魔人…が着任しました   作:イシグロ

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帝都物語と言ったらあの文豪を忘れちゃあ困る
この人の物語でもある。と、ぼくぁ思うよ



文豪、鎮守府へ行く

 

「こりゃあまた、加藤よ。ずいぶんと可愛くなったじゃないか!はっはっはっは!」

 

なんとも、爽やかで豪快な笑い声が執務室に響き渡る。その笑い声の主は、巷で幸田露伴の再来、とまで名を馳せている幸田成行本人。その幸田に対面するように、あきつ丸こと加藤は眉間にしわを寄せ、なんとも複雑な顔を浮かべ、地を這うような声を上げた。

「…幸田、成行」

「そう睨むな、加藤。馬鹿にすることはせんよ。しかし…またずいぶんと若いですなぁ、お恵さんに黒田さん」

加藤の背に立つ、幸田にとって顔なじみの二人が居た。幸田は、かつて在りし日を思い出しながら懐かしげに視線を向ける。在りし日の二人の姿を思い浮かべ、もう少し若ければ…と想像していた姿に似通っていた。

「お久しぶりですわ、幸田先生。ふふ、相変わらず筆は止まりそうにありませんね。今回の新刊、購読させていただきました…ほんとうに楽しそうでなにより。私も嬉しいですよ。

ですが、お体には気を付けないといけませんよ?」

「生前、文に出来なかったことが出来るようになってますます、拍車が掛っておいでですな。ワシも、先生の作品をまた読めるとなると、嬉しいものです。

そして、こうやって話すのも何年振りでしょうな」

幸田は、かつての記憶が鮮明によみがえる。あの頃は不穏で恐ろしくも、自分にとって輝かしい時代であった。

あの頃は加藤を軸に広がった交友関係、共通の敵を介してのものだったが…幸田にとっては、酷く新鮮なもの。未知との遭遇であり出会いもあれば別れもある、そんな当たり前を間近で目の当たりにした…それも、皮肉にも加藤と言う魔人のおかげで。

幸田は加藤を敵として見ているものの、自分に新たな出会いを与えてくれたきっかけであると、認識をしていた。

「そうなんですよ、今世のおかげでかつて文に出来なかったモノや、今あるアイデアも文にしないとで忙しい毎日です。

…それに黒田さんの言う通り、こうやって知己との再会は何よりのものですよ。加藤、憎からずともお前さんもその一人だ」

「…酔狂なやつだな。俺にはわからん」

加藤は自分にやけに好意的な幸田に首をかしげた。かつては敵同士であり、今世も変わらないはずなのに、と。

 

「お前さんには感謝もしている、ってことさ。…それはそうと、またなんで艦娘なんだ。お前さんなら、あの姿にだって戻れるだろう。出来なくはあるまい?」

 

「…」

こちらの現状を知らない幸田からしてみれば、最もな疑問。

加藤は恵子を含め、黒田と甘粕に黙っていた。今の姿はあきつ丸だが、その気になればかつての姿に戻れることを。だが、加藤は黙っていながら、あきつ丸の姿でいる事にしている…なぜなら。

「何ぞやましいことでもあるのか?」

「やましいですな。十分に…」

黒田は幸田の疑問に答え、その言葉と共に壮大なため息をこぼした。まるで、加藤の思惑を理解しているかのような口ぶり。実際、黒田が同じ状況であったなら加藤と同じような行動をする自身があった、それが黒田にとって罪悪感でもあり、背徳へとつながる。

すると、恵子がおもむろに口を開いた。

笑みは変わらず仏のように、慈悲深く見通すようだが…目が、笑っていなかった。

 

「…加藤、私が知らないままだと思いですか?」

 

今まで黙っていた恵子の言葉に、加藤はやや顔が青くなる。ただ、相変わらずの仏頂面なのでそのちょっとした変化は解りづらかった。

「………」

「加藤、お前さん…まさか、同性だったら合法的にお恵さんとずっといられると思っているんじゃあるまい?」

「…」

「沈黙は肯定と捉えるぞ。加藤、まぁその、お前さん…男なんだな。大丈夫だ、お前さんほどならスケベくらいでようやく釣り合えるぞ」

「おぬしには驚かされて、いや…呆ればかり起きてかなわんわい。以前なら、腹立つくらいに堂々としておったのにのう」

言うわ言うわ、黒田と幸田のはっきりとしたもの言いようの数々に加藤は眉間のしわをさらに深くさせる。

 

さんざん言いきった後に、幸田はふいに柔和(にゅうわ)な笑みを浮かべこう続けた。今まで見てきた悪辣な魔人加藤とは別の、ふとした本心に近い素顔がを見れたことに、満足感を覚えていた。この男も、人間なのだなと…思い馳せながら。

「それだけ素直になってきてたようだな、加藤」

「…」

「はっはっはっは、そう眉間を寄せるんじゃあない。可愛い顔が台無しだぞ」

「そうですよ、加藤。私も、先生と同じくあなたを可愛い人と思っているのよ、ね」

未だ、笑みを浮かべていない加藤に思うところがあったのだろうか恵子の細い両手が、加藤の頬に添えられる。そうして、むにとつままれ伸びた。

「やめほ、へいほ…」

「良きかな、良きかな。そうだ、うちにも艦娘が居るんだよ絵描きのもんでねぇ、今日はそのことも話そうと思ってね」

「かえへ」

「ここは随分と陸軍が多いと言うじゃないか。その艦娘、秋雲くんと言うんだがどうしても資料として、いろいろと衣装やらなんやらを聞いたり、見たりしたいと言い出してね」

「軍モノを描く気で?また、ニッチなところを攻めますなぁ」

「お、理解があるのかい黒田さん。意外だねぇ」

「俺よりも、甘粕や平岡にやらせておけばいいだろ。俺のは私物じゃあない」

面倒事だ、と理解したのかあからさまな声色で甘粕と平岡に投げる。自身の着る軍服も、陸軍使用ではあるが関わりたくないとの表れがハッキリとしていた。

その上を述べ恵子に遊ばれながらも、拒絶ではなく好きにしろとばかりに澄ました態度を取っているあたり幸田も、意外とばかりに物珍しげな顔を浮かべる。あの魔人加藤が、…という心情なのだろう。

そんな態度をしながらも恵子の両手を引き付け、さらに自分の近くに居させようとするあたり、独占欲を表立ってさらけ出していた。

加藤の見慣れた独占欲の表れを見ながら、黒田は呆れと納得を思わせつつ言葉を紡ぐ。

「普通に元の姿に戻ればいいではないか。ワシもそろそろ、おぬしが見たくなってきたしのう」

「酔狂ものめ。…日取りは一日だけだ、それ以上はやらん」

「いいのか?てっきり断るものかと」

幸田は加藤の返事に、目を丸くした。断られると踏んで、一応とまでに話を振ったからだった。

 

「…後々うっとおしいことが目に見える。早めに片す方がいいと思っただけだ」

 

 




幸田先生と秋雲さんのコンビが見たくて…
青葉ちゃんとの絡みも捨てがたいのよねん

あの易者、泉鏡花は?
出したい、がネタが思いつかん。てか、あのひょうひょうとした性格がなぁ…
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