魔人…が着任しました   作:イシグロ

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地雷源注意です
黒田×恵子です、いや黒田→恵子といいますか

ここまで、黒田茂丸というキャラを好きになるとは思わなんだ
だって良いキャラしてんだよ、恵子さんと分野は違うけど隣に立てる人だし
護法童子とやり合えるわ、何なんだこの人



懺悔の夜に ※地雷注意

 

土師と加藤がキッチンで対話を終えた時間帯。時刻は深夜一時を過ぎ、二時を迎えていた。

月はとっくに天頂から下へと沈み、丑三つ時はあと一時間くらいか。

かたかた、とキーボードが素早くタイピング、叩かれる音が部屋に響く。

周りの本棚はすべて埋め尽くされ、大きいものもあれば薄い冊子に近いものも。どれもが地相、地図、環境と言った自然に関する書物ばかり。時折覗けるのは、風水と言う占術の一つの本であった。

忙しなくキーボードをたたく男、黒田は画面を一心不乱に見つめている。

パソコンの他に彼の周りにはスキャナーやプリンター、さらにノートパソコンがぶら下っている。

デスクトップには一つのソフトが起動していた。風水術の情報をデータとして落とし込み、地図に沿って地相を視る及びシミュレートする画期的なソフト。

 

【シム・フースイ】。

 

かつて、黒田はこのソフトの前身となる仕組みを香港で開発していた。それが研究及び開発を進めていき、コンピュータが世に出てきた平成の時代、完成。シム・フースイと名付けられた。

そのシム・フースイの開発に至ったのは魔人加藤の存在。

黒田は晩年、加藤の存在を危惧し地脈、龍脈の異常をすぐに察知し、原因の特定を急がせるために作ったのである。黒田自身、生身であり活動の限界があるため、彼の息子、孫へと繋げるために、という理由もあった。

長く不穏な昭和が終わりようやっと平成の時代を迎える。この時、すでにコンピュータは一般家庭へと進出し、さらに性能も格段と良くなっていった時代。シム・フースイは黒田の孫にあたる黒田龍人(たつと)の元へと、渡った。

今世でも、シム・フースイのシステムは現存していたが…。いかんせん、龍人が無断で持ち出したために、更新はおろか今のコンピュータよりも古いバージョンとなっていた。

黒田はこの事実を知り、シム・フースイを新たなバージョンへと更新し、加えられなかった情報を落とし込む。高校へ入学する際に、プログラムを専攻出来る科のある学校へと入学。才があったようでおかげでプログラマーとして食っていけるほどの腕を持つが、AIが独占状態な情勢的に安月給な職だった。

必然的に、世知辛い世を生き抜くため会社員となり片手間となってしまい本業にしたかった風水師の仕事をするようになったのである。

 

「あとは、これをスキャンして…」

 

机に乱雑されたある地図を引っ張り、スキャナーへとセット。

スキャンが終わり、画面には先ほどと同じ地図を写した画面が映し出されていた。その地図は、今年の東京の地図で有名どころの観光スポットが記されていれば、かの東京の守護地霊である将門公の首塚も、反映されている。

「東京も、二百年以上も経てば様変わりするのう…」

感慨深く、そう独りごちる。

長時間の作業であったのか黒田は一息つくように背をぐぅーっと伸ばし、肩を回せばポキポキ、と骨が鳴る音がした。

「ぐ…つぅ。今は若けれども、かつてのようだったら半分以下しか作業できんなぁ」

コンコン、と控えめにドアが鳴る音。

「恵子です。お茶をお持ちいたしました」

「お、お恵さん?!」

突然の声に、黒田は椅子からずり落ちそうになるもすぐに体性を整え、慌ててドアを開く。そこには、白い着物をまといストールを方にかけた恵子が立っていた。手にはお盆を持ち、湯呑みが二つ…入れたてのようでまだ湯気がやんわりと出ている。

普段見るような余所行き、きっちりとした格好ではない姿。自身よりも年下なはずの恵子の、艶めかしく年上のような淡い色気に黒田はぎゅう、と心臓が締め付けられた。

より一層、女性として見てしまい情欲を掻き立てられる姿。黒田はその背徳的な気持ちを、何とか抑える。

「こんな夜も更けきった時間、どうしたのです」

「えぇ、明かりがついていたので煮詰めているのでしょうと思い…ご迷惑でしたか?」

「そんなわけありません、むしろありがとうございます。…いただきます」

湯呑を一つ受け取り、息を一つ吹きかけ口に含む。

「よろしければ、どういった作業をしていたか…教えてくださいますか?」

「そうですな、少しお待ちを」

黒田は湯呑を机に置き、ベッドに乱雑した資料をどかす。どれも東京の地図で、それもここ数十年の古地図ばかり。その東京の中の地図から一つ手に取る。かつて黒田が手掛けた龍脈を書き記した地図であった。

