異世界転生後輩   作:一之三頼

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潜入自体は問題無いでしょう

「すまない、待たせたな!」

「あぁ、一体何だったんだ?」

「それは……。」

 

話が終わったようでアルステッドとベックが部屋の中へと戻ってくる。

アルステッドの驚嘆が耳に届いた俺は一体何事かと問いかけると、彼は言葉を濁して目線を外して自身の目付け役を一瞥した。

 

「判断はお任せします。公爵閣下からは指示はありませんでした。」

「そうか……。」

 

アルステッドのアイコンタクトを受けたベックは即座に頷き、ラディウム公の意向を伝える。

それを聞いた彼はしばらく顎に手をやって黙考した後、カッと目を見開いて口を開く。

 

「リョータ、今回の件はより一層、難しいものとなったと言える!詳しくは明かせないが、密偵が持ち帰った情報によると敵の数は想定以上に多いと言えるだろう!」

 

半ば勢いで押し切らんとしたアルステッドの口から出てきた情報は、敵は多いと言う事だけだった。

それは既に分かっている事だが、先程の彼の驚きぶりを鑑みるに真相はそれだけではないだろう。

しかし詳しくは明かせないと言われた以上、深掘りは出来ない。

後ろ髪を引かれる思いもあるが、ここは問い詰める事はしないでおこう。

 

「以前から分かってはいたが、改めて正面から戦うと言う選択肢は存在しない事を強調させてもらおう。」

「って事は潜入して首領を処理する方向で決定か?」

「それ以外にあるまい……。」

 

最終的に俺が出した首領を狙う作戦で詳細を詰めていく事が決定した。

もっとも、決定したと言うよりは他の選択肢が消えた事で妥協案が残ったと言うべきだが。

 

「幸いなことに密偵が持ち帰った情報から大まかな拠点内の地図の作成を進めています。優れた記憶力を持っている人間でも、全員を顔と名前を把握するのは難しいほどの人数がいるので潜入自体は問題無いでしょう。」

「潜入自体、か。」

 

ベックが良い知らせを並べて意味ありげに問題無いと語るが、その言葉の前には気になる一言が存在感を放っていた。

アルステッドもその点を復唱し、話の続きを促すようにベックを注視する。

視線の先の彼は頷き、更に情報を開示した。

 

「えぇ。しかし首領は特定の部屋で寝泊まりしません。また日中も拠点内で転々と移動しながら活動しており、食事の時間も日によって違いますので、補足するのはかなり難しいかと。」

「行動に規則性は無いのか?」

「ありませんね。組織のトップだと言うのに下働きがするような仕事までしていたそうなので、発見が困難だったと聞きました。」

 

彼のもたらした情報は首領を狙うにあたって都合の悪い物だった。

特定の地点で仕事をしているのであれば、その地点までの経路を策定する事で必要のない戦いを避ける事が出来るだろう。

しかし、それは適わない。

敵が数多ひしめく拠点の中で臨機応変に作戦を遂行しなくてはならないのだ。

以前ジョセフを捕縛した時とは、比べ物にもならない難易度である事が明らかとなった。

 

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