「これで私の解説はお終いになります。ご満足頂けたのであれば嬉しいのですが。」
「ありがとうございました。」
「いろいろすげぇって事はよく分かったぜ。」
「このお礼は後日お届けさせて頂きます。」
「構いませんよ。あぁ、それともしもまた大聖堂を見て回りたい際には誰でもいいので私の名前を出して下さい。方々には私の方から一声かけておきますので。」
「本当に何から何までお世話になってしまって、なんだか申し訳ないですね。」
「ははは、老人のささやかな楽しみと受け取って頂ければ。」
アンジェロの案内で大聖堂を回り終え、ディーゴ商会の商館に戻る事になる。
一部記憶があやふやな所があるが、ためになる時間だった。
しかもこの後も大聖堂を見に来ても問題無いように根回しまでしてくれるとの事だ。
まぁ一介の老神父では限度があるだろうが、それでも感謝の念は強く抱く。
今はその恩に報いる事は出来そうにないが、いずれ機会があれば、もしもアンジェロが困るようなことがあれば力になりたいものだ。
「あの、最後に聞きたい事があるんですが……」
「なんでしょうか?」
「レオノーラって言う名前の女性を見ていませんか?短めの金髪に眼鏡をかけていて、身長は、これくらいで……」
「ふむふむ……いいえ、記憶にありませんな……お力に成れず申し訳ない。」
「そうですか……ありがとうございます。」
そして踵を返す前に、念のためレオノーラの事を聞いてみるが、やはり覚えはないようだ。
これだけ人が往来する大聖堂で特定の個人を見つけ、しかも覚えているのは難しいだろうが、それでも聞かずにはいられない。
たとえ芳しい答えが返って来なくとも。
「で、帰って来た訳だけど……」
「これと言った収穫は無かったな。」
「まぁアンジェロさんと渡りを付けられただけでも成果と言えば成果だろう。」
「それでは、ボクも仕事に戻らせてもらいますね。」
「あぁ、助かったよ。ありがとう。」
「み、皆さん、お、お帰りなさい……」
「ナーヤ、ただ、い……ま……」
「?」
ディーゴは仕事に戻るようで、時間を作ってくれたことに礼を言って商館の入口の前で別れる。
そしてナーヤの出迎えの声が聞こえて振り向き、返事をしようとするが言葉に詰まる。
その様に彼女は小首を傾げて不思議そうな表情をしていた。
「なぁ、ナーヤ……」
「は、はい、な、何で、しょうか?」
「増えてないか?馬車。」
「す、素晴らしい品が、た、沢山あって、その中から、え、選りすぐりました。」
「選りすぐってこれかぁ……」
ナーヤの傍には大量の荷を積んだ馬車が四台並んでいた。
戻ってきた時は無関係の馬車の一団かと思ったが、彼女の手元にある分厚いリストから鑑みるに間違いなく俺たちに関わりのある馬車。
しかし、それでも、もしかしたら思い違いかも知れないと一縷の望みを抱き、確認を取るが答えは肯定。
俺たちの中で馬車の運転が出来るのはモルダだけなのに対して、御者不在の馬車が三台あるのだ。
しかも彼女曰く、これで選りすぐりというのだからどうしようもない。
ディーゴに頼めば御者を斡旋してくれるだろうか……。