「取り敢えず教会は避けて動くとして……」
「思いっきり脱獄したからな!まぁでも、どうにかなるだろ!」
「鉄格子も壊してしまいましたからね。」
「す、すみません……」
「あ、いえ、ナーヤを責めるつもりはありませんよ。」
こればかりは仕方のない事だ。
当分の間は教会関係者の目に付くとマズいだろう。
「そもそもオレたちを牢に入れてた事と、そのオレたちの顔がどれだけ知られてるかって話でもあるけどな。」
「それはそうだな。アンジェロも知らなかったと仮定したら、末端にまでは情報が行き渡っていない可能性は高い訳だし……」
「とはいえ、安易に街を出歩くのも危険になるのでは?」
「指名手配、なんて流石にされないとは思いたいけど、レオノーラの意見にも一理あるな。」
「よし、ナーヤ。」
「は、はいぃ……」
「任せた!」
「はいぃ……?」
道すがら、これからどうするかを話し合っているとモルダはナーヤに『任せた』とだけ伝える。
俺たちは唐突な発言に困惑していると、その間に彼は言葉を続けた。
「街の様子を探ってもらう必要があるだろ?」
「そうだな。」
「でもオレたちは街を出歩いて捕まったらマズいだろ?」
「そうですね。」
「って事でナーヤに街の様子を、特に指名手配とか、教会の人間が誰かを探してないかを確かめてもらうって寸法だ!」
「いや、流石にそれは……それは……」
言わんとする事の理屈は分かるが、無理なんじゃないか。当の本人も無理だと言いたげな表所をしているし。
反射でそう返そうとしたが、ナーヤの顔は教会関係者に割れていない。
ナーヤの優れた洞察力はこの街に来て早々に証明してもらっている。
ナーヤの膂力があれば不逞の輩が現れても撃退できる。
冷静に考えてみると……
「ありかも知れないな……。」
「え、えぇ……!?」
援護射撃は援護射撃でも、ナーヤの求めていた形では無く、むしろ自身を追い詰める形で行われたそれに彼女は困惑を隠せない。
彼女は捨てられた子犬のような表情で、意見を述べていないレオノーラの方を見やる。
「ナーヤ。」
「は、はいぃ……」
そんなレオノーラの意見は、
「任せましたよ。」
「ふぇぇ…………」
ナーヤを涙目にするものだった。
「まぁ無理に、とは言わない。でもナーヤの力を貸してもらえるなら、とてもありがたい。ナーヤは自分で思っているよりも頼りになる、すごい奴だって俺たちは思ってるんだ。だから、力を貸して下さい。」
無理強いしては悪いし、教会関係者に密告されても困る。
しかし彼女の力を借りたいのは揺るぎない事実で、俺は頭を下げて頼み込む。
「…………わ、分かり、ました……わ、私、頑張ります……!」
「おぉ、ありがとよ!」
「助かります。」
「本当にありがとう、ナーヤ。」
俺の説得を受けてナーヤは首を縦に振ってくれた。
発奮する彼女に俺たちは感謝を述べる。