛇に睨まれた蛙も同然だったろう。

 

「大丈夫です、下がっていてください。怪我人の救護と被害の軽減を。

 コイツは俺がやります」

 

 俺の言葉に、騎士達は無言で距離を取っていく。良かった、これ以上迫って来ないのなら助かる。

 さすがにこの戦いで、巻き込んで犠牲者を出してしまう訳には行かなかったから。

 

「……成程、お前が守ったのは肉体とその周辺か。そしてその体。どれほどの修練と苦痛があったのか。

 魔道装甲――魂を移し替えるとはな」

「そこまで分かんのかよ……」

 

 着ていたローブは文字通り灰と化し、露わになった俺の総身はまるで半壊した鎧と溶け込んだかのようになっている。

 やつの言葉通り俺の全身は、魔道装甲に全て置換してある。師匠の準備した素材。そしてそれにマギラが一から設計し知識と技術を総動員して組み立てた。神様が試練を超えた事を示した証として俺の魂を移し替えた。

 ――決して俺一人ではここまで来れなかっただろう。

 出会いに恵まれた。それだけは間違いなく胸を張って言える。

 

「で、あれば儂も全てを擲たねばならんな」

 

 ヤツの体に紋様が走る。迸る魔力と紫電――感じる圧は、間違いなくヤツが最後の全力である事を告げていた。あれ以上のモノは決してこの世に決して存在しない。

 最後の局面だ。

 俺一人ではここまで来られなかった。

 師匠、マギラ、神様――そして出会ってきた多くの人達。彼らに導かれて、俺は今ここに立っている。

 

「ウェルナス・アウグリス・ファナシェイア――我が名、我が命、我が生涯に賭けてこの戦いとその結末を祝福しよう。

 来い、戦士よ」

「――ヴァン・カーハイン参る」

 

 心臓に熱が灯る。握りしめた右手に炎が宿る。

 さあ、行こう。

 ここからは命を燃やす戦いだ。

 

 

 

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