憑依転生げとーさん、パン屋を開く   作:どこはかとなくやばい人

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この話書き終えた直後に宿儺がやらかしてくれた為、少し温めてました。
校正とかはしてないのでいつも通り多分誤字してます。皆さんいつも誤字報告ありがとうございます。


伏黒恵

「久しぶりだね、恵」

「そう……すね」

 

 やたらとツンツンした非常にセットが面倒そうな髪型の男子高校生──伏黒恵は、申し訳なさそうな顔をしながら私に話しかけてきた。

 

「どうしたんだい?」

「いや。なんで知ってんだって、聞かないんですね」

「大方灰原からでも漏れたんだろう? 恵なら例のクソ白髪と違って問題も起こさないだろうし、問題ないさ」

「それは、ありがとうございます?」

「ああ、それで構わないとも」

 

 十種影法術の使い手、術師殺し伏黒甚爾の実子ととんでもない厄ネタを抱えて高専に飛び込んできたこの子の相手を務めていたのは、主に私だった。

 最強コンビのマシな方、まだ一般常識があり、尚且つたいていの術師や刺客なら返り討ちにできる、ということで護衛役を任されていた。

 まさか、本当に禪院から"伏黒恵を売り渡せ"という交渉という名の脅迫文が届いたり、術師が差し向けられるとは思いもしなかった。まぁ私と悟でそれらは全て封殺したわけだが。

 

「大きくなったね、本当に」

「まぁ、成長期ですから。そりゃ大きくもなります」

「そうか。調伏は順調かい?」

「それなりに。あんまりペースが早いと余計禪院に目を付けられる、って五条先生から言われたんで、今はコンビネーションの方を重点的にやってます」

「聞いた手前アレだが、私もそれでいいと思うよ。せっかく近接ゴリラが複数いる環境に身を置けているんだ、体術もできるに越したことはないからね」

 

 伏黒甚爾ことクソゴリラに、フィジカル面も天才的な悟、正史を辿れば恐らく東京校に入学しているであろう、術師基準でちょっとだけ身体能力が高い禪院真希。

 これだけのメンツが揃えば、武器だろうと無手だろうとなんでも指導することが可能なはず。

 

「あ、注文忘れてた。…‥なんかおすすめとかありますか」

「うーん、そうだね……。メロンパン、かな。恵みたいな男子高校生からすると、微妙かもしれないけれど」

「男子高校生でもメロンパンぐらい食いますよ。じゃあ、それを三つで」

「三つ?」

「はい。俺の分と、後は同級生の分です。買ってかないと五月蝿そうなんで」

 

 釘崎野薔薇はともかく、虎杖悠仁はメロンパン一つで文句を言うタイプではないと思うのだが──いや、騒ぎはするか。

 なんだかんだ言っても恵もなかなか友達思いな面があるんだね、と、内心勝手にほっこりとする。

 

「宿儺の器が同級生だと、色々と大変なんじゃないか?」

「……傑さんが思う方の大変じゃないですけど、まぁ、それなりには……ってなんで知ってるんですかアンタ!?」

「硝子がポロッと漏らしてね。あ、これはオフレコで頼むよ」

「何やってんだあの人……やっぱ二人の同級生だな」

 

 硝子が聞けば即時撤回を要求するであろうなかなかに酷い評価を下されていたが、今回に限り事実なので私から何かを言うことはない。

 そも、高専、未成年時代から重度のヤニカスだった彼女も世間一般の常識で見れば問題児に変わりない。

 まぁ、それを咎められないのが呪術界の良いところでもあり、悪いところでもあるんだけど。

 

「まぁ、彼女も立派な呪術師だからね」

「これに関しちゃ関係ないと思うんですけど」

 

 ……それもそうか。

 本当、恵に関してはよくぞここまでまとも──術師基準ではあるが──に育ったものだと思う。

 幼少期に周りにいたのが父であるギャンブル狂いの筋肉ダルマに、師匠代わりの白髪バカ。倫理観バグのヤブ医者に、性格の終わったエセ坊主。加えて金の亡者に、特筆することが思い当たらなかった歌姫先輩。

