異世界転生後輩   作:一之三頼

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考えをまとめよう

ユーステッドからの言葉を伝えたマークは牢獄を去り、俺は手持ち無沙汰になる。

何も出来ないし、脱獄をしようにも道具もない。

外の景色こそ見えないが、恐らくは夜の帳が下りている頃だろうか。

今は取り敢えず牢屋に備え付けられたベッドで寝る事にしよう。

 

 

 

そして何時間眠ったかは分からないが、目を覚ます。

外界から隔絶され、時間の感覚が損なわれるのは中々に堪える。

いや、へこんでいる場合ではないだろう。

まずは頭を動かして考えをまとめよう。

 

「ラディウム公は奥さんと何らかの確執があって、それで現地民を差別しているって可能性があるな。ただ確信は持てないし、現地民を差別する理由では無く、転生者を優遇する理由ないし、その補強になっている可能性もあるな……。」

 

アルステッドには伝統と聞き、ラディウム公からは効率と聞いた。

しかしユーステッドが母親の話題を挙げた事で、ラディウム公は有無を言わせずに話を切り上げた。

それならばジェーン婦人が関わっていると考えて然るべきだろう。

 

「それと、ユーステッドの『覚悟を決めた』って言葉は何を意味しているんだ?まさか内戦の発生を防ぐ事を諦めて、現地民と共に戦う覚悟を決めたって事か?でもあいつはラディウム公に謹慎を命じられて城から出られないはず……。」

 

彼の語った『覚悟』が何を意味しているかは分からないが、わざわざマークに伝言を頼むほどの事だ。

決して些細な事ではないだろう。

もしかすると何らかの手段を用いて城から出て、ラディウム公と袂を分かって現地民側に立つつもりだろうか。

 

「まさか本当にここにいたとは……」

「アルステッド!」

「父上からは頭を冷やさせていると聞いたが、一体何をしでかしたんだ?」

「あぁ、実は……」

 

思考を巡らせていると牢獄にアルステッドが現れた。

彼は僅かに驚きを含めながら声を掛けて、何があったのかを問う。

俺は彼にジュテームを出てから今までにあった出来事を説明した。

 

「なるほど、弟が迷惑をかけたようだな。だが、無事に五体満足で帰ってきたとあれば安心だ!」

「なぁ、アルステッド。」

「おっと、ここから出してほしいと言う事だな?安心しろ、父上から話を聞いた時に許可は取っている!」

 

どうやら牢屋から出る事が出来そうだ。

それはとても喜ばしい事だが……

 

「いや、出してほしいってのもあるんだけど、聞きたい事があって……」

「聞きたい事?」

「お前らの母親、ラディウム公の奥さんに関してなんだが。」

「……!そうか、弟はあの時、まだ幼く詳しくは覚えていないのだな……。」

 

アルステッドたちの母親、ラディウム公の妻、ジェーン婦人。

彼女について知っておきたかったのだ。

俺の質問を聞いたアルステッドは僅かに目を見開き、次いで沈痛そうな表情を浮かべて話を始める。

 

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