その地図をスキャナーへとセットし、解析をかけた。

恵子を先ほど自分が座っていた椅子に腰かけるよう誘い、画面を見やすいように少し移動させる。

恵子の目の前には、手にしていた東京の地図が反映された画面がひとつ、端にはシム・フースイと記されていた。

「これは、東京…ですよね」

「えぇ、これはシム・フースイ。ワシが香港で開発していた風水シミュレータです。地図を落とし込み、そこからAIによる龍脈の流れを割り出し、異常を検知したり予測を行うソフトなのですよ」

「まぁ…」

たとえば、と黒田は恵子の隣に立ちマウスとキーボードを動かす。

恵子の傍に立つだけでもドギマギ、と緊張する中。さらに追い打ちをかけるように、風呂に入ったようで花の良い香りと、石鹸か甘い匂いが黒田の鼻をくすぐり心臓を早くさせる。

「こちらが去年の東京です。変わらず龍脈の流れが悪く、いくつも沈殿している箇所がございますでしょう?」

「えぇ、十個以上もありますわね…。これでは気の流れが滞り、悪いことばかり起きますわ」

黒田は地図上の一箇所をクリック。画面には拡大図が表示され事細かい周辺が映し出され、ポイントもはっきりと映し出される。

映し出しだされた地図には、赤い線がうねるように何本も引かれている。龍脈を表す線で、沈殿する箇所は山を表すようにうねりが強い。拡大した画面には沈殿箇所が二か所ほど、歪みがハッキリとしあまり、良いうねりではないと恵子は思った。

「この画面では二か所、沈殿していますな。このように、シム・フースイは龍脈の流れを感知、情報を細分化させさらに、AIによる割り出しでこの結果となっております。この沈殿箇所をクリックすれば…」

黒田は沈殿箇所をクリックすると、場所の名前と要石の役割とされる情報が表示。この場合、かなめ石の紛失が要因、とされる内容が出てきた。

「どうやら、要石が無くなったことによる気の滞りが原因ですな。こういった症例がだいたいで、中には神域を表す神社仏閣の取り壊しによって、滞りが発生することもあります。取り壊すにしても、小さな社および祠を作るべきなのですが…」

「今では、そのようなことはしませんわよね」

「えぇ、嘆かわしいことに…今の情勢、神秘やオカルトは異端もいいところですから」

情報社会と言う近代的な情勢の中で、非現実的なオカルトおよび呪術、神秘は人から嫌煙されがちであった。すべてAIによる算出が一般化し、オカルトなどは不確定要素の多さから人々は離れ、AIだよりになってきた。

占術なども、雑誌での占いコーナーとかで活躍があったが…今は、少なくなってきている。

「と、まぁ…シム・フースイはこのようなことが出来ると言うことです」

「画期的なソフトですわね。私どももこのようなソフトがあれば、と嘆くくらいに精密でしたよ」

「そう言ってもらえるだけでも嬉しいですよ」

照れ隠しとばかりにくすくす、とお互いに小さく笑いあう。

すると、黒田は口を閉ざし真剣な顔で恵子を見つめた。決心をしたのかそうして、重い口を開け言葉を紡ぐ。

「…お恵さん、一つ…聞いてもらえないでしょうか」

「はい…?」

「あの廃寺のことです。ワシはずっと、後悔しておりました…貴女を、置いて逃げてしまったことに」

「黒田さん、そんな…気にしていませんわ」

「いいえ。貴女は一人の女性です、巫女ではありますが…一人の、女性なのです。腕も細く、一度力を入れればひしゃげかねないほど、か弱い人と自分は思っています。

そんな貴女を、あの魔人の手の中から引きずり出せなかった自分が…何よりも腹立たしい。覚悟は今でも、十分に理解しております…命捨てる覚悟、感服でしょう。ですが、…ワシは今でも後悔ばかりです。こうやって、話すときも時々、罪悪感で押しつぶされそうなのです」

黒田のその懺悔に恵子は戸惑いながらも、真剣に聞き入る。この人はこんなにも優しいのだ、と黒田を改めて知った。

将門の巫女として厳しい修練をして、さらには女としての幸せを捨てた自分を、今でも巫女ではなく女性として見てくれている。そんな黒田を何も知らない哀れな男、と思ってしまいながらも自分を見てくれている、という嬉しさがこみあげてきた。

ふいに、黒田が膝を曲げ床に正座をしだす。

恵子はどうしたのだろう、と疑問に重い声を掛けようとした時…。

ガバっと勢いよく頭を下げ、土下座をしたのだ。あまりの行動に恵子は驚き口を抑え、声を上げてしまった。

「く、黒田さん!?」

「申し訳ありません、お恵さん。ずっと、貴方に謝りたかった…満州で最期にお会いした時、十分と思っていましたが。それでは、足りないと…思ってしまった。今世に生まれ、貴女にお会いし…ずっと、謝りたかった」

