ブロークン・ワールド   作:吾妻原昌孝

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お待たせしました(どれだけ待たせてんだ)
長らくお待たせした割に短いですが、ご容赦ください。


第3話 大雨、遊泳

「おかしい」

 (かがやく)は、唇を尖らせた。

 現在、天気は雨。だがそれだけでなく、雹まで降っているのだ。

「いくら山側だからって、瀬戸内海に面したこの地域。こんなもの降ってこないでしょう」

「いやー、異常気象だねー。いつぞやの髪の毛針(ヘアースピア)がマシに思える」

「当たると痛いですからね。私なら、皮膚を硬くしますけど」

「私だって、原子に分解するよ」

 などと、始めのうちは談笑していたが。

「・・・確かに、これはおかしい」

「でしょう? 二日も雹が降るなんて、それこそシベリアの永久凍土でもないとあり得ないと思うんです」

「これは、天贈(ギフト)の可能性もあるってわけか」

「です。でも、どうやって調べるんです?」

 ガンガンガンと、屋根をたたく音が聞こえる。

「・・・ひょっとして、これ」

「何も言わないで。なんかモーレツに嫌な予感がする」

 そう、大量の雹が、いくつも屋根にぶつかっているのだ。雨だれ石を穿つ。ならば、雹に屋根を穿てぬわけがない。

「フッハハハ! このあたりに人の気配がしたと思ったので、先手必勝は正義!」

 大声で叫ぶ者がいた。だが、彼は、炫たちの近くにはいない。

 彼の名は、バークラム・セイメイ。ヨーロッパからの観光客だった人物だ。日本語が好きで勉強したが、少々文脈がおかしい部分がある。

「さぁてさて、おそらくそこにいた奴はゴートゥーヘヴン! 死亡確認はしておくか・・・」

 そう言ってバークラムは、運動会館へ向かっていった。

 

***

 

「雄雄雄雄雄ッ!」

 黎明は、雄たけびを上げ、

平野を駆け回っていた。

 彼は、別にアフリカ大陸出身の未開の土地に住む蛮族ではない。だが、こうしてアフリカの平野でライオンを追いかけているのは、彼がそういう、野性的な人間であるからだ。

 このライオンは、全長107㎝、体重182㎏。狩りをしていた、善良な雌ライオンである。しかし、狩りを終えようというまさにその瞬間、黎明に発見されてしまったのだ不幸な事故である。

「・・・」

「グルル・・・」

 両者、睨みあう。出る隙を窺っているのだ。

 その静寂は、まさに荒野でガンマンが向かい合って銃を抜こうとしている景色を想起させた。

 ──ッカーン!

 黎明の脳裏に、ゴングが鳴り響いた。

「!」

 黎明は、ライオンに向けて駆けだした。

「グル!」

 ライオンも、闘争本能のままに黎明に向かう。

「!」

 勝負は、一瞬だった。

 ライオンは、首がずり落ちた。

 黎明は、健在だった。その断面は、とても綺麗だった。首の骨、肉がくっきりと見える。

 黎明は、ライオンから肉を剥ぎ始めた。

 剥いだ肉を、消毒もせずに口に運ぶ。

「・・・うまい」

 我々には、ライオンの肉がどのような味かは計り知ることができない。だが、黎明にとっては極上のようだ。

 皮は丁寧に剥ぎ取って、川で洗い、衣服に重ねて貼り付けた。いくつもの猛獣を狩って、その皮を何重にも張りかさねた衣服は、少しずつ鎧と言うに相応しい硬さを獲得した。

 骨は、細かく削って針にし、削りかすは丁寧に撒いた。

「いただきました」

 「ごちそうさまでした」というのは、食材を採り、運び、調理したすべての人間に対する感謝の言葉であるために、この場では不適切と考えたのだろう。その点、「いただきます」というのは、食材となったすべてのものに対する感謝の言葉である。確かに、かけずり回ったのが自分以外誰もいない時は、適切だろう。

 食事を終えた黎明は、海に向かうことにした。

「・・・もうすでに、ここは狩り尽くした。中国にはいるのか? いや、大陸全体に目を向ければあるいは・・・」

 目的地は、オーストラリアだ。

爆発俊足(ボンバースピード)

 天贈(ギフト)を発動し、文字通り高速移動を行う。その時速は、高速道路の制限速度である80kmである。この手の作品では遅いと言われそうではあるが、冷静に考えてみてほしい。100kmも200kmも人間が出すと、いくら謎パワーに守られていると言えども、ミンチになってしまうことは避けられないだろう。このくらいの速さが、ギリギリミンチにならないであろう速度だと考えられる。

 閑話休題、黎明はその圧倒的なスピードで水上を走り、オーストラリアに不法入国した。まあ、この世界では入国管理局もまともに機能していないのだが。

 

***

 

「誰か、来る!」

 外を見張っていた(かがやく)が、峰留(ほうる)に報告する。

「主犯で間違いないだろうね」

「こんな異常気象を起こしたのは、どんな奴なんでしょうね」

 (かがやく)が、口に出す。

「それは、どうだっていいよ。どんな奴でも、私たちの敵なら殺してしまうだけ」

「そう、ですね」

 彼女の中には、拭いきれない違和感があった。魚の小骨が引っかかったような、違和感が──。

──どうして、私は峰留(ほうる)サンを敵として認識していないの?

