戦えるは地相見れるわ、地図描けるわ万能すぎやで黒田さん。でも一番のチート言うかヤベェのは渋沢さんなんだがね
「青古、か…懐かしい名前を聞いたわい」
「どうしましたかな、黒田さん」
「いいえ、何も…なにも、ありませんよ。渋沢殿」
黒田はそっと、開いていた新聞を綴じ机の上に静かに置いた。
そうして、目の前の青年に視線を向ける。青年、渋沢栄一…どこにでもあるような平凡な家系、たまたま同じ名字で名前、そして同性。あの時の渋沢を若くしたら、と黒田は想像し納得するほどの容姿であった。
二人、いや傍には辰宮が立っている。三人が顔を合わせる場所は静かな一室、無機質で変化のない会議室であった。
どうしてここに呼ばれたか、黒田は十分には理解できていない。
じっと見つめる渋沢に対し、黒田は対象の時、初めて会った時のことを少し、思い出す。
食えぬ翁だ、という感想が第一にあった。
目の前の初老の男は自身が渡した地図を見て、感嘆と見定めるような目でジトリ、と一度目の前の男を見る。東京の生みの親にして数々の功績を持ち、老いてもなお一線級に近い男、渋沢栄一。男、黒田茂丸は報徳社に籍を置き、その二宮が伝えた信仰と技術を学びそして、地相、風水を学んだ。
この頃、帝都こと東京はよくない気で充満し、悪い循環を生み出していた。黒田をはじめ報徳社の多くはその帝都の地相を良くしようと、籍を置く報徳社のトップたちを説得、さらにはこの渋沢栄一に身売りしたのである。翁と報徳社には少なからず因縁の間柄があった、だがこれも運命、と翁、渋沢栄一は黒田が手掛けた精巧な地図を受け取ったのである。
少しばかりの会話をして、黒田は翁の元を後にする。それ以降、黒田は翁に会うことはなかったが、彼の下で親交があった物理学者寺田寅彦、地下鉄工事責任者早川徳次、学天則の生みの親である研究家西村真琴と縁を結ぶことになった。
渋沢栄一が計画したこの地下都市開発は長らく着手されずにいた。
時は戦前、第一次世界大戦下の中であり、さらには関東大震災の影響でこの計画は白紙に近い状態となった。
だが、長い年月を経て彼の計画を模した計画の一部は東京メトロが偶然にも、彼の思い描いた地下都市に似せられ。それから長きにわたる昭和を終え、平成、そして…渋沢栄一の計画した、東京地下都市計画が始動、そうして完成へと至った。
「貴方にお越しいただいた理由を申しますと、帝都の地相を見てほしいのです」
渋沢は真剣な顔で、黒田に頼み込んだ。内容としては規模が大きいながらも風水師としてなら、変わり映えのない依頼内容だった。
だが、黒田はこれを断る。
現状の東京こと帝都の様は渋沢も十分理解している、と踏んだからだ。
「…、それは手前から答えなくとも理解出来ておいででしょう?」
「先日、横浜で青古、と呼ばれる化け物が出現しました。民間人を含めて、多大な被害を生み出し、逃亡したという速報と報告が上がったばかり。目撃情報がない中、少し不可解なことが帝都で起きているのです…」
黒田は何も言わない。
「不審死がここ最近になって多くなってきている。
原因が不明で、共通点としてすべて毛と歯が抜け、脳も含めたすべての臓器も腐り、肌もシワまみれで枯れた木々のように細いというのだよ。
黒田君、さっき言っていた青古、の仕業だろう?どうして東京が狙われたのか、横浜を根城にすればいいというのに、だ」
「…」
「私はこう思うんだよ。帝都が厄を呼んでいるのだ、と…どうしてなのか、それは人ではなく、大地に原因がある、と思っている。龍脈が異常なのは理解している、だが…どのように異常きたしているのか、もう一度調べてほしい」
渋沢の言葉に、黒田は口を閉じたまま。
黒田自身も、先ほどの青古の報道や速報については知っている。人通りの繁華街、いつでも動画が取れる機械、スマートフォンが普及した世の中。報道規制も間に合わないと言った世情だ。たとえ動画削除し、情報を規制しようにもネットに広がった動画は全て消し去ることは出来ない。
肥大化した人類の数、途方もない行為となろう。政府が出来ることとすれば、国民の命を守る行動、政策を出さねばならない。
総理の鶴の一声が流れたばかりであった。
