魔人…が着任しました   作:イシグロ

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新帝都物語読了して勢いで書いた

よ、ヨモツヘグイパネェっすわ。描写が、え、エグ…すき!
映像だったら死んでた

帝都幻談や異録見てないです
時間が取れたら読みます、ハイ…


加藤が来たぞー!

 

「よおこそ、この度はお忙しい中ありがとうございます」

「いえ、ワシの力が必要なればお力添えしますとも」

 

セーラー服のような服を纏いメガネをかけ、女にしては珍しい高身長の艦娘。男、黒田茂丸の記憶をあさる、確か…軽巡洋艦大淀と、思い出した。愛らしさがある誠実な雰囲気の大淀に招かれ、鎮守府へと入る。

廊下をすれ違うたび、幾人かの艦娘の姿が入る。どの艦娘も、黒田自身が所属する鎮守府には一切居ない者ばかりで、新鮮さを覚えた。

もとより、あきつ丸こと加藤しか居ないのだが。

大淀との軽い雑談をする中、大淀自身から提督の存在を軽く触れ挙げてくれる。

「幾人か、風水師及び易者の方をお招きしましたが…。いかんせん、提督さんはどうも気に入らないとばかりに追い返すばかりで」

「オカルトは好きでないと言うことですか?」

「いえね、提督自身も陰陽師なのです。ひ弱だ、軟弱だの文句ばかりで…」

黒田は腕の立つ人間か、とこれから会うであろう提督の印象を肉付ける。

「今回、黒田さんのことを話せば呼べ、の一言で済ましたので…あぁ、すいません。初対面なのに、こんな話ばかりで」

どうやら、大淀自身もまいってしまうほどの奇怪な人物らしい。黒田はある艦娘の存在をふと、思い起こさせた。

あの男も、高圧的で自分本位な性格だと、と改めて実感させた。

「いえ、俄然興味がわきました。差支えなければ、大淀どの自身の提督の印象を伺いたいと思いますな」

「ううん…そうですね。一言で言えば、怪人…ですね」

予想外の言葉がこの艦娘から出た。

そのあまりの言葉に、黒田は呆気にとられ言葉を紡ぐのが遅れる。

「はぁ、怪人。それはまたずいぶんな、言葉で」

「いえね、私ももう少し色を付けたいのですが…いかんせん、やり方も残酷で悪辣すぎるので、…私ではどうも、色が付けづらいのです」

そこまでか、と黒田は心の内でさらに驚く。

そうして、大淀がある扉の前に立ち止まる。見ると、扉の傍には執務室、という文字が刻まれたプレートが取り付けられていた。

どうやら、件の提督はこの扉の中に居る。

大淀はて慣れた手つきで扉をノック、次に声を出し応答を待った。

「大淀です。黒田さんがお見えです」

「……入れ」

短い言葉だが、低く冷たい声だった。

大淀は失礼します、と先に扉を開く。黒田に目を配り、中へ入るよう言葉を紡いだ。

「失礼します」

黒田がその場に足を踏み入れると…ズシリ、と重く冷たく湿った空気が全身にまとわりついた。なんだ、黒田は驚愕しその発生源を探る…居た、居る。

黒田は目を見張るように、その男をじっと見つめた。

目の前には、己自身よりもずっと長身で細身。だが、赤い民族衣装で解りづらいが線は細くとも、鍛えられている肉の付き方をした身体。短く、ざんばらとした黒髪を逆立て額に五芒星、ドーマンセーマンを記した紫色のは鉢巻を巻いている。

極めつけは、その鋭い目線と長い顎。その顔に、黒田は既視感を抱く。

 

「か、と、う、や、す、の、り…っ!?」

 

目の前に、加藤保憲が居る。黒田は、そう錯覚した。

だが、良く見れば…あの加藤よりも、似て非なるもの。加藤よりも齢を取り、おそらく40、50代で鼻先も加藤より少し長い。

加藤が剣であれば、この男は蜘蛛…と言うイメージを持たせる。

そのくらいに、ゾワゾワと奇妙な不気味さのある男であった。

「ほぅ、俺を知っているか。…もしや、あの薩摩軍人の血筋か?」

「薩摩、軍人…?てまえの家系は代々、風水…地相を視るものじゃが。あなたは、一体…」

「…ふむ、どうも妙な縁があるな俺と貴様は…。ならば貴様は、巫女の縁者か?」

「巫女…。将門の巫女殿のことか?」

巫女と言う言葉に、黒田は恵子を思い浮かべる。男が言う縁者、…黒田は自分はそう大層な存在には成りえない、成れないとあの廃寺の逃亡に自負を湧かせつつ、知り合いとだけ答えた。

