やった。
あと、恵子さん愛されネタやりたかった。
桜は、今も生きながらえ、花を咲かせている。
まどろみに浸る、彼らのために。
1998年、東京大震災から約2世紀分(約200年ほど)を越した時期。突如として現れた深海棲艦が出現し、海上権利が軒並み剥奪された。未知なる存在に対し各国は討つ術もない状態の中、一筋の光が見え始めたころ。
その希望の光と言うのは、かつての軍艦と同じ名を持つ艦娘と言う存在だった。出来すぎたような出来事でもあった…人か化生(けしょう)か、いずれにしてもこの現状をどうにかしたいとばかり、藁にもすがる思いで人類は彼女らに頼るしかなかった。
そして、彼女たちのおかげで奪い返せる可能性が出てきた。
結果的に、一部の海上権利を奪い返すことに成功をしている。
しかし、覚えていてほしい。…彼女らが我々人間の完全な味方、と言う証拠はない。かといって、敵であるという証拠も今一つ。それでも、人類の足元にはいつでも地獄へと引きずり込める腕が伸びでいる事には、変わりなかった。
艦娘を顕現させるには、それなりの素質が居ると言うことが分かった。妖精、と言う存在が要である。
特に西洋で伝えられている妖精とは、少し違う。何が目的なのか、どうして人類に手を貸すのかその意図さえもわからないうえに、常人では見えない不気味な妖精たち。そのおかげで、見えない常人にとっては常日頃からポルターガイストが起きている、とさえ錯覚できてしまう。
鬱、トラウマを患ってもおかしくはない。これらを受けない、患わない人間は随分と豪胆であり、馬鹿であっただろう。
そんな妖精が見えることが必須な条件の中、国を護る国防は手段を選んでいられなかった。まだまだ深海棲艦の脅威は消えていないのである。
妖精が見える軍人は数少ない、ならば必然的に国民にまで手を伸ばすしかなかった。学生から老人、さらには女性にまで。
見境は無い。
国防せよ、国民。と言ったところか。
その中で、一番に妖精が見える、と言う適性が高い国民が居た。それは神仏に仕える神職たちである。彼らは妖精、自衛隊とが別の角度で国を護っている。結界、風水、易、陰陽道などといった呪術及びオカルトを使って。
古き時代より、この手を使い国を護って来た彼ら。この運命も、受け入れていた。いずれ、我らも兵とされることを深海棲艦が現れるよりも早く、そう予知していた。
そうしてこの日、国によって徴兵された一人の巫女が居た。
東北にひっそりとたたずむ相馬氏ゆかりの神社。相馬俤(おもかげ)神社の氏長者にして、相馬の象徴平将門公に見初められし巫女。
目方恵子。
齢は二十後半、純潔を保った生粋の巫女。現代の日本人にしては身長が高く、見た目も齢よりもうら若い。性格も誰が言ったか…菩薩、それも観音菩薩である、と。
そんな恵子には、数奇で憎愛が入り混じった不思議な運命があった。
その運命は、今世でも変わらない。いや、目方恵子だからこその運命。
新たに着任される提督には、その秘書官にあたり最初の戦力とされる艦娘が配属される。そこから建造、海域からの顕現、さらには上層部から直々の配属、などで艦娘が割り当てられる。恵子も例外なく、艦娘が配属されるのだが…。
その日、珍しく陸軍からの視察が入っていた。それも、かつて旧陸軍ゆかりの艦娘が、直々に…と。
異様、と言える。まるで、ナニカを察したかのようだ。
新人提督となる恵子は、緊張と共に懐かしさを覚えていた。国防を担う職務を全うする、と言う使命感は強かった。だが、それ以上にもっと、…誰かに逢える…そんな気持ちが、使命感よりもずっと、ずっと大きかった。
そうして、堅苦しい任命式を終え艦娘との対面、となった。
しかし、軍部の方で何やら騒がしさが現れ始めた。恵子、その場に居た軍人たちは何事か、と言う思いで見ている。
騒がしさが薄れ、十分足らずで落ち着いた。そうして、陸軍から一人の少女が恵子の前へと出た。
少女は一目でわかった。艦娘、であると。同時に…。
「来たか。将門の巫女よ」
恵子は目を見張った。
艦娘はニタリ、と気味が悪い笑みを浮かべ言葉をつづける。人ではそうそう居ないほどに犬歯が鋭く、刃物を思わす目が恵子を捉えた。
「言ったであろう。お前を初めて見た時から、俺の女にしたい…と。地獄で俺の相棒を務めてもらうために、妻になってもらう、と」
「…か、と、う」
恵子は、たどたどしく艦娘の名前を呟く。
「もう一度、だ」
その声は、酷く優しかった。
「加藤…保憲」
「俺の女よ、逢いたかったぞ」
艦娘の手には、手袋にはある印が刻まれていた。
五芒星、ドーマンセーマンと呼ばれ陰陽道のしるし。加え、魔よけの意味を成す。この艦娘が陰陽師、であると言う証拠となった。かつて、この国にはある五芒星を持った男の存在があったとされる。
