魔人…が着任しました   作:イシグロ

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加藤が下僕と共に大暴れ、な話


神を、自然を恐れないし、敬わずにいれば起こり得るかもしれない未来について。式もそうだけど、水虎もなかなか怖いキャラでしたね…


水平線に黒を染めて

 

世界は、大きく文明を進ませていた。

技術の進歩により、あらゆる産業に革命が起きもう、これ以上進むことは無いだろうという説を否定。後継者難で人手不足が大きな課題となった農業を始め、畜産業、漁業などに救いの手とみられる完全機械化。種まきから収穫までを機械に任せ、選別や包装もほぼすべての工程を機械任せにすると言う博打に、人の選択が勝った。

そんな人の仕事と言えば、もっぱら機械の整備くらいだろう。

 

また、学力低下が深刻化の問題も、AI個別指導の導入が本格化し個々の学力が向上が結果として出ている。

あらゆる分野に興味を持たせるため、AIは独自の情報収集能力を使い、その分野ごとに面白味と世知辛さ、さらには金銭面などを公開。そうして、人はAIなしでは未来を描けないほどに、退化をすることが確定した。

 

交通網の利便性も以前よりか、改善しつつある。陸路、海路、空路以外の道は無いとみなされるも、新たにバーチャルと言う斜め上の路が開かれた。

電子上に国ひとつ分の膨大なデータを作り、リアルに近い形で再現、人の歩みを途切れさせなかった。

その延長戦ということで娯楽の方も、VRとAR技術の進歩によりいかなる環境でも対応できるほどにまで。そこはもう一つの現実、と錯覚してしまうほど…人が求めた理想郷となる。痛みや辛さ、後悔さえ忘れさせてくれると言う。

一方で人口増加が目立ち始め、人の手が届いていない場所が少なくなり…森林も、珍しい動物の個体数も減っている。さらには、人々が科学に信頼し尽くし、自然に敬意を表さなくなってきていた。

もう、神秘が大いに権威を振るった時代は死んでいった。そうして、神仏、宗教もまた貶められる。

無人と化し廃れた神社仏閣、教会などを取り壊し、そこに新たな施設や住宅、道路にするなどをしていき地脈が悲鳴を上げていった。中には、その土地の要であり祟られた御霊を封印場所にまで、開拓が行われた。

 

地脈が乱れ、破壊を進めていけば…もはや人の住まう地には戻れない。やがて崩壊の道をたどるだろう…そうして、その日がやって来た。

 

地脈、またの名を龍脈は魂を鎮める力を持っている。鎮魂、不当なる扱いや非業の死、憎悪を滾らせた魂を、深い眠りに落とさせ長きにわたり封印させる。その力を失えば、怨念と化した魂であふれかえってしまうのだ…だからこそ、龍脈が傷つかないよう気を使ってきた。

人はあらゆることに効率を求めすぎ、触れてはいけないものまで手に触れるほど…落ちぶれた。

深海棲艦は愚かな人類を絶やすため、現れた怨念なのである。

 

 

「ちたたぷ」

「ちたたぷ」

 

あきつ丸こと加藤は鼻歌のように繰り返し、深海棲艦の頭蓋を砕き、潰していく。なにかと上機嫌ともなれば、加藤は鼻歌などを口ずさむ癖があった。

このちたたぷ。元は北海道アイヌの料理方法の一つとされ、包丁などの刃物で肉や魚を細かく刻む料理である。近い料理とされるのは、なめろうやタルタルステーキだろう。

北海道に住む黒田が雑談で話したことがきっかけとなり、加藤が口ずさむ要因となった。

そのためか、加藤の周囲には頭部が無残にも砕かれ脳髄が垂れ流し、肉片や脳髄、さらに目玉などが海面にぷかぷかと浮いている。また、頭部だけが無い身体だけの死体もあり…海面は太陽の光さえ飲み込んでしまうほどの黒い液体で染まっていた。加藤と対峙し大軍を率いていたはずの深海棲艦は指で事足りるほどの数となってしまった。

深海棲艦たちは目の前の加藤に憎悪を向け、今にでも襲い掛からんばかりに砲の照準を合わせる。

 

すると…パシャン、と水の跳ねる音が聞こえた。

深海棲艦はその音を聞くも、気にしない様子でいた。ここは海上、そう言った音はいくらでも聞こえる…固定概念を固着していた。また、パシャンと言う音が聞こえる…パシャン、パシャン、…と一定に聞こえ始め、次に来たのは。

 

ザバン、と言う重い水音。

 

深海棲艦はその重い音でようやっと、自分たちが置かれた状況に気付いた。先ほどまで残っていたはずの仲間が、一体、また一体と消失していた。そして、そこに居たはずの仲間の場所には、黒い液体がじんわりと広がっているのだ。

リーダー格の深海棲艦は、退却命令を出すも…すでに遅く。海中へと一気に引き摺られるや否や、魚が餌に群がるように海面が連続的に、水しぶきを上げはねている。わずかに見えるそれは、ヒトではない…深海棲艦でもない。ギョロリ、とでっぷりとした目に鋭いくちばし、水かきの付いた両手、背には魚のようなヒレがついていた。

水虎、と呼ばれる妖怪であり餓鬼。人の肉を好むが、空腹を満たすためなら同族すらその腹に収めると言そうほどの暴食。そもそも餓鬼とは、地獄の餓鬼道に住まう邪鬼であり、罪人…その尽きぬ欲求で苦しんでいる存在だ。水虎たちは癒えぬ空腹を満たすため、人を食らい、同族更には深海棲艦まで、食らう…。

リーダー格の深海棲艦が沈み、生き残りは恐怖に沈む。

蜘蛛の子を散らすように深海棲艦たちは逃げ惑うも、水が跳ねる。また一体、もう一体…と最後の一体は、敵であった加藤にすがろうと手を伸ばす…。

無情、加藤は鼻歌を歌いながら伸ばされた腕を払い、切り捨てる。

 

ザパン。

 

その水音が最後となり、あたりは静まり返った。もう、この海面に立っているのは加藤、ただ一人だった。

 

 




加藤って仕事はやるよね、それになにかと中間管理職とか国を守る軍人さんやってる。

苦労人にも見えるし、何というかやっぱり大元の側面にも影響されてるなぁ、と。
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