「こ、このメイスは、昔、お、お母さんがくれたんです……。こ、これで、商品を、う、奪おうとする、不逞な奴らの、あ、頭を、かち割ってやりなって……」
「ネーシアらしいぜ。」
「らしい、で済ませて良いのか……?」
メイスだった。
それも結構なサイズの。
少なく見積もっても1mはあるであろうそれは、いったい何kgあるのか想像もつかない。
正直な所、彼女がそれを扱おうにも、振り回されるのが、そもそも持ち上げられないのでは、とさえ思ってしまう。
俺でも多分、いや間違いなく扱えない。
「と言うか、ちょっと失礼な質問かも知れないけど、ナーヤはその武器を扱えるのか?見た感じかなり重そうだけど……」
「お、お母さんと比べると、未熟ですが……で、でも、特訓はしてます……。た、たくさん、襲ってこなければ、だ、大丈夫だと、思います。」
失礼とは思いつつも、宝の持ち腐れになっているのではと言う考えが顔を出し、ナーヤに問い掛けるが、帰ってきた答えからは自信、いや、少なくとも問題にはしていないというものだった。
その証明と言わんばかりに軽々と持ち上げ……
「え?……!!?!?」
「ど、どうかなさいましたか……?」
「あ、あぁ、いや、なんでもない。」
持ち上げていた。
片手で。
小首を傾げて俺の反応に疑問を感じているようだが、むしろこちらの方が疑問で仕方がない。
その細身のどこにそんな筋肉があるのか。
確かに腕は袖に覆われて外見からは筋肉の付き方は判別がつかないが、それでも片手で持ち上げられるとは思ってもみなかった。
俺も初めて剣を持った時は思った以上の重さで、慣れるまでは苦労したが、きっと彼女にはそれ以上の努力があったのだろう。
それに商店で働いていると言う事は重い物を持つ機会も多々あるだろうし、そう考えると生活の一環で鍛えられる土壌が出来ていたと考えられる。
「ナーヤ……」
「は、はい?」
「お前って凄いな。」
「え、えぇ?そ、そんな、私なんて……」
「別にネーシアと比較する必要はないだろ、だったナーヤはナーヤだぜ?」
「あ、あの、その、あ、ありがとう、ご、ございますぅ……」
純粋に関心と敬意からナーヤを褒めると、彼女は困惑しながら首をぶんぶんと振って否定する。
しかしモルダが良い事を言った。
確かにネーシアは凄い人なのかも知れない。
ナーヤからしたら尊敬する母親であり、自身が働いている商店の敏腕店主なのだろう。
しかし人にはそれぞれ個性がある。
比較ばかりしていても辛くなるだけだろう。
彼の一言でナーヤは顔を真っ赤にしながら感謝の言葉を述べた。