ディーゴに招かれた部屋でソファーに腰かけ俺たちは話を再開する。
「さて、本題とは何でしょうか?」
「実はレオノーラ誰にも何も言わずに出て行って……」
「レオノーラ……あぁ、ジャックと一緒にこちらに来たことがありましたね。」
「それでこっちに来ているかも知れないんだ。」
「うーん、彼女がこちらに訪れたという話は耳にしていませんね。知人の来客であればボクに知らされるはずなので。」
レオノーラの名前を出すとディーゴは一瞬の逡巡の後、彼女を思い出す。
しかしどうやらレオノーラはこちらには来ていないようでディーゴも彼女がどこにいるかは知らない様だ。
「そうなるとあいつ馬車を拾わずに徒歩で向かってきてるのか?」
「いや、流石にそれは……」
「でも人間って焦ってる時ほど突拍子もない行動をとったりするし……」
「そもそも何故彼女は出奔したのでしょうか?その焦りとは何でしょうか?」
「あぁ、実は共和国騒動の時にアニエスって教会の子をうちで保護してたんだけど、事態が収束してしばらく経ってからルーメンの教会に戻る事になったんだ。」
冷静さを欠いているとはいえ、いくら何でも王都からここまでを徒歩で来るとは考え難い。
確かに拠点の馬車は使われていなかったが、だからと言って馬車に乗ってこないとも限らない。
伝手のある商人を頼って馬車に乗って来た可能性や、そうでなくとも駅馬車に乗ってこちらに来ている可能性もあるのだ。
一方のディーゴは何があったのか知らないので首を傾げて問い掛けてくる。
「だけど偶然、王城で会う機会があってさ。その時にアニエスの様子がおかしくて色々と調べて、それでモルダにも相談してたんだけど……」
「恐らくそれを聞かれてた。あいつアニーと仲が良かったから、気が気じゃなかったんだろうぜ。そんで次の日には姿が見えなくなってたんだ。」
「なるほど、そのような事があったのですね……。」
俺とモルダは事の顛末を簡単にディーゴに説明した。
それを聞いたディーゴには頷いてある提案をする。
「それならば大聖堂に行ってみませんか?」
「大聖堂に?」
「えぇ、そのアニエスと言う方の状況を知る事も大事ですし、もしかしたらレオノーラも商会には顔を出さずに直接大聖堂へ向かった可能性もありますから。」
「確かに、そう考えると足を延ばしてみるのも有りだな。」
「大聖堂か、どんなところなんだろうな?楽しみだぜ!」
「一応言っておくけど、観光に行く訳じゃないからな?」
「ははは、でもルーメンの大聖堂は一度は見ておいて損は無いと思いますよ。」
それは大聖堂に行ってみないか、というものだった。
その案は確かに良い考えだと思い、俺はそれに同意する。
しかしモルダは別の意味で乗り気の様で改めて釘を刺しておいた。
まぁ正直な所、ディーゴも一度は見ておいて損はないと言っているので若干ワクワクしている自分がいる点も否めなくは無いが、それでも気を引き締めて行かなくてはならない。