俺たちはナーヤに連れられて地下からの脱出を図る。
ただし、この牢に入れられるときに降りてきた階段では無く、地下水路のような所に連れられていた。
ともあれ、ここまで来れば見つかることも無いだろう。
俺は先程から感じていた疑問を口にする。
「それで、結局どうして助けに来てくれた、と言うか俺たちが牢屋に捕らわれたって、どうやって知ったんだ?」
「鍵のある場所も知ってそうな口ぶりだったよな。」
「えっと、それが、リョータさんたちが、か、帰って来なくて、心配して、いたのですが……お、お二人が出かけた、次の日に、こ、声を掛けられて、お二人の事と、か、鍵の場所と、地下水路の事を、教えてもらって、この時間に、く、来るようにって……」
なるほど、誰かに聞いたのであれば俺たちが捕らわれていた事、鍵の場所を知っているような発言を彼女がしていた点、そして始めて来るであろう地下水路で先導出来ている点には納得だ。
しかしそうなると次の疑問が浮かぶ。
「それはどのような人物だったのですか?」
そう、レオノーラが尋ねたように、その『誰か』が誰だったのかと言う疑問だ。
「そ、それが、馬車の中に、い、居る時に、声を掛けられて、そ、『そのまま、聞いてほしい』って……な、なんだか、分からない内に、りょ、リョータさんたちが、捕まってる事や、鍵の場所、地下水路の話を、き、聞きました……」
「つまりは誰だったか分からねぇって事か。」
「す、すみません……」
「いや、助けてもらったんだ。気にならないと言えば嘘になるけど、感謝してるよ。」
脱獄という形で牢を出てしまった後悔が無いわけでは無いが、まずはナーヤと彼女に情報提供をしてくれた人物に感謝する。
しかしその人物とは一体何者なのだろうか。
更に言うと見張りに見つからずにナーヤがここまで来ることが出来た事も、教会から出るまでの地下水路の情報も、不思議で仕方がない。
地下牢や牢の鍵の場所、地下水路の存在を知っていた事から教会関係者であるとは思うが、そうなるとアンジェロやアニエスが候補に挙がる。
とは言え二人とも俺たちが牢に捕らわれている事を知っていたのか、知っていたとしても何故直接助けるのではなく、ナーヤに情報を提供する事で間接的に助け出したのか、そもそも見張りを遠ざけるだけの権力があるのか。
権力と言った意味では、アニエスならば、聖者の位を嘱望される彼女ならば、もしかしたらと思うが、彼女がそのような遠回しな事をするとは思えない。
そもそも先程挙げた二人では無く、別の人物の指金の可能性もまたあり得る。
考えれば考えるほどに思考はまとまらない。
気が付けば眉間に皺を寄せて黙り込んでいた俺にモルダが声を掛ける。
「まぁ考えたって分からねぇんだし、今はレオノーラと再会出来て、牢から出られて良かったって事で良いだろ。」
「そう……だな。あぁ、良かった。」
少なくとも『レオノーラを見つける』という、俺たちがルーメンに来た目的は達成できたのだ。
ならばまずはそれを喜ぼう。
しかし……
「これからどうするかな……」
脱獄には代わらない。
この判断が誤りであったかは分からないが、状況が好転した訳では無い事は確かだろう。