「…く、ろ…だ、さ、ん」

申し訳ありません、と黒田はハッキリとした声で、恵子に謝罪を何度も入れる。恵子はその進撃な姿勢に、言葉を出せなかった。

どういった言葉を掛ければいいか、そう悩んでしまっていた。その上で、黒田の苦悩の末の謝罪に自分の不甲斐なさと申し訳なさを覚えてしまう。

恵子は椅子から立ち上がり、そして…黒田の前へと座った。温顔な表情を浮かべながら黒田に、顔を上げるよう言う。黒田が恐る恐ると、顔を上げるのを待ち…慈しみを持って、黒田を抱きしめた。突然のことに、黒田は声が出ず言葉も喉に詰まらせてしまう。

「お、けい、さ」

「もう、いいのです。黒田さんのそのお心遣い、十分です。あなたは、貴方を許してください…私はとっくに、貴方を許していますの」

目の前に、観音菩薩が居る…黒田はそう思ってしまった。

お互いに口を閉ざし切り、沈黙が続く。

外では虫の音と、僅かな風の音が聞こえる。遠くで、波の音も聞こえていた。

ほんとうに、静かな夜だった。その沈黙を破ったのは黒田であった。彼は心臓が早くなっている、とそんなことを思いながら恵子に腕を回し、抱いた。

「…黒、田さん?」

恵子は不意のことで、戸惑う。さらに、見知っているはずの知己の男性としての感触に、心臓が高鳴りを覚えてしまった。

 

「好きです。…お恵さん、貴女が好きです」

 

「ぁ…え?」

「ずっと、お慕いしておりました。はじめて会った時、こんなにも美しい人は見た事が無い、と思っていたのです。それからと言うもの、あの日こそが天命であったのでしょう…ワシと貴女は再度、逢いまみえた。加藤に敵対するものとして…」

「…黒田さん…」

「命を捨てる覚悟を持ちながらも、その分け隔てない慈愛が眩しい。手前は、貴女のその優しさが温かさを護らねば、と思った次第です。しかし、どうでしょう。ワシはここまで惚れ込んだ女性を易々と見離し、逃げおおせた。

情けない、なんとも情けない。それでも、貴女が恋しい…愛したいと思ってしまうのです。こんな手前を、笑ってください。蔑んでください」

「いいえ、そんな…自分を悪く言わないでくださいませ」

「貴女は、優しすぎる…」

言葉を紡ぎ続けるたびに、より一層抱きしめる力が強くなる。恵子が、自分から離れないでほしい、とばかりに。黒田自身、蔑み離れて欲しいと願っているのだろう、だが…それはまったく、矛盾していた。

熱を持ち、自分よりも少し小柄なはずの黒田がどういったわけか、大きいと感じていた。

恵子は、黒田を男であると認識してしまった。加藤以外の男と言う熱情を、知ってしまったのである。その事実を知ってしまい、恵子は途方もない悩みを持ってしまう。

「…お恵さん、貴女は加藤に抱かれましたね。いいんです、貴女と加藤の縁は決して切れません、それに…ワシでは貴女の隙間を埋めれないでしょう」

「…」

「お恵さん、ワシは貴女が加藤を好きであっても…この気持ちは揺らぎはしません。生涯、ずっと…貴女を愛しています。馬鹿な男に惚れられた、と思ってください」

「お願い、です。そんな…それでは」

「道化ですよ。ワシは」

恵子が言いかけた言葉を、自分で宣言する。震えた声で言葉を終えると、黒田は恵子を見つめた。

苦しそうな顔だが、それを口角を上げどうにか誤魔化している…そんな心を締め付けられる、微笑み。

…一瞬だった。

恵子の唇に、乾いた厚めの唇が当たったのである。恵子はその一瞬のうちに、何が起きたか理解できず…ほんの数秒、呆けてしまう。次第に、口づけをされたんだと理解した。

「貴女の慈悲に付け込むような形ですが、…これくらいは許してください」

「…黒田、さん。私は」

「さぁ、もう遅い。部屋まで送りましょう…」

名残惜しそうに言葉を掛けながら、抱きしめていた腕を解き恵子から離れた。そうして、立ち上がり恵子に手を伸ばす。

恵子は黒田のその様子に、言葉をどうにか選んでいくが…最適とも言える言葉が見つからなかった。恵子はしばらく黒田を見上げながら、無理やり繕った笑みを浮かべ返事を返す。そうして、黒田の手を取り立ち上った。

 

 




「…お前、ずいぶん垢抜けたなぁ」
「おぬしらしくもない言葉じゃのう。…まぁ、少しは晴れたかな」
「そうかい」
「明日、槍でも振るか?それとも、蟲か?…蟲は嫌じゃな」
「ぶっ飛ばすぞ」

恵子さん愛されネタできたよ!
え、もっとやれ…言ってない?ア、ハイ

恵子さんマジで色んな人に惚れられるほど美人で強い人、でも理解者は加藤なんだよね
相思相愛だわな…
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