黒田は渋沢の言い分は理解できた、だが…黒田は少し迷いを抱いている。自分が地相を診て、対策しても…未来は変わらない、ということだ。元々復活して間もない中、東京は龍脈を傷つけてきた。一度破壊され、再生をしてきたというのに…人の手で、自らの命を絶とうと自殺に追い込んでいる。
しかし、渋沢の目はまっすぐこちらを見ている。
東京を知りたい、という熱意とどうにかしたい、という確固たる信念。黒田はその気持ちに後押しを受け、ひとつ答えを出した。
「…解りました。条件を付けてですがご依頼、検討しましょう」
「貴方なら、そう答えてくれると信じていましたよ。それで、その条件とは」
「手前は東北担当の鎮守府に勤めており、そこで仕事も振られています。これにかかりっきりには出来ないのです、上司と相談したうえで取り掛からせてもらいます」
「そうでしたか、忙しい中…申し訳ありません。ですが、我々も時間が残されていないのです…どうにか、引き受けていただきたい」
「…渋沢殿、貴方は何をしようというのです?」
黒田は恐る恐る、消えそうな声で言葉を紡ぐ。
渋沢に会ってからというもの、たびたび来る凍るような冷たい気配に不信を覚えた。心臓が高鳴り、うるさいと言えるほどの緊迫感。渋沢の微笑み、声、その言葉すら…暗い影の中に、ナニカが居るような気配を感じ取っていたのだ。
「渋沢、どの」
「私は、東京を生みなおしたいのです。滅びゆく東京…帝都を見ていられないのですよ」
ゾワリ、と背中が冷え恐ろしいナニカが見えた。
渋沢は今、青年の愛くるしさのある微笑みを向けている。以前出会った蠱惑的な美貌の土師金鳳という青年とは違い、人並みの整った美貌。さぞや人当たりが良く女受けのしやすそうな爽やかな顔立ちだ。
だが、目の前の渋沢の微笑みは…ナニカが違っていた。
渋沢と別れ、黒田は帰路に就こうとしていた。
すると、背後から呼び止める声が聞こえ…振り返ると、辰宮洋一郎の姿があった。
「……お久しぶりですね」
「辰宮殿、えぇ…お久しぶりですね。少しは、落ち着かれましたかな?」
黒田の言葉に少し眉を動かした。
その言葉の意味を、理解できていた。あの時の失言、それを含めて自分の過ちを知っている、と暗喩に伝えてきたのだ、と。
「…黒田さん、貴方が所属している鎮守府に目方恵子、という女性は居ますでしょうか」
「…」
「居るのですね」
「だとしたら、貴方はお恵さんに会ってどうしたいのです」
「……私は、恵子に夫らしいことをしてきていない。それを謝りたいと」
「…そうですか。ならば、手前は何も言いません…ですが、お恵さんから伝言を預かっております。そちらも多忙なうえに、こちらも遠方…お互いにすれ違いが発生すると思いでの決断です」
最後の言葉に、辰宮は心臓が高鳴りを覚える。短いながら恵子との夫婦としての時間は辰宮にとって、心の支えであったのだ。由佳理に対する歪んだ情愛を抱きながらも、心の内では正常、平静を欲したからこそ。
恵子の菩薩のような優しさが、辰宮にとって安らぎとなていた。
「短いながらも辰宮殿と夫婦となり、ささやかながら女としての幸せを見させていただきました。お礼の言葉を述べるとともに…最後に、不出来でふしだらな妻を持たせてしまい申し訳ありません。
それと、遅ればせながらご結婚おめでとうございます、と」
黒田は淡々と内容を言い切り、口を閉じる。しばらく沈黙が続いた、辰宮は茫然とした顔を浮かべ、黒田の言葉に耳を傾けたが。
「……まて、それだけか?」
「えぇ。伝言、確かに伝えました…それでは」
辰宮は何かを言う前に、黒田はギターケースを背負いなおしその場を後にしていく。どうにか黒田を立ち止まらせようと呼び止めるが、途中辰宮の部下が報告しに来てしまう。部下を押しのけ、黒田を追うも…すでに、黒田の姿はなかった。
もう、ヤケクソ感がある流れですまんせん
辰宮は多分恵子さんにも恋していた気がする、純粋な方で。由佳理さんに対してはもう、狂うくらいの恋で情愛
辰宮は加藤に振り回されているというより、自分が制御できなくなったんだと思う
それはそうとさくらの雲という成人向けゲーム、加藤居るし一応エロシーンあるんだね
加藤のエロシーンはないけどな、残念だ