魔人…が着任しました   作:イシグロ

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黒田茂丸先生、登場です。
若いです、見た目イメージはOVA版を若くした感じ。

あと、嘔吐とセンシティブ描写あります。


風水師、因縁をふたたび

 

「…お、ぉおぇええ…ぅげえぇえええ!!!?」

 

嗚咽が、部屋中を響く。

つん、と酸っぱい匂いと共に吐しゃ物を吐き出す音。それが、一定に何度か繰返しこうやって書いているだけでも、不快に思えるほどひどい有様となっている。甘粕は目の前の男に同情と共感を得ていた。

なんせ目の前には加藤が居る。それも、思いもよらぬ形で。

 

黒田茂丸は風水師だ。

かつて、まだ蝦夷と呼ばれていた北海道で活動していた名のある風水師。現在も同様、北海道で風水師と掛け持ちをしながら働き、時折大陸へ渡って風水の修業をしていた。

中折れ帽に全身赤銅色のスーツで、首元の黄色いスカーフを巻いている。今世の体は若い方で、昔よりもふっくらとはしておらず、程よく鍛えられた小柄の身丈。男としてのプライドはあるのか、小柄な身長にコンプレックスを抱くも…今は、それどころではなかった。

黒田茂丸は軍の招待により、とある基地へと配属された。そこにはかつて密かに惚れ、今世でも惚れてしまった目方恵子の姿があった。それに満州で縁のある甘粕、そして…因縁の相手である加藤、加藤保憲…の姿があった。

しかし、黒田の記憶では加藤保憲は細身で長身、鋭い目を持った顎の長い不気味な男だった。

今の姿はどうだ…真逆だ。黙っていれば可憐な出で立ちながらも、喋ったり嗤うたびあの不気味で鋭い犬歯がのぞける笑みを向けている。

混乱だ。混乱を巻き起こし、拒絶反応が起きた。いやな化学反応を見てしまったとばかりに、吐き気が起こった。

案の定、実際吐いてしまった。幸いバケツがあってよかった、と心から思えるほど黒田は精神を削りに削る。黒田はこう思わずにはいられないほど、まいっていた。加藤の罠か、と憎むほどに…ハッキリ言おう、まったくそんなことは考えていないのが、加藤である。

実際、加藤はちょっと傷ついていた。

吐かれるなんて思ってもみなかったのだ。

「きたねぇな。俺だって吐きたかったんぞ」

甘粕は追撃を掛け、加藤の傷心が少しひどくなった。

「おげ、ぇ…お、お前。加藤保憲、か?…げぇええ!」

一度吐いたら止められない、止まらない。

「黒田さま、大丈夫ですか?」

恵子は未だ吐き続ける黒田の背中を、頻繁に名前を呼びながらやさしくなで続ける。吐しゃ物まみれの汚れた口元を、水で濡らしたタオルで拭いてくれるなど、甲斐甲斐しく黒田の世話をしていた。

加藤と甘粕は二人して、恵子の世話を焼かれる黒田に対しうらやましい、と妬むほど余裕があった。黒田も黒田で、加藤との戦いで生き延びていたため…いやにずぶとかった。決して口に漏らさぬように役得、と思っていた。

同じ穴の狢、と言えよう。

しばらく吐き続け、ようやく落ち着きを取り戻す。今の黒田は最初よりもゲッソリとしていて、顔色もすこぶる悪い。まるで死人だ。ほぼ、胃の中のものを空っぽにしてしまったとみる。

「…ぉえ、なぜ、…わしを呼んだんだ。言っておくが、わしはまともに戦えんぞ」

「風水を極めたお前が、この俺と力比べをした。クク、そこまでする必要性なかったと言うのに…まさに仙人だ」

「要件を…言え…また、吐き気が」

「まずはこの庁舎の地相を調べろ。上の者はどうも、軍人ではない神職どもが気に入らんらしい…おかげで、恵子ともども思うように動けん」

そうは言いつつも、加藤はあまり気にしていない様子を見せていた。勝手に死んでいく東京こと帝都に興味を失せていたとみる。

すると、黒田の介抱を続ける恵子の顎をくい、と上げさせる。いつまでも黒田を相手にしていることに、つまらなく感じたのだろう。甘粕と黒田はその様子をみてめんどくさい男だ、と心の内で一致した。

