はい、ポッポちゃん…?とポッポちゃんの妹…?な子鬼たち
この物語では深海棲艦は怨霊として扱ってます
怨霊および霊もいろいろ居ますから
ぐらり、とめまいがするほどに日差しが強い日となった。
気温も高く、男の着るジャケットがいささか邪魔になるほどの暑さ。本格的な夏が来るまで、あと少し…。
外はそんな状態であるが男、黒田茂丸はその暑さを澄ました顔で歩いている。その暑さになれている、という風体だ。重兵衛が指揮する鎮守府を出て、新幹線一本で自身が所属し、恵子が指揮する小さな鎮守府へと帰還した。
帝都こと、東京は今でこそ新幹線一本で二時間くらいだったが時代を遡れば、日数を要するほどの遠出となる。黒田の生きた時代は、車と言えば馬車と言う認識だったので時代の変化、文明の進化はめまぐるしいと今世ではしみじみと黒田は感じ取っていた。
駅を降り、鎮守府への道を行くこと更に一時間…ようやっと、帰還できたと独り言ちる。
手にぶら下がった手土産と、背に背負う宝剣の入ったギターケースは行きよりも重みを増しているのか…眉間がやや歪む。
それでも、帰る場所…自身は、今一度恵子のためにと固く誓ったのだ。もう、逃げず恐れない、と。
鎮守府が目と鼻の先の距離だが、黒田は少し寄り道。そこは程よい程度の広さにの林、そこは木々が日差しの暑さを吸収しているからか、街並みよりも涼しかった。少しばかり進み、手土産を地面に置く。
しばらくすると、ナニカの気配を感じた。
それも、複数…子供の声が反響したような声。人ならざる音。
「ア」
「シゲマル、ダ」
声とともに、ぼんやりとした歪みが生まれ次第に、はっきりと姿が現れる。
白い子鬼たちだ。血色の悪い青白い肌に、幼児期に近い体型の少女、極めつけは側頭部に黒く小さな角が生えている。それは深海棲艦の上位種に当たる鬼、姫クラスに酷似しているが…黒田は子鬼たちにエサを与えていた。
エサと言っても、金平糖や飴、それに袋に入ったチョコレートなどの御菓子類を、エサとして与えている。
餌付け、である。
何故か。彼がまだ鎮守府に来て間もないころ、地脈及び龍脈の調査の途中でこの林で昼飯をしていたことが、きっかけだった。黒田は当初子鬼たちと遭遇した際に、死を覚悟し生き延びんとばかりに宝剣を構えた…が、そんな子鬼たちは黒田よりも、黒田の食べていた握り飯やおかずに興味を示していた。
黒田は自身の昼飯を犠牲に、接触をすると…なつかれた。
単純に、エサを与えてくれた黒田に敵意を示すことなくなついたのだった。それ以降、黒田は自身になつく子鬼たちが妙に愛らしい、とペット感覚で絵付けをし、交流し…今日に至る。
余談と言うよりも、当たり前のことだが野生動物などにエサをやってはいけない。
野生動物は人間はエサを与えてくれる、人里に下りればエサがあると言う認識を生み出し農作物の被害や、はては人の危害に繋がるのでやめましょう。
「シゲマル!」
「シゲマル、キタ!」
「シゲマルー!」
子鬼たちは嬉しそうに黒田へと駆け寄る。子鬼たちは知性があった、たどたどしいが意識があり、会話も可能。名前を教えてやれば、短期間で覚えるほどの知能を持っている。
「ほれ、あわてなさんな…変わりはないか?」
律儀にならんでお菓子をねだる子鬼たちに手土産の一つであるお菓子を配りながら、そう子鬼たちに問いかける。子鬼たちは哀しみに沈んだ顔をしながら、黒田の問いに短く言葉を紡いでいく。
「リュウ、ナイテル」
「イタイ、イタイ、イッテル」
「そうか。すまんなぁ、ワシらでは…もう、どうにもできん。すまない」
子鬼たちの返答は、黒田の予想通りに芳しくはなかった。長らく龍脈を診ている仕事柄、現状は痛いほど理解していた。
黒田はこの子鬼たちの正体を水子(みずこ)、と捉えている。水子とは、産まれる前の赤子と流産や死産をしてしまった子を指す。この子鬼たちが言うリュウ、とは龍脈のことでこの子らが龍脈の状態を知れるのは人になる前の神の子、魂の状態だからこそ、と。
黒田は子鬼たちは、龍脈と人を結ぶ橋渡しになるのでは…と思っていたりする。
