異世界転生後輩   作:一之三頼

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障害か、同志か

ジョセフの舌鋒に怯む俺を気にせず、彼は瞳に炎を宿したまま演説を続ける。

ただでさえ武装の面で不利であるのに、精神的な面でも気圧されていた。

どこかで隙を突かなくては……。

このまま相手の言う事を肯定し、慢心させるか?

反論できる点を見つけて否定し、揺さぶるか?

そう考えを巡らせている間にもジョセフは身振り手振りを交えながら語り続ける。

 

「我々は どれほどの血が流れようとも革命によって未来を切り開かねばならないのだ!そして、その為には多くの知恵と協力者が必要だ。私の目的の為に協力する、知恵を持った転生者が。」

「だから、だったらなんで探し出した転生者を殺してるんだよ!協力者にするんじゃないのかよ!」

 

俺が選んだのは後者だった。

正確には『選んだ』と言うよりも、『選んでいた』だが。

連れ去られたタガミ先輩、彼の意見を認め難いと言う気持ち、それらが自然と否定の言葉を生み出したのだ。

 

「言っただろう、知恵を持った転生者が必要だ、と。無能は不要だ。むしろ障害にさえなり得る。それならば先んじて内患は排除しておいた方が効率的だ。そうしてこそ外憂に臨める。」

「なんだよ、それ……!そこまで酷い事をして、一体何をするつもりなんだよ!」

「酷い事、か。これは全ての転生者の為の行為だと言うのにな。」

「転生者の為!?」

 

何を言っているんだ、この男は?

転生者の為に転生者を殺す?

次は『死は救済』とでも言い出すのか?

尚の事、彼の意見には肯定できない。

本当に転生者の為に行動していると言うのなら、ジャックたち『差し伸べる手』のように転生者がこの世界で生きていけるように手助けするはずだ。

しかし俺の想像とは裏腹に、至ってまともな言葉が続いた。

 

「元居た世界に戻る。」

「は!?」

「その為には研究が、恐らくは大規模な設備が必要になるだろう。その為の障害排除だ。そしてそれまでの研究と、それに伴う発展はこの世界の為にもなるだろう。」

 

この世界は本来居た世界ではない。

俺も元の世界に戻れるのかと考えた事が無かった訳では無い。

もしも戻れるのなら戻る選択をするだろう。

しかしそれでも転生者を殺す必要はあるのだろうか。

障害になるにせよ、話し合いなりの他の手段を採るべきではないだろうか。

理解できるジョセフの目的と、許容できないジョセフの手段。

彼の在り方に複雑な感情を抱く。

 

「さて、少年。君は私の障害かね?それとも同志かね?」

 

言うべき事は言い終わったのだろうか、ジョセフは銃を机の上に置いてこちらに手を差し伸べた。

元の世界に戻りたくはあるが、ジョセフの手段に賛同はしたくない。

しかし、今がチャンスではないだろうか。

彼の手を取る振りをして、その隙に斬り付ける。

そうすれば銃を使わせる前に倒す事が出来るかも知れない……!

 

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