徐々に近づきつつ、しかしどこか小さな足音の主の姿が見えるようになる。
暗い地下牢とは言え、僅かばかりの明かりはあり、その姿に俺は驚愕した。
「ナ、ナーヤ!?」
「リ、リョータさん……モ、モルダさん……ぶ、無事だったん、ですね……それに、レオノーラさんも、お、お久しぶり、です。」
「お前、どうしてここに?」
「久しぶりですね、ナーヤ。まさかこんな所で再開するとは思っても見ませんでしたよ。」
その人物はナーヤ。
俺たちと共にマスカからルーメンに訪れた商人であり、少なくともこの場に現れるような人物では無かった。
故に俺たちは驚いて何故ここに居るのかを問うが、その前に優先するべき行動をとる。
「そ、それよりも、先に、ここから出ましょう……鍵は……ど、どこでしょうか……?確か、こちらの方に…………あ、あれ?」
ナーヤは俺たちを解放しようと牢屋の鍵を探すが、その反応を見るに見当たらないらしい。
あわあわしながらガサゴソと自身が入って来た方を漁る。
しかしそれでも鍵は見つからないようで、探索を諦めたのか、彼女はこちらに近づいて来る。
そして……
「ご、ごめん、なさい……少しだけ、は、離れていて下さい……」
「え?」
「まさか……」
「えいっ」
鉄格子に手を掛けて強引にこじ開ける。
いとも簡単に、とは言えないが、メキメキと鉄が軋む音が聞こえ、徐々にその隙間は広がっていく。
少しすると人一人がどうにか通れそうなスペースが出来上がった。
「こ、これで、出られる、でしょうか……?」
「お、おぉ……あ、ありがとう。助かった。」
続けてモルダ、レオノーラの入っていた牢の鉄格子もこじ開け、それぞれが顔を合わせる事が出来るようになった。
力が強いのは知っていたが、ここまでの膂力を発揮できるとは思っておらず、感謝の言葉よりも先に驚愕と畏怖が先に来る。
以前住んでいた世界でも、この世界に来てからも、彼女ほどの力の持ち主は見た事がない。
恐らくジャックでも鉄格子をこじ開けるのは不可能だろう。
しかしただ茫然としている訳にもいかない。
彼女がくれたチャンスを逃せば、次はいつ外に出られるか分からないのだ。
脱獄と言う形になってしまうのはマズいと思う。
しかし外で過ごしていれば恐らく短いと感じられるであろう時間は、俺たちにはとても長く感じられた。
正確には時間の経過が分からず、胸中には漫然とした不安が感じられたのだ。
それがこのような形で出られるとなっては誘惑に抗う事は出来なかった。
ナーヤが助けに来てくれたのだから、既に鉄格子が曲げられてしまっているのだから。
そう心の中で言い訳を並べながら、俺たちはとにかく外を目指した。