 強いて言えば、学長はまともだったかもしれないが、それでも呪術師。世間一般から乖離していることには違いない。

 

「……一つ、相談いいですか」

「珍しいね。構わないよ」

 

 メロンパンを器用にもこぼすことなく口に運ぶ恵は、少し気の落ちたような顔で相談を持ちかけてくる。

 普段は他者に頼らない───というわけではないが、比較的悩みを自分の中に溜め込みがちな恵にしては珍しい行動だ。

 

「……傑さんは。もし友人が秘匿死刑になって。いざその時が来たら───友人の死を受け入れられなかったら、どうしますか」

「んー、なるほどねえ。…‥どう、と言われても。暴れる、としか答えようがないかな」

「暴れるんすね」

「そりゃあまぁ、古今東西、自分の要求を通すのに一番手っ取り早い手段は暴力だからね。私なら誰が相手でも、まぁ負けることはないだろうし」

 

 悟相手だと流石に厳しいところがあるが、それ以外の術師相手ならまぁ、死にかけることはあっても負けることはない、と勝手に自負している。

 私の中では、負け=自分の死、だ。つまり、死ぬことさえ回避してしまえば、引き分けには持ち込める。

 乙骨や九十九相手に勝ち切れるかどうかはさておき、逃げに徹すれば殺されることはないだろう、多分。

 

「……俺には、そんな力はありません」

「あるじゃないか。魔虚羅を調伏してしまえば、例え悟が相手でもそう簡単には引けを取らない」

 

 勝ち切れるかどうか、というのは別の話なのだが、まぁそれはそれ。

 そも、悟が虎杖悠仁の秘匿死刑を執行すべく、恵と対峙する───なんて、荒唐無稽な夢物語でしかないのだが。

 

「恵はあれだね。無意識に自分の可能性を狭めてしまっている」

「……そう、なんですかね」

「ああ。……まぁ、これは私から言うような事でもないかな」

 

 既に呪術師を退いた身、鈍った勘と微かな経験にしか裏打ちされない下手なアドバイスでは、恵の成長をかえって阻害する可能性がある、というのは、流石に卑下が過ぎるだろうか。

 まぁなんにせよ、その辺のことは優秀……うん、戦闘面に限れば優秀な高専教師陣に丸投げするとしよう。

 

「……ご馳走様でした。美味かったです」

「それは何より。今更なんだけど、一つ質問してもいいかい?」

「はい」

「別にここで食べていかなくても、寮に帰ってその同級生たちと食べればいいと思うんだけど。そこが少し気になってね」

「……迷惑でしたか」

「いいや、迷惑ならそう口に出しているさ。私がその辺を気遣わないのは、恵もよく知る通りだろう?」

 

 ふと浮かんだ、純粋な疑問。

 虎杖と釘崎に妙な勝負をふっかけられて自分の分を持っていかれることを嫌ったのか、禪院真希やパンダに妙なちょっかいをかけられるのを嫌ったのか。

 だが、そのどちらも理由としては弱く、私の中で明確な答えは見出せずにいた。

 

「…………俺、あのパチカスクソゴリラよりも、傑さんのことを父親みたいに思ってるんです。……だから、まぁ、なんつか……あー」

 

 頭を掻いて、整った顔を少し赤く染めて。

 一呼吸挟んだ後、恵は口を開く。

 

「家族──傑さんがどう思ってるのかは知らないですけど、俺からすれば父親同然の人と少しでも長く一緒に居たい……ってだけです」

 

 言い切った後、羞恥心からか更に顔が紅潮する恵を他所に、懐から携帯を取り出し、番号を入力する。

 

───もしもし、硝子。 ……今は時間がない? ああ、大丈夫だ。そこまで手間は取らせないとも。用件は簡単、恵を私の養子にするだけだよ。…‥何を言っているんだ、頭がおかしくなったのか、だと? 失礼だな───純愛だよ。




正直最後のがやりたかっただけだったり。
追記:今週日曜に多分続き出せます
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