幻談は下巻が来てから読みます。帯に紹介された別書の役小角がほしいと思いました
今回は鳴滝と寺田先生。この二人もきっても切れない仲なのよねん
じりじりと照りつける夏の日差し。梅雨もとっくに明け、ひんやりとした空気が恋しくなるほどの暑さばかりが続いている。
この暑さに負け冷房を求めクーラーがガンガンと聞いた部屋に、二人の男性が入室。物理学者の寺田寅彦にもう一人は、数学教授の鳴滝純一。かつて生徒と先生の関係であり、鳴滝は卒業後ともにこの大学に務めることになった。
加え、明治の記憶を持ち加藤保憲との縁を持つ者たちでもある。
「鳴滝教授、ここは涼しいねぇ」
「畏まらないでくださいよ、寺田先生」
「ははは、では鳴滝くんと言わせてもらおう。どうだい、慣れてきたかね」
「ええ、慣れてきましたよ。今でこそAIで僕ら教職、研究員などの立場が失われてきていますが…。こうやって、論争と意見を交わし合うのはあの頃に似ています」
「今では考える力、悩むこと、解決しようとすることが失われてきた。なおさら、この環境が久しいと思えるね」
AIによる高度計算、さらに幾通りの可能性が導き出されたことにより人の立場がなくなってきた。
文明の発達で、人としての能力が退化していきもはや何でもかんでもAI頼り。だが、それでも確固たる個を持った人々は失われていなかった。彼らはこの力を使うためこうやって大学などに通い、意見と論を交わす場所に集まる。寺田と鳴滝も彼らと同じように、考える力と解決する力を求め、大学の門を叩いたのだ。
「それにしても、艦娘の先生も居るんですね。てっきり基地や鎮守府勤めばかりかと思っていたんですが」
「艦娘の出生は様々だから、こうやって人の世界に馴染む人達も居るんだよ。君の奥さん、由佳理さんもそうじゃないかい」
「確かに…由佳理さんには苦労かけてばかりです。でも、僕は由佳理さんが鎮守府などに行くのは、考えたくないなぁ」
艦娘の顕現は妖精から、と言う説が当たり前だったが。最近の傾向から、海域や建造場に顕現であったり人の母体から産まれる事もある。時に艦娘の妊娠で同じ艦娘が産まれる事の例も挙げられる。
そのこともあり、艦娘が人の世に混じって生活することは今となっては珍しくはなかった。
「今の情勢、深海棲艦の脅威は完全にぬぐい切れていない。それどころか、停滞で進歩もない状態が続いているからねぇ」
「何か、大きなことが起きそうですね…」
「満月が近づいてくる…なあんて、今の子たちはあの夜を知らないでしょうな。それに記録も残っていないに等しい」
「思えば、加藤も中々すごいことを思い付きましたね。僕らはたまったもんじゃないですが」
「そうそう、そんな加藤だが幸田先生の話では艦娘だそうだよ。一度会ってみたいとは思わないかい」
「寺田先生の中では加藤はもう珍獣扱いですか。僕は…遠慮しておきますよ、いろいろとありましたし」
残念だなぁ、と寺田はぼやく。
鳴滝はと言えば、窓を見つめ異質の昭和の思い出を掘り返していた。由佳理の死を認められず、彼女をこの世に呼び戻そうと地下でかつての明治の帝都を復元させ、呼び戻した記憶。結局は加藤に壊され加藤の凶剣で倒れたのだったが。
我ながら狂っている、と鳴滝は自傷するように笑みを浮かべた。
今でこそ由佳理は自身の妻で艦娘。それに彼女の娘と自身の養子であった娘に似た双子の娘たちを産んでくれた、良き母親でもある。
彼女の親類に、親友である辰宮洋一郎の名はない。今世では兄妹ですらなかった。いずれ兄を求め、捨てられる恐怖も抱いている。
不意に、由佳理と娘たちが笑っている様子が思い浮かんだ。鳴滝は喪失の恐怖心が残っているものの、この思い出を絶やさぬ様、一層彼女たちを愛すると深く誓った。
寺田は鳴滝の様子を見つつ、手にしていたペットボトルを開け喉を潤す。
そうして、口を開き言葉を紡いだ。二人の話題は彼、鳴滝の親友である政界職員の男へと移る。
「辰宮くんは今どうしているかね」
「ようやく嫁さんを娶って家に帰る頻度を増やしましたよ。恵子さんとはまた違った姉さん女房、加えて元同僚らしいです」
辰宮洋一郎とは、鳴滝に親友であり名家辰宮の子息。かの平将門公を始祖とする末裔だが、その事実を知るのはほんの一握り程度とされる。
今世でも辰宮は政界へ勤め、仕事人間と化し家庭を顧みないが…ここ最近、鳴滝が話した通り妻によってその姿勢が矯正されつつある。辰宮はいい顔はしていないが、辰宮自身無意識のうちに恵子とは違い今まで見たことのないタイプに驚かされてばかりだとか。それに、まんざらでもないと…鳴滝は辰宮の心情を察していた。
「あの人はどちらかと言うと女房よりか、母親だったからね」
「恵子さんには頭が上がりませんよ。幸田先生はなんでも彼女のいる鎮守府に行ったそうですね」
「そこで加藤と会った、と言うわけさ。黒田さんも居るようだ」
「今の世は黒田さんにとっても、恵子さんにとっても辛いでしょうね。オカルト、呪術が退廃的ですから」
「龍脈の件も黒田さんはじめ、いろんな人の話を聞く。…帝都も、終わりがあっけないと言うわけさ」
寺田の言葉を皮切りに、二人は口を閉ざす。
二人はかつての帝都こと東京、それにあの満月に夜を再び思い出していた。それとともに、今回は加藤が要因ではない、我々自身という明確な違いを突きつけられる。神格を敬わず、自然を軽視しさらには行き過ぎた開発、人間の退化が積み重なって龍脈を傷つけていった。もう、残された時間は残りわずか…明日にでも、いや今日にでも滅んでもおかしくはない。
そんな状態であった。
「僕らに出来ることは、なんでしょうか」
「そうだねぇ、可能な限り神社や仏閣の再建に修繕、さらには悪い気の淀みを落とすための要石の設置。これ以上龍脈を傷つけないよう開発の頻度を減らすなど、だろう…。
焼け石に水だが、それでも足掻くことは間違いじゃあない」
「間違っては、いないんですね。結果はどうあれど」
「ああ、そうとも。終わりまでは足掻こうじゃないか」
終わりも考えないかんとです
アズレンで完全ギャグもやってみたいんよ
そもそも帝都物語がシリアスオブシリアスだし、みんな本編よりかはっちゃけてほしい感はある。それじゃあキャラ違くない、ってなるが