「これからどうするかだけど、その前にナーヤは本当に良かったのか?」
「し、商人として、誠実さや、正直さは、弱点にも、な、成り得るけど、同時に、得る事が、難しい、貴重な、ざ、財産でもあると、お母さんは言っていました。だ、だから、私はここで、その財産を、切り崩したく、な、無かったんです……」
今更かも知れないが、それでもナーヤに後悔がないのかを問う。
彼女は半ば巻き込まれたようなものなので、これ以上の迷惑は極力かけたくはない。
しかしそれは杞憂だったようで、彼女は彼女の信念に基づいて選択をした。
ならばこれ以上は重ねて問う事はよそう。
「そ、それに、ディーゴさんの、商会で、お、お勉強、させてもらえたら、う、嬉しいので……」
「ネーシアさんにはお世話になっていますし、あまり時間は取れませんが、それでもよろしければ。」
「あ、ありがとう、ございます……!よろしく、お願い、します……!」
彼女はディーゴに頭を下げて教えを乞い、それを受け入れられる。
どうやらナーヤの方はこちらで問題無く過ごす事が出来そうだ。
しかし、俺たちはどうだろう。
「取り敢えずナーヤの方は大丈夫そうか……なぁ、ディーゴ。事が事だし、俺たちは一旦この商館から出て行った方が良いかな?」
一時は捕まっていた身であり、教会の重大事に否応なく関わる事になるだろう。
そうなるとここに居てはディーゴに迷惑が掛かる。
それを懸念して俺は彼に尋ねるが……
「それは…………いえ、ここに居てもらった方が良いでしょう。」
「良いのか?」
「えぇ、またレナード様が訪ねて来られるかも知れませんし、ここを出て潜伏しながら活動するとなると反って教会の方々の警戒心を刺激しかねません。それに……」
「それに?」
「いえ、何でもありません。気にしないで下さい。」
「そこまで言っておいて教えてくれないのか……」
「すみません、これは私の口から言うべき事ではないかも知れないので……」
意外にもディーゴの答えは許諾だった。
厄介ごとに巻き込みかねない事には申し訳なさを感じるが、それ以上に彼に感謝と敬意を覚えた。
しかし彼が最後に言いかけた事が気になる。
ディーゴが言わないのであれば誰から聞けばいいのだろうか。
ともあれ、これ以上追及しても話の続きを聞けるとは限らないし、いったん話を戻すとしよう。
これからどうするのか。
ルーメンに残る事を選択したが、しかしだからと言って具体的な案がある訳でもない。
まずは皆の意見を聞いて方針を固めなくては……。