「今はそう言ってもおられんと言うのに…。あい分かった、すぐにでも地相を調べよう…ぅぷ」

「大丈夫かよ…」

かつての面影もない頼りなさげな黒田を見て、甘粕はそう口にしてしまう。

なんとも不安げな発進である。

 

「…加藤、あなたはなぜ私の下に就いたのです?」

加藤、あきつ丸は恵子の膝でくつろいでいた。帽子を胸もとに置き、仰向けでじっくり、恵子の胸を見ていた。丁度、眼前に収まる位置である。幸い、恵子はその視線には気づいていない。

そんな恵子は現在の加藤の姿に、戸惑いが残っていた。普段とは違う加藤の姿に未だ慣れていない。それも恵子が今まで見た中で、飛び切り美しい少女ときた。しかし、姿は違えども加藤は加藤、恵子を所有物とし、妻と扱うことにかわりない。満州での暮らしを思い起こさせるくらいに、加藤は魔人と言うよりも、一人の男の様を表している。

懐かしさと自身の若さを実感した。

「就く、だと?ハハハハ、恵子よ俺が兵法も殺しも知らぬ女に就くわけなかろう」

「ならば尚のこと、以前いた立ち位置に居ればよかったではないですか」

「あそこはつまらん。かつての軍も落ちぶれたものだ」

はっきりと、加藤はそう言葉を紡いだ。そこにはどこか、悲しげに物言いたそうな目をしている。かつての面影を望んでいるかのように。恵子はそれを見逃さなかった、その目を見て加藤の言いたい言葉を、代弁する。

「全部、つまらなかったんですね」

「そうだ。今の世はつまらん、神秘を否定し続け、科学に頼り切り、神でさえ敬わぬ…自然さえも否定する始末だ。その結果低級の怨霊に負けるほど、落ちぶれた者たちばかり。

つまらん以外の何ものでもない。ようやく恵子と甘粕、あの風水師黒田会えたことが何よりの救いだ。三島…いや、今は平岡に戻ったのだったな。

あの男も、心の内では悲観に暮れていよう」

加藤と言う男は、かつての帝都を望んでいる。帝都が憎いはずなのに、その帝都を恋しがっている。

「加藤、ならばこの帝都を、日本を殺せばいいではありませんか」

「ふ、将門の巫女ともあろう女がそこまで言うとはな」

「どうなのです?」

「殺す価値もない」

バッサリと斬り捨てる、それくらいに加藤はこの国に対し、思入れもなかった。実際、今まで帝都に対し彼が抱くのは憎悪と憎しみなのだが。ここまで見限ったのは初めてであった。

しばらくの沈黙、それを終わらせたのは恵子で…何気なく、彼女は言葉をこぼした。最初に逢った時から、ずっと気になっていたこと。

 

「艦娘になってまで、何をしようと言うのです」

 

その言葉は、不安な感情が混じっていた。

加藤は、あきつ丸は…じっと恵子を見つめ、彼女の頬に向けてを伸ばす。伸ばされた手に触れ、愛おしむように恵子は頬をすりつけた。

恵子は、加藤を愛していた。

人を殺すことも、陥れることも、凌辱することもいとわない。そんな男、加藤保憲をただ、愛していた。将門の巫女としての使命を上げながらも、その内に秘めた愛は本物であった。加藤の手が頬に添えられた時、無意識に加藤を求めていたのである。

「…お前に逢うためだ」

「私に?」

「そうだ。このような世の中で、ようやく見つけたのだ…俺の女よ、妻よ」

加藤はすく、っと起き上り恵子を押し倒す。軍服のボタンを強引にはらい、首元とその肌があらわになるや否や、顔をうずめ貪る…。

恵子は振り払わねば、と思うも…彼女も求めていた。憎き相手とはいえ、愛した男の情欲だった。加藤の愛慕がだんだんと激しくなり、胸、腰に太もも、体全体を触れていく。恵子は声を押し殺し、加藤の愛慕を受け入れていく…天井の明かりだけが、二人を見つめる。

時計の針の音が、爛れた空間に響く。

外は夕焼け、たそがれ時…現世と幽世の境目が曖昧となった時間だった。

 




恵子さん、まじで魔性菩薩だから原作見てくれ。
拡大解釈してるかもしれんが、まじで惚れてる人多いから。

あと、恵子さんエロいぞ。かわいいぞ。


加藤があんな姿になればぼくも吐くかもしれん、いや、失神か発狂だわ。
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