バルコニーに上がった俺たちは早速部屋の中へと移動しようとするが……
『ガタッ!』
「ん?」
『ガタガタ!』
「どうした?」
「まさかとは思いますが……」
扉が、空かない。
モルダは問い掛け、レオノーラは嫌な予感がすると言いたげな表情を浮かべる。
そう、この扉は……
「鍵がかかってる。」
「なるほどな。それじゃあ……」
端的に状況を伝え、どうするか思案する。
こじ開けるか?いや、三人で体当たりしたとしても破れるとは限らない。
無駄に体力を使うだけで終わる可能性も十分にあり得る。
下に降りて新しい道を探すか?いや、それこそ衛兵に見つかってしまっているのに、その選択は論外だろう。
道を探している間に捕まるのが関の山だ。
ピッキング、なんて技能は持ち合わせていないし、そもそも道具すら無い。
俺が頭をひねっている一方でモルダは一度頷き、大きく息を吸い込んで……
「おーーーい!!!アニーーーー!!!!!」
アニエスの名を叫んだ。
「うわぁ!ビックリしたな!そんなに大声を出したら……いや、もう見つかってるから関係ないか。」
「むしろアニエスが向こうの部屋にいるのであれば有効な手段かも知れませんね。アニーーーー!!!」
「それなら俺も、アニーーーー!!!会いに来たぞーーー!!!」
俺とレオノーラはビクリと肩を震わせ、急に大声を出したモルダを咎める。
しかし冷静に考えてみると、衛兵に見つかる前であれば悪手だが、今となっては叫ぼうが叫ぶまいがこちらに駆けつけてくるだろう。
それならばレオノーラが言うようにアニエスに声を届ける方が有意義だろう。
そうして三人で大声を上げてアニエスを呼んでいると……
『ガチャリ……』
「…………」
鍵が開く音がして扉が僅かに開き、隙間が空く。
その隙間からはおずおずと顔を覗かせ、バルコニーをチラリと見やるアニエスがいた。
まぁ衛兵に見つかって騒ぎになり、それに加えて大声で名前を呼ばれれば、このような反応をするのもやむを得ないだろう。
「「「アニー!」」」
「皆さん……えーっと、取り敢えずは言って下さい……。」
俺たちは久々に再会できた事に喜びの表情を浮かべ、一方でアニエスは困惑の表情を浮かべる。
それでも彼女は一旦部屋の中へと招き入れてくれた。
少なくとも、ひとまずはアニエスと再会する事は出来た。
このまま話を聞いて、彼女の助けになる事が出来れば良いのだが……
もっとも、助けを必要としているのはこの後ここから脱出しなくてはならない俺たちの方だろうけれども。