魔人…が着任しました   作:イシグロ

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長くなったので、分けました

今回は土師のイケメン、金鳳くん登場。男でも惚れさす美貌の美青年。加藤と死闘の末、なんかさんざん罵倒された可哀想なキャラの印象

あと、荒俣先生の美少年に対する描写、…気持ちわ…ゲフン、すごいよ


土師の陰陽師 その壱

 

立ち姿はシャクナゲ、座りでもすれば菊のように気品あり。

その人間は周りの視線を独占するかのような、気品を漂わせた美貌を持っていた。白いワイシャツに、黒いスラックスと言うシンプルな服装。背丈は平均的な女性以上の身長で、体格は細い。よく目を凝らせば、筋肉がしっかりとついているほか、喉仏もくっきりと分かる。ここでようやく男、と認識できる。

美丈夫の名は、土師金鳳(はじ きんぽう)。

土師一族の若頭であったが、今世でも隠宅(いんたく 墓づくりという意味を持つ風水での呼び方)の陰陽師。加茂と同様に提督をしており、彼の所属する鎮守府は最有力とも言えるほどの実力で有名である。また、加茂とは顔見知りで道は違えども提督となっても交流が続いているほど仲は良好であった。

そんな土師は、秘められし目的のためにとある鎮守府へとやって来た。帝都から遠く、東北地方を担当としている小さな鎮守府。その鎮守府は良くも悪くもなにかと、噂が絶えない鎮守府として有名で、さらにはとある筋の話では…土師にとって因縁とも言える相手が居るとされていた。

ここまでの距離で言えば、土師が務める京都の鎮守府から片道でも三、四時間ほどかかった。

長旅であっても、疲れを見せない土師。駅からさらに歩いてようやく、目的の鎮守府へとたどり着いた。

鎮守府内では人払いの陣が張られていた。これは黒田を龍脈の流れを読み、加藤がそれに沿って陣を貼ったのである。一般人の侵入を防ぐほか、海軍から送られる刺客やスパイ、ハニートラップ要因を退けるため。

しかもこの鎮守府へと向かうには、特殊な札を持ち合わせなければ辿りつけない仕様となっていた。

…ただ、土師は陰陽師であるため、陣は効果をなさず容易に入れた。結界の性質を理解していれば、死角もとい穴を看破できるからである。

そうして鎮守府に入り込むことに成功。取り付けられたインターホンを鳴らすも、返事がない。さらに声を掛けるが、これも反応が無かった。土師はドアノブに手を掛け、数回ひねると…鍵が掛っていた。元より、アポイントなしでの唐突な訪問であったため、なおさら申し訳なさがあった。

留守と見て出直すか、と悩んでたところ…。

 

「へぇ、人払いがあるのに人が来るんだな」

 

背後から飄々とした声が上がり、土師はとっさに振り向く。

そこにはカーキ色の軍服を着た軍人が二人。それは陸軍所属を意味し、土師はどうして陸軍が、と疑問を抱いた。

その陸軍は甘粕と平岡。変わらず監視としての仕事と、振られた事務仕事をするために訪問をしてきたのであった。人当たりの良い笑みを浮かべ、気付かれないように甘粕は土師の仕草、背格好、顔だちを観察。また、金鳳の艦娘に似た蠱惑的ながらも品がある美貌に、同じ男ながら一瞬言葉を失いそうになった。

平岡も同様、甘粕と同じく言葉を失いそうになりながらも、どうにか気をはり言葉を掛ける。

「失礼ですが、…陰陽師の土師金鳳さんですね」

「えぇ、如何にも。私は土師金鳳です、失礼ですが…こちらは海軍基地です。なぜ、陸軍の方々が」

金鳳のもっともな疑問に、平岡は続けざま言葉を紡いでいく。

「こちらの基地に私どもと同じ元陸軍所属の者が居りまして。その様子を、と」

「…もしや、魔人の」

ふと、土師から漏れ出た言葉。

おそらく、かまをかけたのだろう。かまをかけられたことを理解しながらも、それを聞き逃すことは無かった。

わずかな間が空く、それを終わらせたのは甘粕の愉快そうな笑い声だった。

「……ほぉ。土師提督から、その言葉が来ると言うことは。ハハハ加藤め、相変わらずどこでも敵を作ってるなぁ!」

「やはり、加藤が居るのですね」

「居るさ。だが、今は任務中でいないと聞いているな…まぁ、早めに片して切り上げてくるだろうよ。

提督さんに用なら、夜にならんと戻らんぞ…いや、もう一人は少し待てば来るかもしれん」

そう、この鎮守府に所属する者たちの予定を思い出しながら、ぶつぶつと独り言ちる。甘粕の予想外の鎮守府内の把握っぷりに、平岡は呆れを含ませたような声を上げる。これでは、もはや甘粕も家人と変わらない、というほど。