加藤保憲。
帝都を憎みし魔人。2004年に姿を消し、それ以降は人知れず表立って活動をされていなかったが…どういったわけか、艦娘となっていた。しかし、加藤にとって容姿はどうでもいいものだった。ただただ、帝都を破壊すると言う使命感に似た怨念は消えていないのである。古きより大和に追いやられた人々の恨み辛み。そうしてあの桜の根に抱かれてもなお、消えぬ怨念と憎悪。
「…とはいえ、今は艦娘の身。こちらの方の挨拶が適任であろう」
「陸軍特殊船丙(へい)型あきつ丸。輸送および上陸船が強みだ、それと航空戦も可能だ…よろしく頼むぞ、提督殿」
再び不気味な笑みを浮かべ、鋭い犬歯がのぞける。
恵子は笑みを浮かべる。屈託もない笑み、純粋に加藤に逢えたことが嬉しいと言う笑みであり、その憎悪すらも包む笑み。
だからこそ、彼女は…菩薩なのだろう。加藤が恐れ、愛した菩薩。
この日、また新たに一人の提督と艦娘が活動を始めたのであった。
「まったく、かんべんしてくれよ。今後は控えてくれ加藤」
甘粕はそう、酷くゲッソリとしたような疲労感を表しながら加藤、あきつ丸に言葉を吐いた。加藤の方は悪びれもなく、余裕綽々とその言葉を聞き流し、甘粕を窘めた。甘粕はため息をこぼしポケットから煙草を取り出し、一本火をつけた。
この甘粕、と言う男は加藤の友人に当たる。かつて、甘粕事件を起こしたかの甘粕正彦、本人である。今や転生し、どういったわけか記憶を持って生まれた。
今世、この加藤と会ったのは、陸軍に配属されてすぐのこと。加藤も艦娘として顕現した時期でもあった。
「ふ、お前もまんざらでもなかっただろう。あの後、すぐに恵子を口説いたのにはあきれたものだ」
「美味しいところを独り占め、なんてのはいけずじゃないか?なぁ、加藤」
ふう、と甘粕が煙を拭けばゆらゆらと、煙は天へと上る。その様はまるで川のようだ。
加藤はひとつ、間をおいてから甘粕にある男の所在を問いかけた。彼の脳裏には、梵字の刻まれた二宮金次郎像を運ぶ小柄の男の姿。
また、宝剣を使い護法童子を討ち伏せる姿も見えた。
「…北海道はどうだ?あの風水師が居るはずだ」
「居たよ、おかげで警戒されまくったぞ。俺はあの男に一度会ってるし、満州の件もあるしな。恵子さんの名を出したら大人しくなったが…お前の知り合いすべて、暴力的すぎないか?ええ?」
「うるさい男だ」
面倒そうな相手に対する態度に似た反応に、甘粕は癪に障りながらも言葉を続ける。ぷかぷかと煙は絶えず天に昇っていた。
タバコはと言えば、4分の1ほど減っている。
「しかし、お前さんはどうして因縁ある奴らを集める。消してしまった方が何よりだろう…まさか、遊び相手させるつもりか」
「この国はつまらなくなった。いずれ滅びるのも時間もかかるまい、俺が何もせずとも滅びる」
「言い切るねぇ。でも答えにはなっていないぞ」
「なっているさ。遊び相手だ」
「あぁ、そうかい。…てか、お前の交流関係はちょっとばかし変わっているな。幸田露伴に寺田寅彦、さらには科学と魔術をあわせた鳴滝純一、それにかつての大蔵秘書官だった辰宮洋一郎。かの三島由紀夫までもが、お前の虜さ。お前は俺が死んだ間に随分と敵を作って来たな」
「妬いてるのか。よせ、お前のような男は勘弁だ」
「俺もだよバカ」
酷く嫌そうに甘粕と加藤は目を合わせ、お互いに悪態を口々に吐き捨てた。
罵倒に飽きたのかしばらくの沈黙、それを破ったのは口が妙に軽い甘粕だった。
「それはそうと、恵子さん良い女だな。一度、巫女姿を見たが…軍服もいいものだ」
「……」
恵子の姿は紅白の巫女でもなければ、普段着に近い着物でもない。
汚れのない真白、胸もとから伸びる金の綱、すらりと伸びる白ずぼんを纏った両足。海軍の軍服姿が、いつも以上に男の情欲を掻き立てる。同じ陸軍の軍服であったなら、そこまで…と言うが、どっちにしろこの二人にとっては変わらないだろう。
ひとりの汚れなき巫女、女…この二人にとっては暴き、愛したいと思うほどの存在。
「お前、結構ラインの解り易いものを選んだだろう。胸もふっくらしてるし、ケツも張ってる…お前は昔っからむっつりだし。選ぶと思ったよ」
「…俺はむっつりではない」
「いや、お前むっつりだよ。俺が言うんだ、間違いはない…あとスケベ」
その日、とある庁舎で砲撃音と銃声が何発も鳴った。どうも陸軍が使う一時的庁舎でその音があったらしい。
なんでも、その場に居た艦娘と軍人のいざこざ、だとか。報告及び対処したのは平岡と言う若い陸軍の者で、ある提督の下に配属された件の問題を起こした艦娘の元部下のようだ。
帝都物語を扱っているけど、あそこまでの魔術猫写や知識、無いです。
すいません。
ただ、ただ恵子さんがみんなの魔性菩薩をやりたかったんや。
電子の海の運命な尼さんじゃないよ。