若いっていいね、な話。エンジョイ勢だから提督とも仲いいよ、ホントホント
「…キサマ、甘粕、カ?」
「はぁ?……あ、あなたは…まさか」
不意に、そう声を掛けられ、甘粕は後ろを振り向く。自分を知っているのは、そう相違ないと思っていた…が、該当する人物が甘粕の頭に思い浮かぶ。かつて、己の願望のために、忠誠心を抱かなかった、ある老人の存在。
目の前には少女が立っている。胸もとが空いたブラウスが付いたデザインのドレスに、背中まで伸びた銀髪。小柄なのも相まって力を一つ入れれば、ひしゃげ醜くなりかねないほどの細さがあった。
気品を漂わせるが、…何処か背中がゾワゾワと寒気を覚えるほどの冷たさがある。
艦娘と言うのは、どうも人ならざる美貌を備えているようで、甘粕は加藤とは別の違和感と不快感を覚えた。
なにより、目の前には一時期、願望であった自らと満州の破滅へ導くとふみ、仕えていた因縁深い人物。あの時は、相当な高齢で120歳と言う老人であったと記憶していた。
魔術師トマーゾ。
この老人も、加藤と同じく艦娘となって世に出てきたか…と甘粕は心の内で毒づいた。それも、男ではなく、女として自分の前に、現れているのだ。
「加藤モ、居ルノダロウ。…何、別ニナニモセン。モハヤ、ツマラン世ニナッタ、ソレダケダ」
加藤の存在をとうに知っていたようだ。同様に、トマーゾの価値観とは合わず、つまらない世界になったと実感していたらしい。
「貴方も、そのようなことを思っているのですね」
そう、かつてのように愛想の良い笑みを浮かべ口調を合わせた。
「…本性、デハナイナ。止メヨ」
わずかに、身体がぶるり、と震えるほどの殺気。どうやら、お気に召さないと見た。
「そいつは、失礼した。…しかし、あんたの上司で提督は随分と楽しそうだ」
甘粕はちらり、とトマーゾの隣に陣取る提督、という海軍の軍人に目をやった。提督はなんとも、無機質な人間で正規の感じられない、人形に見える。目も虚ろながらも、甘粕をじっと見つめている。
「良キ、人形、ダ」
ニタリ、と笑みを浮かべる。麗しい少女がしてはならないほど、恐ろしげで闇を覗かせる笑みであった。見た目こそ、イタリア艦の艦娘コンテ・ディ・カブールだが…かつてイタリアメソニック協会の魔術師、トマーゾ。特殊な宝石、世界の目の力で増幅された魔術を使い加藤を苦しめるも、最期は加藤に討ち取られた。
「モハヤ、会ウコトハナイ…」
「そうだな、あんたとはもう二度と会わねぇと思うね。会いたくないしな」
「クカカカ、冷タイ男ダ」
ちっとも悲しげな感情を出さないトマーゾ、甘粕はそれに少しばかり安心感があった。そういう人間、化け物、だと知っていたからである。
男は浮遊感の中に立たされていた。
痛みもない、苦しみも、つらさも、悲しみも…そして、楽しさも嬉しさも、ことごとく何もない。ただ、気持ちいい…それだけだった。
…ただ、ただ気持ちいい心地に包まれている。
男が目にした視界は、まるでテレビの映像を覗きこんでいるような感じだ。実感が無い、自分はただこの気持ちいい空間で、何もせずぼーっとできる、そう実感があった。
ふと、男は彼女と外に出ることになった。
暫く、歩き進めていれば、行き交った彼女の姿に驚く、陸の軍人が男の目をくぎ付けに。それは昼間から得体のしれないモノを見てしまったかのような、そんな様子を見せていた。表情も驚いている、変化は薄いが…良く凝らして見ると。
眉をわずかに上げ、悟られまいと苦虫を噛み潰したかのように渋い表情。
彼女は、珍しい相手を見つけたとばかりに好奇心をわかせ、小さな笑みを浮かべていた。
アァ、ウラヤマシイ。
男の中で、汚泥のように粘っこく、光を通さないくらいに漆黒の泥がボコ、ボコと湧き上がった。
止まることなく湧き上がる泥は、あと少しでこぼれ出てしまいそうになるも…陸の軍人は、早々何かを言い残し、去って行った。
「フフフ、提督、ドウシタカネ?」
あの心地いい声が、男の頭の中をじわり、じわりと染み込んでいく。馴染ませるように、ゆっくりと…男は、いつも通りに、ぼんやりとした気持ちよさに包まれた。
「アレハ、気ニスルナ。サァ、戻ロウ…提督」
彼女はくすり、と小さく笑いそうして、長い舌を出した。一瞬だけ、その舌の先には小さなビー玉のようなものが見える。
よく見ると、なんとそのビー玉は…人のパーツの一つである目玉。
なんとも、心地よい/嫌なものだった。
満州篇も良いが、不死鳥篇の後半のクリスマスパーティのダンスシーン、イイゾぉ
加藤と恵子さんのイチャイチャ、興味持ったら読んでほしいくらいには勧める
個人的には大東亜篇が好きなんだけどね、最後はまじで呆気ないけど一番好きなんだわ
とりあえずこのクロスオーバーは、まだまだつづくんじゃよ