東条が自分を追加で遣わす意味が、今やっと理解できた。

「…甘粕少佐、貴方はどこまで把握しているんです?」

「昔の縁のおかげでな。それにちょうどいい、俺は合鍵を持っている…ちょいと待たせてもらおうじゃないか」

カラカラ、と気前がいいとばかりに笑う。

甘粕は袖口からそれを取り出した。赤紐は腕に巻かれ、その先は鍵へと繋がっている。それを使い玄関の扉をかちゃり、と開けた。手慣れたように入る甘粕の姿とは裏腹に、土師と平岡はなんとも言えない、言葉にしづらい様子を見せている。

どうして甘粕が合鍵を持っているのか、そんな疑問がわいたのだ。

平岡の記憶の中に面倒くさそうな、相手にしたくなさそうな顔を浮かべる黒田の表情が浮かぶ。おそらく、黒田はしぶしぶと甘粕に合鍵を渡したのだと予測。これをするにあたり責任者である恵子から、渡すように言われたのだろう。

入り浸りがちな甘粕を思ってのことだが、それでいいのか…と平岡はだいぶこの鎮守府のプライバシーに対し心配になってきた。

 

「…脅しましたか?」

「脅してねぇよ?!」

 

 

鎮守府内に入っても、甘粕の家人っぷりに拍車が掛りっぱなしであった。

どこに何があるやら、どの部屋が客室に最適だとか、はてにはこの鎮守府に所属する者たちの私室の場所さえも把握しているのだ。ついでとばかりに、ちゃっかりと甘粕の私室まであるのだからたちの悪い監視役である。

黒田の反応も、最もだと平岡は思った。

土師はと言えば、すんなりと鎮守府内に通されて困惑していた。追い返されると思っていたからだろう。

「そんで?またなんでこの鎮守府に来たんだい、土師提督。

あくまで加藤が居る、そんな鎮守府なだけだし秘密にするようなものもない。秘密の園と言えるはずの加藤の私室なんざ、風通しが良すぎるほどつまんねぇものだよ」

なぜ私室さえも把握している甘粕に、もはやかける言葉を無かった。

「…私は、加藤の目的が知りたくやって来たのです。帝都の方は風水的な悪い気で充満していますが、崩壊するには今一つ…なけなしの要石と龍脈でどうにかなっている状況です。そこを付けば、あっという間に崩壊できるのに…反応が無い。

解らないのです、あの魔人加藤の目的が」

「……。

難しく考えなくてもいいとは思うね。あいつを知る俺から言わしてもらえれば、単純に張り合いがないし、つまらん…と思ってるだろうよ」

「張り合い、が…無い?」

「俺はそこまで呪術的云々は詳しくはない。最低限の知識だけだ。

だが、俺でも解るし言わしてもらえれば…帝都、いや世界は緩やかな衰退が確定している。滅亡でもする…なんせ、人は考えることもやり遂げる苦悩も忘れちまっているからな。なんでも他人任せ、…自分の責任を持たずに首を絞めて自殺するだけだ」

そこに、張り合うものがあるか?と口角を上げ、甘粕は土師に問う。

続けるように、甘粕は言葉を紡いだ。なんとも、あっけらかんとしたサッパリな言い方である。

「ま、引導くらいは渡すさね。すっぱりと、無慈悲に…俺の予想でしかないがな」

土師はその返答を聞き、じっと出されたコーヒーを覗きこむ。こげ茶がかったブラックコーヒーは何も言わず、熱も冷めてぬるくなっていた。

ぬるくなったコーヒーを一口。舌にあの独特の苦さが、広がった。

しばらくの間を置き、土師は口を開く。ぽつり、ぽつりと言葉をゆっくりと、紡いでいく。

「帝都は死に絶えるだろう、これは私どもでも見解は一致しています。…でも、安寧がほんの少し、長続きして欲しいと思ってさえもいます」

「…」

「すべては我々の独断です。えぇ、陛下でさえも…把握していません。ですが、陛下は察しているでしょう。長くは無い、滅びはすぐ隣に居る、と。

…これは、間違いなんでしょうか」

「さあな、正解なんざ当人の気持ち次第だろ。それは土師提督、あんたが決めることだ」

「薄情ではないですか」

「平岡、薄情でいいんだよ。考えることもしない奴らのために、俺は時間を割きたくはないね。さっさと帝都なんざ滅ぶべきさ」

いつものように、普段のように飄々と素顔を見せないニヒリストはそこに居ない。柄にもなく、はっきりと真剣な顔で平岡を見ていた。

甘粕のあまりの表情に、平岡は言葉が喉に引っかかり詰まってしまう。

「…平岡、お前は加藤が認めるほどだ。その真っ直ぐさ、俺は好きだぜ…だが、時としてその真っ直ぐなものは己の足を引っ張りかねない。折り合いには気を付けろよ」

「は、い…」

「……」

再び、長い沈黙が続いた。

カチ、コチ、壁に掛けられた時計がその静けさを強調するように響いている。入れられたコーヒーはぬるま湯から冷たくなり二度と、熱を持つことは無かった。

 

 




艦これなんだが、帝都物語が出張っているな。艦これ要素強くしないと…

そろそろ、ケッコンカッコカリネタ入れたいな
あとはアズレンネタ…あれも陰陽師要素あるんだよね
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