異世界転生後輩   作:一之三頼

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ラディウムが分からない

俺は挨拶をしてユーステッドの差し出した手を握る。

 

「俺はユーキ・リョータ。よろしく。早速だけど案内を頼むよ。」

「任された!オレに付いて来てくれ。」

 

簡単に自己紹介を済ませた後、俺たちは酒場を出る。

 

「そういえばさっき店主とラッセルの事を『釣りの人』扱いしてたけど、いつも釣りをしてるのか?」

「いや、いつもって訳じゃないんだが、大漁だった時はあの店に魚を持ってくるんだよ。だから釣りの奴って認識だ。」

「へぇ、良い奴なんだな。」

「あぁ、良い奴だ。オレも色々と教えてもらったからな。」

 

道中に無言と言うのも気まずいし、先程の店主とユーステッドの会話の中で気になった点を尋ねてみると、ラッセルの人となりの一端を窺い知れる話が聞けた。

 

「そういやリョータはラディウムから来たのか?」

「そうだな。ただラディウムにも用事があって王都から来たんだ。」

「王都から?そいつはまた遠路はるばる大変なこった。」

「と言ってもランドルフの一件以外は特にトラブルも無かったし、悪くない旅路だったけどな。」

 

その後も他愛もない話をしながら歩いていると、ユーステッドがある問いかけを投げかけてきた。

 

「なぁ、リョータ。王都から来たってんなら、このラディウムはどう映った?」

「どうって、来たばかりだし、いきなりそんな事を言われてもな……。」

「別に具体的にどうこう言えって訳じゃねぇさ。例えば『立派』とか『きれい』とか、そんな感じので良いんだ。」

「うーん、そうだな……。やっぱり『分からない』だな。」

「そうか、難しい事を聞いちまって悪かったな。」

「あぁ、いや、えっとそうじゃなくてな……こう、海賊に困ってる人がいるかと思えば、当の海賊はそこまで悪い人間じゃなさそうだし、ジュテームの方は凄い立派なんだけどディヴェラの方は貧しそうだし、いろいろとごちゃごちゃで『分からない』んだ。」

「そう、か……。」

 

後者に関しては都会と地方の格差と言えば説明は付くかも知れないが、それでもここまで如実に差が出るならばラディウム公の悪政を疑わざるを得ない。

加えて前者、海賊のリーダーであるランドルフの『望んで海賊になった訳では無い』との発言が悪政の説得力を高める。

しかし海賊被害にあった人々に助成金を配給する言った政策を施行し、海賊を討伐する事で積極的に問題を解決しようとしている点を鑑みるとただ悪政を行っている訳でもなさそうだ。

故に俺はこのラディウムが『分からない』。

転生者の優遇、海賊の問題、領都と地方の格差、いずれもどれほど思考を巡らせど、答えが出ないのだ。

そういった話をしている間にも俺たちは歩を進め、目的地へと辿り着いた。

 

「さて、到着だ。いつもならそこの家にいるか、近くの川で釣りをしてるか、大体その二通りだな。」

「ありがとう。助かったよ。」

「良いって事よ。おーい、ラッセルー。いるかー?」

「あ、オージ様ー!」

「リョータもだー。やっほー!」

「……え?」

 

ユーステッドが家の中へと呼びかけると、本来であればこの場にいるはずのない人物が登場した。

ポカンと口を開けて唖然とする俺を他所に、彼女たちは何ともないように手を振って挨拶して来たのだ。

 

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