「あの、話の腰を折るようで申し訳ないのですが、牢屋の破壊とは……?」
「えーっと、その……俺たちが脱獄する時に、ナーヤが鉄格子をこじ開けて……」
「えぇ…………フォルネ、きちんと命じた通りに情報を伝えたのですか?」
「はい、間違いなく。」
「そ、その、鍵が、見つから、なくって……ご、ごめんなさい……!ぜ、絶対に、弁償します……!」
「そ、そうでしたか……牢屋を……」
レナードは不思議そうに顎を手でさすりつつ俺たちに問い掛ける。
うん、彼の想定からは決してこの場には出てこない単語が飛び出して来たのだから、その疑問ももっともだ。
簡単に説明をするとレナードは自身が命令を下した相手、その名をフォルネと言うらしい、に確認を取ると尚信じられないものを見るようにナーヤに視線を移す。
彼女が深く頭を下げて謝ると、一応は納得したように首を縦に振った。
「うぅん……牢屋の話は一旦置いておくとしまして、お帰りになられない、と。」
「お心遣いは大変ありがたいのですが……」
「ではこうも言わせて頂きましょう。私としましても、善意のみで手を貸そうとしている訳ではありません。これは私の為の申し出でもあるのです。」
「レナード殿の為、ですか?」
「えぇ、端的に言ってリョータ様たちの存在は、あまりにも予想が付かない。」
話を戻したレナードは俺たちへの助け舟は、俺たちの為だけに出したものではないと告げる。
「誰が教皇に選ばれるにせよ、誰に、どのような影響を、いつ、どのような形で与えるか、それによってどのような結果に結びつくか、私にも、他の候補者にも、予測が付かないのです。」
「…………」
俺たちの存在は関係者としては喜ばしいものではないと、端的に言って邪魔になりかねないと暗に告げられた。
確かに、俺がレナードの立場であったら予測不可能な要素は極力排除しておきたいだろう。
彼には脱獄の手引きをしてもらった音がある。
「ですから、これはリョータ様だけの為の提言ではありません。私の為の頼みでもあるのです。」
「レナード殿、申し訳ありませんが……」
しかし、それでも、恩のある相手であっても決意は変わらない。
アニエスの助けになりたい。
ここでルーメンを脱すれば、彼女に手を差し伸べる機会は来ないと、理性では無く直感がそう告げているのだ。
「分かりました。そこまでおっしゃるのであれば、これ以上は何も言いますまい。しかし、また今回のような事があったとしても、次は私が手を回す事は出来ない事だけはお忘れなきよう。」
俺の答えを聞いたレナードは残念そうに眉尻を下げつつ首を横に振り、俺に警告をして去っていった。
彼には悪い事をしたが、だからこそ後悔の無いように行動しなくては……