「クカカ。…貴様風水師であるが、修羅場…それも、災いを目の当たりにしている。死の匂いが強い、しかも縁があるとみる…貴様、尸(し 屍を指す、ここでは中国におけるバケモノを指す)を見たな?」

提督はニタリ、と口角を上げる。口から覗く犬歯が、酷く鋭い…まるで、化け物が目の前に居ると黒田は思えてきた。

「…陰陽師にしては、見すぎる気がするが。加藤の生き写しと言い、何者だ」

黒田は後ずさりをし、すぐにでも廊下へ出れるように目を配らせる。扉の前では、大淀が酷く困惑していた。

今まで見た事もない、とばかりにどうすればいいかもわからずに、うろたえている。

そんな大淀にも目もくれず、提督である男は低く恐ろしげな声で言葉を紡いだ。

 

「加藤重兵衛保憲(かとうじゅうべえやすのり)。…貴様の知る【加藤保憲】の前任だ」

 

「貴様も帝都を滅ぼさんとする魔人か!何故ここで提督をする、国を護る!おぬしの目的はなんだ!」

「威勢の良い小僧だ。それに、腰に差すは宝剣…しかも、鬼の血を吸っているな?」

「答えよ悪鬼!」

黒田が声を上げた。ここで刺し違える、とばかりの気迫を加藤重兵衛に浴びせ、腰に差した宝剣の柄を握る。今にでも抜きはらい、重兵衛に刃を向けそうであった。

重兵衛は、自身に敵意を向ける黒田に好感が持てた。

ここに来る陰陽師、易者、黒田と同じ風水師は、重兵衛を見るや否や腰を抜かし、恐怖ばかり浸って使い物にならなくなったからである。しかし、目の前の黒田だけは、重兵衛に臆さず殺さんばかりの殺気を向けていた。

その殺意が、重兵衛にとって懐かしく、久しぶりの感覚としてよみがえった。

それと同時に、黒田の反応から察する。

かつて自分の傍に居た甥であったあの少年が自分と同じ道を歩んでしまったことに、少しばかりの悔やみが湧いた。…だが、それをすぐさま払拭…憎悪に塗られ流れる血が、重兵衛のそれを否定したのである。

永きにわたる迫害、妨げられ蓄積された膨大な憎悪が血となり、重兵衛の僅かにもつ自責を認められなかった。

「安心せい、俺は何もせん。むしろ感謝の言葉を入れてもいいのだぞ、この俺が憎き大和の民を助けているのだからな」

「…」

「それとも、俺の首を取らんとするか?それもよし、久しぶりに楽しめそうだ」

緊迫した雰囲気、今にでも重兵衛と黒田は刺し違えそうな発展しそうな雰囲気を漂わせる。ほんの些細なきっかけで、それはすぐにでも行われそうであった…。

大淀は、どうにかしてこの悪い空気を収めようと必死になる。

やがて、とっさに口を開いた。

やぶれかぶれに等しかった。

 

「て、提督!黒田さんを呼んだのは、こ、このようなことをするため、じゃないはずですよ!?」

 

大淀の必至な声が、執務室に響く。

緊迫した空気を残したまま、二人の視線が合った。しばらく…大淀にとっては永い時間と錯覚するほど、お互いに視線だけを混じらわせて口を閉ざし、だんまりとしている。

「……。ク、ク、カカカ…そうだったな、確かに俺が呼んだ。おっと、名前を聞いていなかったな」

沈黙を先に破ったのは、重兵衛。重兵衛は嗤いながら、目の前に立つ風水師の名前を、聞いた。

「黒田、黒田茂丸…と申す」

「茂丸…覚えたぞ。カカカ、お遊びが過ぎたな…貴様を呼んだのは単に興味があったからだ。貴様の話を聞きたい…かけろ、そして…俺に話せ」

尊大な態度をしながら、うやうやしく備えられたソファにかけるよう促す重兵衛。先ほどまで、感じ取れた敵意は、無かった。

黒田は警戒しつつも、ソファへとかけた。

「まずは、何から話してもらうか…」

嬉しそうな態度を見せながら、どかりと足を組むように座る。重兵衛の足が長いとみる、ソファからはみ出て少しばかり、苦しそうに見えた。

大淀は、黒田をもてなすための茶菓子を用意するため、逃げるように早々と部屋から出ていった。

……ばたん、扉が閉まる。

…部屋を出て、閉じられた扉を背に大淀はずるずると腰が抜け尻餅をついた。息を荒げ自分の心拍数がかつてないほど早い、と感じ取れる。それだけ、あのような雰囲気が彼女にとって戦場以上の恐怖であると思い知らされた。

