長らくお待たせした割に短いですが、ご容赦ください。
「おかしい」
現在、天気は雨。だがそれだけでなく、雹まで降っているのだ。
「いくら山側だからって、瀬戸内海に面したこの地域。こんなもの降ってこないでしょう」
「いやー、異常気象だねー。いつぞやの
「当たると痛いですからね。私なら、皮膚を硬くしますけど」
「私だって、原子に分解するよ」
などと、始めのうちは談笑していたが。
「・・・確かに、これはおかしい」
「でしょう? 二日も雹が降るなんて、それこそシベリアの永久凍土でもないとあり得ないと思うんです」
「これは、
「です。でも、どうやって調べるんです?」
ガンガンガンと、屋根をたたく音が聞こえる。
「・・・ひょっとして、これ」
「何も言わないで。なんかモーレツに嫌な予感がする」
そう、大量の雹が、いくつも屋根にぶつかっているのだ。雨だれ石を穿つ。ならば、雹に屋根を穿てぬわけがない。
「フッハハハ! このあたりに人の気配がしたと思ったので、先手必勝は正義!」
大声で叫ぶ者がいた。だが、彼は、炫たちの近くにはいない。
彼の名は、バークラム・セイメイ。ヨーロッパからの観光客だった人物だ。日本語が好きで勉強したが、少々文脈がおかしい部分がある。
「さぁてさて、おそらくそこにいた奴はゴートゥーヘヴン! 死亡確認はしておくか・・・」
そう言ってバークラムは、運動会館へ向かっていった。
***
「雄雄雄雄雄ッ!」
黎明は、雄たけびを上げ、
平野を駆け回っていた。
彼は、別にアフリカ大陸出身の未開の土地に住む蛮族ではない。だが、こうしてアフリカの平野でライオンを追いかけているのは、彼がそういう、野性的な人間であるからだ。
このライオンは、全長107㎝、体重182㎏。狩りをしていた、善良な雌ライオンである。しかし、狩りを終えようというまさにその瞬間、黎明に発見されてしまったのだ不幸な事故である。
「・・・」
「グルル・・・」
両者、睨みあう。出る隙を窺っているのだ。
その静寂は、まさに荒野でガンマンが向かい合って銃を抜こうとしている景色を想起させた。
──ッカーン!
黎明の脳裏に、ゴングが鳴り響いた。
「!」
黎明は、ライオンに向けて駆けだした。
「グル!」
ライオンも、闘争本能のままに黎明に向かう。
「!」
勝負は、一瞬だった。
ライオンは、首がずり落ちた。
黎明は、健在だった。その断面は、とても綺麗だった。首の骨、肉がくっきりと見える。
黎明は、ライオンから肉を剥ぎ始めた。
剥いだ肉を、消毒もせずに口に運ぶ。
「・・・うまい」
我々には、ライオンの肉がどのような味かは計り知ることができない。だが、黎明にとっては極上のようだ。
皮は丁寧に剥ぎ取って、川で洗い、衣服に重ねて貼り付けた。いくつもの猛獣を狩って、その皮を何重にも張りかさねた衣服は、少しずつ鎧と言うに相応しい硬さを獲得した。
骨は、細かく削って針にし、削りかすは丁寧に撒いた。
「いただきました」
「ごちそうさまでした」というのは、食材を採り、運び、調理したすべての人間に対する感謝の言葉であるために、この場では不適切と考えたのだろう。その点、「いただきます」というのは、食材となったすべてのものに対する感謝の言葉である。確かに、かけずり回ったのが自分以外誰もいない時は、適切だろう。
食事を終えた黎明は、海に向かうことにした。
「・・・もうすでに、ここは狩り尽くした。中国にはいるのか? いや、大陸全体に目を向ければあるいは・・・」
目的地は、オーストラリアだ。
「
閑話休題、黎明はその圧倒的なスピードで水上を走り、オーストラリアに不法入国した。まあ、この世界では入国管理局もまともに機能していないのだが。
***
「誰か、来る!」
外を見張っていた
「主犯で間違いないだろうね」
「こんな異常気象を起こしたのは、どんな奴なんでしょうね」
「それは、どうだっていいよ。どんな奴でも、私たちの敵なら殺してしまうだけ」
「そう、ですね」
彼女の中には、拭いきれない違和感があった。魚の小骨が引っかかったような、違和感が──。
──どうして、私は
──それに、どうして
だが、そんな暇は、彼女には残念ながら存在しない。
なぜならば、その誰か=バークラムが会館に襲来したまさにその瞬間、とてつもない量の大雨と雹が同時に降って来たからだ。
「
「屋根まで破られるとはね・・・。あーあ、これで拠点は無くなった」
「言ってる場合ですか!? いや、そういう状況ですけど!」
それほどの強さを持つ雨や雹を喰らって、なぜまだ生きているのか。その理由は、
「いやー、リアリー防ぎきっちまうとはアイドントシンク。バットまあ、この施設もボロボロ、ユーズできそうにない」
「・・・ルー語?」
「よく知ってるね、若いのに。でも違う。あの人はもっと面白いよ。こいつは、ちっとも面白くない」
峰留は、そう断じた。実は彼女は、ルー大柴のファンでもあるのだ。ルー語とはなんなのかを徹底的に調査し、大学の卒業論文のテーマにまでしたほどだ。タイトルは、「ルー語とは何か〜我々の心を掴んで離さない不思議な日本語〜」である。
「というか、君の
「ンンー、そいつはヒアーできない相談だ。ビコーズ、俺はヒアーでお前たちのライフをゲットするからだ」
「・・・becauseは〜からって意味だったはず」
「言わないであげな、そういう事実は」
「聞こえてるぞ」
女性陣にそう突っ込まれたバークラム。彼は、丁寧に自分の半径三米を除いた範囲に、大量の雨を降らせた。
「何をする気かい?」
「ウエストジャパンを襲った豪雨は知っているな?」
「・・・そういうことか。
「もうレイト!」
「なっ・・・! そんなに早いのか、降水は・・・!」
そう、バークラムの狙いは降水による川の増水に伴って起こる洪水である。これで、二人を海へ流し、魚の餌にするという魂胆だ。
「だけどまあ、残念だったね。この私こと
「り、了解です!
だが、彼はまだ生きていた。
「シンクのアウトサイドだったが、ヘッドやハートは間一髪で避けられたぜ」
腹部にも刺さっていたが、脂肪で死亡は避けられた。
「でも、これはもらったもの。私の
炫は、さらに髪の毛を伸ばし、バークラムを拘束した。
「ようし、何も言わなくてもわかってるみたいだね。それじゃあ、
「そしてこれを・・・ほいっと」
「なんとか倒せましたね・・・」
「うん、でも拠点がなくなっちゃった」
これからどーするとおどけて見せる
結局二人は、次なる拠点を求めて散策することにした。
いかがでしたか?
もう、語るほどの厚さではないんですよ。薄すぎる。薄味が過ぎる。
いっそ適切なところで打ち切るというのも視野に入れたほうがいいのかもしれませんが、それはちょっと嫌です。
完結まで何年かかるかわかりませんが、本作もどうぞよろしくお願いします。
感想、評価をお願いします。