「そ、それじゃあ、行ってきますね……」
「頼んだぜ。」
「気を付けて。」
地下水路の出口付近で俺たちは一旦待機して、ナーヤに街の様子を探って来てもらう。
つい先ほど脱獄をしたばかりだし、少なくとも今ならば安全ではあると思われる。
しかし念のため、指名手配などがかけられていないか、教会関係者などが誰かを探している素振りは無いかだけでも見て来てもらうに越したことは無い。
もしも俺たちの脱獄が露見して捜索が行われていた場合、何らかの方法で捜索者の眼を掻い潜る必要があるが……
「も、戻りましたぁ……」
「お帰りなさい。」
「それで、街の様子はどうだった?」
「と、特に問題無いと、思います……ま、街は昨日一昨日と、同じ雰囲気でした……」
「そりゃよかった。これなら取り敢えずはディーゴの所にまでは戻れそうだな。」
「そうだな……ただ戻ったとしてもディーゴに迷惑が掛かるんじゃないかって……」
今の俺たちは不本意ながら脱獄犯。
まだ脱獄が発覚していないからか探索はされていないが、この後バレた場合はその限りではない。
そうなるとディーゴの所に居ると彼の迷惑になるし、信心深いディーゴの部下が情報を教会に流さないとも限らない。
最悪の場合、ディーゴと教会の関係が悪化した上で、俺たち『差し伸べる手』との関係も破綻、対立しかねない。
そうなると誰も得をしないどころか損しかしないのだ。
「つっても、馬車はディーゴの所に置いてあるし、何があったかだけでも話しといた方が良いんじゃねぇか?」
「モルダの言う通りですね。何にせよ下手に隠そうとする方が悪印象を与えるかと。」
「それは……そう、だな。言いづらい話ではあるけど、伝えない事で事態が悪化する可能性もある訳だし。」
「ご迷惑をお掛けしました……」
「あ、いや、そういうつもりで行った訳じゃ」
「おいおい、レオノーラをいじめるなよー。」
「いじめてない!と言うか子供か!」
しかし俺の考えに対してモルダとレオノーラは反論する。
確かに彼らの言う事にも一理あり、レオノーラの件を鑑みればディーゴに相談に無いのは悪手と成り得る。
過去の事例から相談はするべきだと改めたつもりだったが、そう簡単に人は変われないらしい。
しかしそれを口に出してしまったせいでレオノーラが僅かに俯いて謝罪し、モルダはそれを見て俺を茶化す。
「とにかく!一旦ディーゴの所に戻るとしよう。」
方針が決まったのであれば、ここに留まっていても仕方がない。
俺たちはなるべく人通りの少ない道を通ってディーゴの商館に戻るのであった。