落ち着きを取り戻す前に、無理やり立ち上ると大淀はふらふらとした足取りで、近くの給水室へと向かった。

 

 

「ほう、鎮守府の領域にかなめ石をか…。ハッ、ずいぶんと嫌な自殺をやるのだな」

「そうじゃ、ワシらが行っているのは焼け石に水。どうにもならんことよ」

「ならばなぜやる。それが理解できん…。まさか、僅かな安寧を続けさせる気か?」

重兵衛は蔑むように嗤った。

黒田はその笑みと態度を、受け止める。自分たちが行っていることは、この男を失望させるに等しい、と十分に理解していた。だが、それでも諦めきれない黒田含め、提督として徴集された神官、陰陽師など、地脈を抑えんがため、かなめ石となるものを設置し続けていた。

いつか、いつか…すぐにでも来る大災害を、少しでも遠のけるように、と。

 

無駄な努力、だと知っていながら…手を止めることが出来なかった。

 

「哀れよな。同情の余地すらない」

「これで、満足か?」

「まぁ概ね、な。…そうだな、次は…あいつ、保憲の話をしてくれ」

黒田は、ピクリと小さく反応する。重兵衛の背中を冷やすほどの冷たさが一気に溶け、温かく優しげな声に変わったのだ。

まるで、父親のような雰囲気を一瞬だけ感じ取れる。

この重兵衛と言う魔人、怪人も…情があるのだなと黒田は理解した。

「ワシが知る加藤は、重兵衛殿と同じように悪鬼のごとき魔人。だが…今は艦娘となっている」

「艦娘、か。ずいぶんな生を受けたもんだ、艦種は?」

「陸軍特殊船丙(へい)型あきつ丸。それが、今の加藤じゃよ」

くつくつと、重兵衛は笑っている。

かつての記憶、そこには自分が知る幼い甥の姿があった。それを合わせるように、あきつ丸の姿が湧く。

まだ幼い子供だった甥が、軍人となり自分と同じ道で志半ばで倒れる。それを知り、さらには…あろうことか、艦娘になるほどの数奇な人生に、可笑しくなっていた。気がふれる、と言うわけではない…重兵衛は何とも、滑稽なものだと思っていた。

「俺も、あきつ丸と言う艦娘は知っているぞ。また可愛らしい姿になったもんだ」

「態度と姿勢は変わらんですがな」

「そうか、生意気なのか…あいつは」

ずず、とぬるま湯となった茶を飲み干す重兵衛。飲み干した後、その顔はあの不気味で恐ろしいものではなくなっていた。

…あぁ、この男は加藤の父親、または育ての親なのだと。

そう、黒田が心許してしまうほどに重兵衛は優しい顔、慈愛ある顔をしていた。

「…加藤は、あやつはどんな子でしたかな?」

「知りたいか。黒田の小僧よずいぶんと酔狂よな…そうだな、あいつは」

重兵衛はかつて、あの龍神村での記憶をのぞかせる。短くも、心満ちた甥との記憶をゆっくりと思いだす。

黒田の語る加藤保憲、に成る以前の思い出。

重兵衛は、次第にスラスラと自分が知る甥のことを、黒田に話していった。黒田は重兵衛をまっすぐ見ながら、口元を緩ませ重兵衛の言葉に耳を傾ける。目の前に居るのは、もはや怪人であり魔人ではない…。

 

そこには子を愛おしげに語る、父親の姿があった。

 

 




なんかね、聞いた話…重兵衛と加藤っておじと甥らしい
あと世襲というか、継承させてるとか…ますます人外やんけ

次は予告します
おちょうさんと重兵衛の話です。だってさー!だってさー、もうさ~!

まじで人を選ぶ話です
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