アニエスとレオノーラ以外の人についても祈りを捧げ終わり、他の面々の様子を再び横目で見てるが……
「zzz……」
寝ていた。
「おい、モルダ。」
「zzz……」
「起きろ。」
「……んぁ?」
小声で呼びかけるも起きないので、仕方なく肩を揺する。
するとようやく目を醒ましたようで、寝ぼけまなこを擦って顔を上げた。
思わず一発くらい頭を引っ叩いてやりたくなる。
こんな場所で眠りこけるとは、胆力があるのか馬鹿なのか……
ともあれ周囲から目をつけられたりはしていないので害は無いと言えば無いが、教会関係者であるアンジェロの前でそのような行為は慎んでもらいたいものだ。
「いやぁ悪ぃ悪ぃ。色々考えてたら眠くなっちまってよ。」
「色々って何を考えてたんだ?」
「そりゃ……忘れちまったぜ。」
「…………」
「おいおい、そんな目で見ないでくれよ。」
「あまりよろしい行為とは言えませんよね……」
眠っていたことを悪びれずに、何を祈っていたのかさえ忘れるモルダに冷たい視線を向ける。
流石に呆れかえって言葉も出ない。
この男をここに連れてきたのは間違いだっただろうか。
自分の判断と彼の存在への疑念を抱かざるを得ない。
穏やかなディーゴでさえもモルダを嗜めるのだから、アンジェロも何か言うだろうと思って視線をチラリと彼の方へ向けるが……
「心に余裕があると言う事でしょう。主は人々の穏やかなる営みを拒絶致しません。教会は旅の者を受け入れ、寝床を貸し出す事もあります。であれば彼の事もまた、否定はしないのです。」
「アンジェロさん……」
その声は想像していたものとは随分と違うものだった。
慈悲に溢れ、まさに聖職者と感じさせられる物言いでモルダの態度も許容する。
起こるべき事だと思っていたが、彼の誠実で真摯な説法に、俺は思わず感嘆の声を溢す。
「な?オレの地元の教会でもこんな感じだったし、問題無かったろ?」
「お前は少しは反省しろ。」
一方のモルダはやはり反省していなかったので一発引っ叩いた。
と言うか、お前の地元とこっちの世界とじゃ、そもそも宗教が違うだろうし、当然教会だってスタンスは違うかもしれないのに、そんなリスキーな賭けをするな。
「そう言えばモルダの地元ってどんな所だったんだ?」
「オレの地元?つっても普通の村って感じだったけどな。ツェルノーブリって所でさ、まぁ何もない村だったよ。たまに来る旅人とか商人から話を聞くのが楽しみ程度の、平凡な村だったんだ。」
「ツェルノーブリ……」
モルダのいた村の名前、なんだかどこかで聞き覚えがあるような……
でもそんなたまにしか外部から人が来ないような田舎に覚えなんてあるはずがないんだし、気のせいだろう。
しかし外部から来た人の話が楽しみになるレベルの田舎なんて、そうあるのだろうか?
テレビもないような田舎なんてあるのだろうか、とすら思ってしまうが、流石に外国について詳しい訳でもなければ、ましてや行った事がある訳でもない。
そこについて突っ込むのも失礼な話だと思うし、突き詰めるのは止めておこう。