──それに、どうして峰留(ほうる)サンからも敵として認識されていないの?

 だが、そんな暇は、彼女には残念ながら存在しない。

 なぜならば、その誰か=バークラムが会館に襲来したまさにその瞬間、とてつもない量の大雨と雹が同時に降って来たからだ。

(ウッソ)でしょ!?」

「屋根まで破られるとはね・・・。あーあ、これで拠点は無くなった」

「言ってる場合ですか!? いや、そういう状況ですけど!」

 それほどの強さを持つ雨や雹を喰らって、なぜまだ生きているのか。その理由は、峰留(ほうる)が、落下した瓦礫を瞬時に分解し、盾として再構築。そのまま、分解と再構築を雨が止むまで繰り返したからだ。幸い、これは数秒で収まった。

「いやー、リアリー防ぎきっちまうとはアイドントシンク。バットまあ、この施設もボロボロ、ユーズできそうにない」

「・・・ルー語?」

「よく知ってるね、若いのに。でも違う。あの人はもっと面白いよ。こいつは、ちっとも面白くない」

 峰留は、そう断じた。実は彼女は、ルー大柴のファンでもあるのだ。ルー語とはなんなのかを徹底的に調査し、大学の卒業論文のテーマにまでしたほどだ。タイトルは、「ルー語とは何か〜我々の心を掴んで離さない不思議な日本語〜」である。

「というか、君の天贈(ギフト)は天候操作系かい? どう考えても異常気象な現象が発生してね、もう住む場所を追われてしまったんだ。責任とって、命をこっちに寄越してくれないかい?」

「ンンー、そいつはヒアーできない相談だ。ビコーズ、俺はヒアーでお前たちのライフをゲットするからだ」

「・・・becauseは〜からって意味だったはず」

「言わないであげな、そういう事実は」

「聞こえてるぞ」

 女性陣にそう突っ込まれたバークラム。彼は、丁寧に自分の半径三米を除いた範囲に、大量の雨を降らせた。

「何をする気かい?」

「ウエストジャパンを襲った豪雨は知っているな?」

「・・・そういうことか。(かがやく)ちゃん、ここから一歩も動かないで。できれば、ことが起こる前に」

「もうレイト!」

「なっ・・・! そんなに早いのか、降水は・・・!」

 そう、バークラムの狙いは降水による川の増水に伴って起こる洪水である。これで、二人を海へ流し、魚の餌にするという魂胆だ。

「だけどまあ、残念だったね。この私こと朋琳(ほうりん)峰留(ほうる)天贈(ギフト)は、原子崩壊(メルトダウン)。わかりやすく言えば、どんなものでも原子に分解し、そして私好みに組み替える。ここの瓦礫で洪水を防いで、さあ(かがやく)ちゃん!」

「り、了解です! 髪の毛針(ヘアースピア)!」

 (かがやく)は、バークラムに躊躇いなく髪の毛針(ヘアースピア)を叩き込んだ。一切想定していない場所からの攻撃に、バークラムは対応できず、串刺しとなってしまった。

 だが、彼はまだ生きていた。

「シンクのアウトサイドだったが、ヘッドやハートは間一髪で避けられたぜ」

 腹部にも刺さっていたが、脂肪で死亡は避けられた。

「でも、これはもらったもの。私の天贈(ギフト)は、細胞操作(セルゲーム)!」

 炫は、さらに髪の毛を伸ばし、バークラムを拘束した。峰留(ほうる)の背に隠れる形だったので、彼女の手が届くほどの距離で髪の毛を切断する。

「ようし、何も言わなくてもわかってるみたいだね。それじゃあ、原子崩壊(メルトダウン)でちょちょいっと・・・こう!」

 峰留(ほうる)が髪の毛に対して行ったのは、金属化である。もっと言えば、自分が触れる部分以外を鋭いワイヤーに変えたのである。厳密には、金属とは定義できない物質であるが、ここではその物質は金属とする。

「そしてこれを・・・ほいっと」

 峰留(ほうる)は、その糸を引いた。バークラムの首は、ポトリと落ちた。

「なんとか倒せましたね・・・」

「うん、でも拠点がなくなっちゃった」

 これからどーするとおどけて見せる峰留(ほうる)

 結局二人は、次なる拠点を求めて散策することにした。




いかがでしたか?
もう、語るほどの厚さではないんですよ。薄すぎる。薄味が過ぎる。
いっそ適切なところで打ち切るというのも視野に入れたほうがいいのかもしれませんが、それはちょっと嫌です。
完結まで何年かかるかわかりませんが、本作もどうぞよろしくお願いします。
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