紺碧の艦隊に出ないひとも出ます。
ご注意ください。
海軍省 高野総長執務室
「本当に鹿屋に行かせて宜しかったのですか?」
高野総長が大高総理に訊ねた。
「…彼は神風特別攻撃隊の事を知っていました。」
大高総理が答える。
「私は彼の知る歴史、その悲惨な戦争の歴史の知識から来る一見すると甘過ぎるその行動に期待しているのです。」
「確かに…彼の今までの行動を見ていると、わかる気がします。」
高野総長の言葉に、わが意を得たりと大高総理は大きく頷いた。
「正規の軍人だと、どうしても戦果を上げることばかりに集中してしまう、彼らはそのように訓練されて来たのだからしかたないのですが、艦娘を使った戦いにおいては彼女たちの幼い心を守りながらの戦いになるでしょう、だから私は争いのない世界から来た彼にかけてみたいのです。」
大高はそういうと窓の外に広がっている青空をじっと眺めた。
高野も窓の外の青空を見上げながらぼそっと呟いた。
「Y君、よろしく頼む。」
「とうとう着きましたね、司令官。」
鹿屋基地のゲート前、ボンネットバスから降り立った吹雪は嬉しそうに隣に立つ俺を見た。
しかし、俺はじっと基地を睨んでいた。
「…司令官?」
怪訝な顔をした吹雪の声に、俺はボソボソと答える。
「…吹雪、この基地はね、俺が住んでいた世界では特攻隊の基地だったんだ。」
「特攻隊?」
首をかしげる吹雪に俺は説明していった。
「第二次世界大戦末期、日本軍が行った自爆攻撃の事だよ。」
息をのむ吹雪の気配を感じ名から俺は続ける。
「大戦末期の日本はすべての資源が尽きかけていたんだ、飛行機のパイロットも同じで空母に着艦するどころか満足に編隊を組むことさえできない未熟なパイロットしか残っていなかった、だから飛行機に爆弾を目いっぱい載せて、飛び立った後は敵の船に体当たりしろと命令していたんだ。」
俺はこぶしをぎゅっと握りしめながら言葉をつづけた。
「飛行兵になり、わずかな訓練時間しか与えられなかった彼らは、それでも、親兄弟のため、故郷のため飛び立っていったんだ。」
そこまで話して横を見ると、吹雪が静かに泣いていた。
「…かわいそうです…。」
おれはそっと吹雪を抱きしめて背中をさすってあげた。
「…ありがとう、吹雪。彼らのために泣いてくれて。」
ひとしきり泣いた後、吹雪はキッと顔をあげて強い瞳で俺を見つめた。
「司令官!私、頑張ります!二度と特攻隊なんて作っちゃだめです!」
吹雪の力強いまなざしうけ、俺の心の中で何かのスイッチが入ったような気がした。
「…ああ、一緒に頑張ろう。」
俺は気を付けの姿勢から上半身を15°傾け、室内礼の態勢で眼を閉じ黙祷を捧げた。
隣では、吹雪が同じように黙祷を捧げていた。
「…さあ、いこうか、吹雪。」
黙祷を解いた俺は、吹雪に向かって手をさしだす。
「はい!司令官。」
二人は手を繋いで鹿屋基地の門をくぐった。
鹿屋基地 基地司令執務室
「失礼します、この度鹿屋鎮守府に着任しましたYと申します。」
ノックの後 氏名を告げると、と「入れ。」とへんじがあった。
失礼しますと言って中に入った俺は、気を付けの姿勢から申告した。
「申告します、海軍少将Y、本日付で鹿屋鎮守府に着任、勤務開始します。」
敬礼と共に申告する俺に、執務席から立ち上がったこの基地の司令も、答礼を返す。
「ご苦労様です、Y少将。私はこの基地を預かります、第5航空艦隊司令官の宇垣です。」
壮年の司令官は、優しげな笑顔で俺達を迎えてくれた。
「…宇垣中将閣下!」
俺が緊張しているのを見て、宇垣中将はニヤリとして言った。
「君も紺碧会だったな、ならば私の前世を知っていても不思議ではないな。」
「閣下もですか?」
中将は頷いてから、窓の外だったに広がる青空を見上げて言った。
「かつて私はこの場所から、二度と戻らない空に向かって飛びたって行った多くの若者を見送った。」
中将はじっと空を見上げながら言葉を続けた。
「そして、後世においても、私はこの場所にいる…。」
そこまで言うと中将は振り向いて俺達を見た。
「もう二度とその様な経験はしたくないな。」
俺達を見据えながら、中将はそう言うと、自らを蔑むような哀しそうな微笑みをみせた。
すると、俺の横にいた吹雪がキッと顔を上げて中将に向かって言った。
「そんなことは、絶対させません!私が全部やっつけちゃうんだから!」
瞳に涙をいっぱい溜めて、じっと中将を見つめる吹雪を見て、驚いた顔をした中将だったが、やがて優しい笑みをうかべると、吹雪の前まで来て、そっと彼女の頭を撫でながら。
「有難う。」
と、言った。
もとの位置まで戻ってきた中将は、こちらを向くと厳しい顔をした。
「今の情勢は非常に厳しい、世界各地にて海に棲む化け物が暴れまわり、世界中で大混乱している。君達の活躍に大いに期待している。」
中将の言葉を聞き、俺は背筋をのばした。
「…微力をつくします。」
私は、宇垣中将の最後に、疑問を持っていました。
私的特攻と言われるのを承知で何故玉音放送のあとに特攻をかけたのでしょうか?
だから、この物語に参加してもらう事にしました。
天1号作戦のことも、今後書いていく予定ですが、それには彼女に出てもらわないと…。