だが、現状海軍はもはや正気すら戻っていない中で、この子鬼たちの所在を教えれば…。いやな惨状が、黒田の脳裏に描かれる。そのこともあって、子鬼たちを知っているのは黒田自身と恵子、さらに感づいている加藤含めた陰陽師達くらいだった。
「シゲマル、イタイイタイ?」
「ちょっとな。…おっと、どうした」
どん、と小さな力が黒田に降りかかる。一人の小さな子鬼が、黒田に抱きついていた。
「ギュッテスレバ、ポカポカ、スル」
「ギュスル!イタイ、イタイ、ナオス」
「ギュー」
その子に習うように、子鬼たちは黒田へと群がった。まるで、主人を心配するような犬や猫のようだ、と黒田はほほえましく思う。本来なら、いけないことであると黒田は十分に理解しているはずだったが…どうにも、この誘惑にあがなうことが出来ず。
そうして、短い時間、子鬼たちと時間の許す限り戯れつつ黒田は再度、鎮守府への道を帰還するのであった。
黒田が離れて数時間後。
貰った手土産を嬉しそうに頬張る子鬼たちの前に、数人の怪しい風体の人物たちが現れ始めた。軍人なのかそれとも傭兵隊なのか…隙のない動き、手には捕縛用の道具または重火器を持っており連携が取れている。子鬼たちは動じることなく、じっと数人に向けて見定め…捉えていた。
赤みがかった金色の目が、ゆらゆらと揺れ…不穏さをあおる。それがまるで百目(ひゃくめ 無数の目がある妖怪)のようにあるのだから、ゾワゾワとした寒気さも追加された。
彼らはその目に体を震わせつつも、頑丈な縄や網を手にじりじりと近づいていく。
子鬼たちは、ニタリ、と嗤った。
「エサ」
「マズイ、エサ、キタ」
「ヒト、ヒト、シゲマルタチ、イガイ」
子鬼とは言えど、鬼であることに変わりはない。
鬼とはいくつか諸説を持ち、ある時は山神のような地霊や祖霊。悪しき霊である怨霊や邪霊、地
獄の餓鬼も鬼とされ、ときには疫病の象徴として鬼、と言うことも。他にも、諸説は多く存在するが、ここで割愛。
水子の方も、供養が不完全な場合…最悪、恐ろしい存在となる。
そして、子鬼たちは黒田に見せる善性とは別の悪性の本性も備わっていたのだ。
彼らは子鬼たちに向け嫌悪感を抱き、捕えようと動き出した。彼らはなぜ子鬼を狙うのか、と言えば海軍による指示…彼らは深海棲艦または化生の捕縛、排除を専門としている。指示通り、子鬼たちに触れ捕縛しようとしたが…近くで鈍く、肉がつぶれ骨が砕ける音が聞こえた。
「は?」
一人の隊員が、抜けたような声を上げた。
音の出どころを探し見つけた途端、思考が一瞬だけ停止し…大きな隙が生まれた。隊員の視線の先には、仲間とされる隊員の頭部の一部が無くなっていた。さらに、全身に巻きつくように黒くドロドロとした液体が絡み付いている。
液体はうねうねと生きているかのように動き丸い形を取ると、はがむき出しの口を作り出した。
ばく、ばく、と隊員を食べ続けている。
肉を食らうような咀嚼音が周りの隊員たちの聴覚を、不快で気味悪さを湧き立たせた。自分たちも行ってきていることなのに、どうしてか…明確な嫌悪感があった。
次に、錯乱が一部の隊員に起こりだした。錯乱状態の隊員たちは、一斉に武器を構え子鬼たちに強襲する。子鬼たちはニタニタ、と吐き気がするような声を反響させ嗤いながら隊員たちの攻撃を受け、避けて笑い続ける。
攻撃されたのなら、正当防衛とばかりに子鬼たちも反撃をし出した。子鬼は知性があった、だからこそ…賢いやり方を知っていた。
しばらく、その林は鉄臭く生臭い匂いが風に乗り林全体を包んでいった。
「シゲマル、コイツ、クサイ」
「ニガイニオイ、キライ」
「ヤニ臭いから離れろ、カス」
「泣くぞ?だいの大人がみっともなく泣くぞ??」
「キミタケ、アイス?」
「バニラダ!アマイ、スキ!」
「香水、だと思いますね」
「ヘリオトロープか。また女ウケの良い奴を使うねぇ」
「バニラ!」
平岡の匂いはある人からもらったもの、多分この香水は渡さないだろうけど
三島、と関係が深い人って…あの人だよね。あんまり掘り下げしない設定だけど