俺たちは地下水路から裏路地のような所に出て、特に問題もなくディーゴの商館に戻る事が出来た。
「ディーゴはいるか?」
「モルダ!?それにリョータさんたちと……どなたですか?」
「初めまして、『差し伸べる手』の一員のレオノーラと言います。」
「あ、初めまして……ってそれは一旦置いておいて、モルダたちは昨日帰って来なかったけど、どこに行っていたの?ディーゴが心配してたよ。」
「いやぁ、悪ぃな。それでちょっとディーゴと話したい事があるんだ。あいつは今いるか?」
「今は商館にいるから呼んでくるわ、少し待ってて。」
受付に声を掛けると、帰って来なかったことを心配していたようで驚きながら迎え入れてくれた。
どうやら今回はディーゴが居るようで、少し待つと受付の隣の扉から姿を現した。
「皆さん、帰って来たのですね。それにそちらの方が探していたと言うレオノーラですか。もしや彼女を迎えに行っていたから昨日は帰って来なかったのですか?」
「あぁ、えっと、それに関連する事で、ちょっと……」
「ちょっと?どうなさったのですか?」
「教会の地下牢に入れられてさ……」
「え?……地下、えっ!?地下牢!?」
「おぉ、ディーゴがここまで驚く姿、初めて見たぜ。」
「一体何を!?いえ、それよりも捕まっていたのなら何故ここに!?」
レオノーラの話は既に聞いていたようで、彼女の件で昨日帰って来なかったのかと納得したように頷きつつ確認をとる。
間違ってはいない、しかしその実情は穏当な話でもない。
口ごもりながらも地下牢の件を伝えると、付き合いのあったモルダでも見た事のないほどにディーゴは狼狽し、俺の方を掴んで揺すりながら質問を続ける。
「脱獄、しちゃった。」
「…………」
「ディーゴ?おーい、ディーゴー?」
「はっ!今、恐ろしい冗談が聞こえて……」
「悪いが、冗談じゃないんだ。」
あまり深刻そうな雰囲気にならないように伝えたが、ディーゴには刺激が強かったようでポカンと口を開けて虚空を眺めたまま固まってしまった。
このままでは話が進まないので一瞬意識を失っていたディーゴにモルダが呼びかけ、目を醒まさせる。
彼は俺たちが脱獄した話を冗談だと思いたかったようだし、気持ちも分かるがここまで来たのだから何があったのかを教えなくてはならない。
昨日の手伝いの後、教会に向かった事。
その道中でかつて保護していたシスター、アニエスを見つけた事。
彼女の暗く沈んだ表情を目にした事。
そのまま教会に向かってアニエスに会わせてほしいと頼み込んだこと。
断られるどころか、そのまま牢に入れられた事。
その牢で探していたレオノーラと再会出来た事。
しばらく牢に居ると、ナーヤが正体不明の人物から情報を提供され、助けに来てくれたこと。
そしてここまで戻ってきたことを。
「そのようなことが……しかし、それは……にわかに信じがたい話ではありますが……」
「彼らの言っている事は真実だよ。」
「あ、貴方は!?」
商館に入ってすぐの所で話をしていると、背後から俺の話を肯定する何者かの声が聞こえてきた。