タガミ先輩を見つけるために王城の資料室で書類を漁ってから数日後。
鍛錬や書類仕事をしながら穏やかな日常を過ごしていると……
「やぁリョータ。旅行に行きたくはないかな?」
「唐突にどうした。」
フリードが訪れ、謎の提案をしてきた。
これまでも度々連れまわされたりはしていたが、旅行と言う名目で声を掛けられたのは初めてだ。
もっとも、また何らかの思惑があるのだろうが。
「実は君に頼みたい事があってね。ラディウム領に出向いてもらいたいんだ。」
「ラディウム領?聞き覚えはあるけど具体的な場所が分からないな。どこだ、そこ。」
「ここだね。」
予想はしていたが、やはり頼み事だったか。
しかし場所が分からなかったので尋ねてみると、彼は地図を開き、指を差す。
そこはウラッセア王国の北西にある島々だった。
現在地の王都マスカから見て西に位置し、ここから以前活動していたワシャールまでの二倍近い距離がある。
進軍時と違って身軽な個人での移動でも、十数日程度で到着出来そうだ。
「それなりに遠いな。まぁ『差し伸べる手』も落ち着いているし、俺としては大丈夫だが、一応レオノーラさんにも相談してみる。」
「それは何より。」
現状、レオノーラさんに仕事を任せても問題ない程度には落ち着いている。
遠いと言っても拒否するレベルでは無かった。
ならばタガミ先輩を探すと共に、この世界の見聞を広げるのも悪くは無いだろう。
ちょうどこの間、王都の資料室でも同じような事を考えていたし、渡りに船と言ったところだ。
「ところでどうしてラディウム領に行けだなんて言い出したんだ?」
「実は先日、王位をどうするかの会議があってね。レアン公とラディウム公が言い争っていたんだけど……」
「あぁ、『自分が王位を継ぐ』みたいな主張がぶつかり合ったのか。」
レアン公は以前、会議に連れて行かれた時に見かけた事がある。
確か白髪に白髭の初老の男性で好々爺と言う言葉が似合いそうな人物だった。
ラディウム公は会議では名代を派遣していてどんな人物か分からない。
ともあれ、その二人が王位を巡って対立した、と。
ついこの間戦争が終わったばかりだし、出来る事ならば話し合いで決着をつけてほしい。
また戦争が起きなければ良いんだが……。
「その逆なんだよね。」
「は?逆?」
俺の聞き間違えか?
王位の継承を求めて争うと言うのであれば、物語の題材にされる程度にはよくある話だが、逆ってどういう事だ。
譲りあっているのか?
それで揉めているのか?
確かにレアン公に関しては一領主としての立場に満足しているって話を聞いた事があるけれど、意味が分からないぞ……。