俺たちは腰をかがめ、中庭に生えている低木や少し背の高い花に身を隠しながら進んで行く。
どうにか見つかることは無く、アニエスが居たと思しき部屋に接しているバルコニーの下辺りまで到達する事が出来た。
「それでこの先をどう進むかだけど……」
道が分からず、迷ったり見つかったりする危険性。
道のりでは無く距離で考えた場合、ここが最もアニエスに近い場所である事。
それらの材料から考えると……
「どうにかしてこの上のバルコニーまで登れないかな?」
「ジャンプして届く高さじゃねぇなぁ……」
「梯子でもあれば良いんですが、それらしいものは見た所どこにもなさそうですね。」
「探しに行くか?」
「それなら普通にアニーの部屋に向かった方が良いのでは?」
バルコニーを経て直接彼女の下へ向かいたくなる。
しかし普通にジャンプしようにも届きそうにない。
道具も見つかる訳もなく、モルダとレオノーラは懐疑的だ。
だが俺もなんの考えも無しにバルコニーに登る案を出したわけでは無い。
「なぁ、モルダ。こう、両手を合わせて握って、あ、親指は拳の内側にしまってくれ。」
「???これで良いのか?」
自分の手を組む様子を見せ、説明しながら、モルダにも同じことをさせる。
彼は疑問に感じ、首を傾げながらもそれに従う。
「で、ここでバルコニーに背を向けて、腰をかがめて、握った手は更に下に。」
「リョータ、お前もしかして……」
モルダの立ち位置、姿勢を指定すると、彼は疑問を見せていた表情を徐々に変え、察したように呟いた。
「それで俺は助走を付けてモルダの手に足を掛ける。モルダは俺が足を駆けたら腕をかち上げる。それで俺がバルコニーに登る。レオノーラも同じようにしてジャンプして、俺は上から手を伸ばす。で、最後に俺の上着を紐代わりにして、モルダは助走をつけてジャンプ。上着を掴んだら俺とレオノーラで引き上げる。これでどうだ?」
「それなら、いけるかも知れねぇな。」
「これなら道を探して見つかる危険性も減らせますね。懸念すべきは失敗して落下した時に上手く着地しないと音でバレる危険性がありますが。」
道具が無いのであれば仲間を頼る。
一人の跳躍力では届かない高さでも、それに加えてモルダの腕力による補助があれば届く可能性は十分に存在する。
俺の話を聞いた二人は先程までの懐疑的な表情を一転させ、それならば、と納得してくれた。
レオノーラの言うような失敗時の危険性を鑑みても、道も分からずに見つかる可能性がある中で彷徨うよりは良い選択だろう。