「さて、それでは当教会の案内を続けさせて頂きましょう。」
「お願いします。」
大広間を後に、俺たちはアンジェロに連れられて教会内部を進んで行く。
そこには様々な建物や部屋、物があった。
大半の建物は入る事は出来なかったが、それでも特に目を引いたのは多くの蔵書を集めた図書館。巡礼者が多く来ることを想定された大食堂と寄宿舎。何らかの理由で親がおらず保護された子供たちの声が賑やかな孤児院区画。聖遺物と呼ばれる宗教的な宝物が多数展示された博物室。
右を見ても左を見ても感動するような、この世界に来た後でも見た事がない新鮮さに溢れる景色が広がっていた。
これではモルダの観光気分を嗜められないな、と思いながら俺もこの総本山を楽しんでいるのであった。
そして様々な宗教画が飾られた廊下を歩いていると……
「これは……」
「主の活動の一部を描いた宗教画です。よろしければ主の軌跡についてご説明を致しましょうか?」
「はい、お願いします。」
どこかで見た事があるような構図、アンジェロ曰く宗教画の中央に描かれているのが主らしい。
その主を取り囲むように、長テーブルで複数の信徒と思しき人たちと共に食事を摂っている姿が描かれている。
これは、確か…………
「っ!」
「おや、どうかなさいましたか?」
「あぁ、いえ、何でもありません。それで、何でしたっけ……続きをお願いします。」
「はい、そして主は遥か彼方へ教えを広めに旅に出たのです。その後はどこで没されたかは分かりませんが、このウラッセア王国で広く主の教えが根付いている事から東の果てを超えたとも言われています。」
何かを思い出しそうになったが、唐突に頭痛がして何を考えていたのかが頭から抜け落ちてしまった。
しかしアンジェロから声を掛けられ、説明してくれている彼に失礼だと思って話の続きを促す。
一瞬考え事をしていたはずだったが、気が付けばアンジェロの説明は終わる少し前だったようで、すぐに主の軌跡の解説は終わりを迎えた。
違和感を覚え、抜け落ちていた間の解説をもう一度聞きたいとも思ったが、流石に考え事をしていて聞いていなかったとは失礼が過ぎるので言い出せない。
まぁモルダも「へぇ~」って言い出しそうな、そんな興味がある訳では無いけどそれなりに感心はしていそうな表情をしているので……いや、失礼なのは変わりないし、それを盾に自己弁護をするのも憚られる。
いっその事ディーゴ商会の会館に戻ったらディーゴから聞いてみるか。