突如として現代に復活した戦神アレスに囚われた女神、アテナこと城戸沙織を救うため、敵の本拠に乗りこんだ邪武ら青銅聖闘士たち。
その前に、アレス配下の
「受けよ、ユニコン! 我が必殺の刺突撃を!!」
狂闘士の最後の一人──バイコーンのキュドモスが、傷つきたおれる
キュドモスの両腕ににぎられた、槍のような
「待て待てぇーい!」
戦いの場に似つかわしくないだみ声、ドタドタとせわしない足音とともに、一筋の光の矢がキュドモスの体を打った。
「グッ! なに奴!?」
「お、お前は……!」
衝撃でキュドモスの両手の技は消え、驚きに目をひらく邪武の前には、彼のよく知る男が一人。
「た、辰巳!? なぜお前がここに……!?」
「お前らだけじゃ心配だったからな。こうしてグラード財団が開発した量産型の鋼鉄聖衣を着て、俺自らお嬢様をお救いに来たのよ!」
「ぬぅ……アテナの執事か……。ただのハゲ親父が、よくも戦いの場にノコノコと現れたものだな!」
金属製の人工アーマーを装着して救援に駆けつけた城戸沙織の従者……辰巳徳丸。
場違いな乱入者に、キュドモスの表情が怒りに染まった。
突如、横合いから衝撃音。
破壊された壁の向こうから、ドドサッ!と音と共になだれ込むように、放り捨てられる複数の人の体。
「う、うぅ……」
「お、お前ら、一体……!?」
吹き飛ばされてきたのは、辰巳とおなじく救援にきた鋼鉄聖闘士、そして青銅聖闘士と女性闘士のテュシア。
一様に体はボロボロ、まとう聖衣も全損にちかい。
彼らが飛ばされてきた壁の破壊痕から、邪悪な小宇宙がモヤとなってただよいあらわれる。
その小宇宙は、一介の青銅聖闘士らにとって、あまりにも巨大すぎた。
戦慄する邪武。
「なんだ、この……ビッグでグレートな小宇宙は……」
「そ、それが戦神アレス、ザンス……!」
おそらくアレスの攻撃を受けたのだろう。
ズタボロの市が、絞り出すように言った。
アレスの小宇宙が、厳かな声音で語りかける。
『矮小な人間どもよ……我が起こす地上の崩壊を、黙って見届けるがよい』
モヤが、だしぬけにキュドモスの体にまとわりついた。
砂地に水が吸収される様に、キュドモスの身の内にモヤ──アレスの小宇宙が侵入していく。
「あ、アレス様、なにをなさるのですか……!?」
『残された狂闘士はお前ひとり、もはや我には不要の存在。なれば、我が身の顕現の礎となるがよい……』
「そ、そんな……私も捨て石……だったのか……」
自らの配下をも生贄として──戦神アレス、復活。
その身はただの人間……キュドモスであった男のものであり、完全な復活にはほど遠いと言え、神の放つ圧倒的な小宇宙を前に邪武らの体はすくんでしまった。
アレスの小宇宙に呼応するように、闘技場が崩壊をはじめる。
それはすなわち、地上の崩壊が始まることを意味していた。
崩れていく外壁、その中から、悪しき小宇宙に囚われた女神アテナの姿があらわになる。
「お、お嬢さん!」
「アテナ……!!」
みなが口々に彼女の名を叫ぶが、アテナ……沙織の耳には届いていないのか、彼女はアレスの小宇宙がつくり上げた結界の中で苦悶の表情を浮かべるのみ。
『我が結界の内で、アテナの小宇宙はじきに限界を迎える……そして、頂点を超えたアテナの小宇宙の爆発によって、地上は完全に消滅するのだ』
「そんなこと……させるもんかよぉーッ!!」
邪武をはじめとした全員が、瀕死の体を押して立ち上がる。
例え自らがどうなろうと、アテナを、地上を守る。
その一心で悪しき神に挑む戦士たち。
しかし──
『愚かな。神である我に、最下級の青銅聖闘士ごときが、いかに束になろうと敵うものか』
アレスは息を吐くように、小宇宙によって起こした風の一凪で聖闘士らを打ちのめした。
辺りには戦士の流した血が、水たまりの様に広がっている。
その様を、直視せずとも感じてか、沙織の閉じられた瞳から一筋の涙が流れた。
『悲しむがよい、アテナよ。お前の嘆きが我が最上の美酒……』
アレスは完全な勝利を確信し、それに酔いしれた。
「ふ、ふざけるんじゃねぇ……お嬢さんを、こんなひどい目にあわせやがって……ッ」
それに怒りを向けるのは、一角獣座の戦士。
アテナ沙織にたいして、子供のころから敬愛の情をむけ続けた男だった。
「お嬢さんは、この地上を愛し、すべての命を守ろうとしてくださるお方だ……そんなお嬢さんの手で、愛する地上を破壊なんてさせるかよ……ッ」
もはや、かろうじて命を長らえるのがやっと、という有様の邪武は、しかしなおも立ち上がった。
すべてはアテナの戦士として、城戸沙織に使える一人の男としての意地が成せる業だった。
『……愚かなり』
陶酔に水を差されたアレスは、小さな怒りとともに邪武へ、致命の一打を放った。
『……なにぃ……!?』
しかしその攻撃は、邪武の体に直撃する前に、見えない障壁のようなものによって防がれる。
『アテナの小細工か……!?』
しかし、沙織はいまだ結界の中にあり、手出しできない状況にあった。
「邪武……このバカ野郎……ッ」
「ひとりだけ無茶するんじゃないザンスよ……!」
邪武を守ったもの──それはこの場に共に集った檄、市、蛮、那智の青銅聖闘士の小宇宙によって張られたバリアー。
それだけではない。
『……ほんの少し驚いたが、身を守るだけでどうするつもりか……』
「俺は……俺たちはアテナの聖闘士……。どんなに絶望的な状況にだって、決してあきらめない……ッ!」
命そのものを燃やすように、邪武は小宇宙を燃焼させる。
守護星座の一角獣のオーラが、その背に浮かんだ。
邪武だけではない。
青銅聖闘士たちも、テュシアも、鋼鉄聖闘士らもまた、自身のすべてを賭け命を燃やす。
この場に集った十人の小宇宙が邪武の身に集まっていく。
それは気闘士テュシアのサイコキネシスをもって、ひとつの鎧へと変化を遂げた。
ガラスのような透き通る美しさ。
多重の小宇宙を練り上げて造られた、これこそどの宇宙、どの次元にも存在しない──「キメラの
『…………』
神であるアレスですら見たことのない鎧を前に、邪神はわずかに目を見張った。
「いくぞ、アレス! これが俺たち、人間の持つ命の力だ──!!」
闘技場全体が閃光に包まれ、やがて……地上に静寂が訪れた──。
市さんの出番とかオリヒロインのいる意味とか、色々不完全燃焼になってしまいました…。
でもこの二軍青銅が主役の作品ってやりようによっては面白くなりそうな気はするんですよね。
また邪武たちをメインに添えた作品を考えてリベンジしたいです…。