「そうだ、ラディウムであった事でも話そうか。」
「え?」
「実はあっちでも牢屋に入れられてさ……」
「えぇ!?」
嘘を吐いたと落ち込んでいたアニエスを宥める為にも、久しぶりに再会できた嬉しさからも、俺は彼女にラディウムで体験した出来事を話す。
一つ話を聞くたびに彼女は牢屋に入れられた話や海賊に襲われた話に驚き、一つの家族の不和に悲しみ、最終的にはどうにか無事にラディウムの問題を解決できたことに喜びの表情を浮かべ、俺も話し甲斐があるリアクションを取ってくれる。
そして一通りの話を終え、気が付けば随分と話し込んでいた。
ここに来る時には登っていた日は下り始めており、流石にこれ以上ここに留まる訳にもいかないので一旦ディーゴの元に帰る事にした。
「久々に皆さんと会えて嬉しかったです!楽しい時間はあっという間でした!でも、もう帰っちゃうんですよね……?」
「まぁ、ここに泊まる訳にもいかないからな。でも俺も久々に会えて、話せて良かったよ。」
「また来るぜ!でもまた捕まったり追われたりするのは御免だから良い感じに話を通しておいてくれ!」
「今回は私たちばかり話してしまったので、次はアニーの話を聞かせてほしいですね。」
「はい!また皆さんとお話したいです!待ってますね!」
王都やルーメンの道で見かけた時の暗い表情は何処へやら、アニエスの表情は以前俺たちと共に居た時のような明るい表情を見せてくれるようになっていた。
その姿に安心した俺たちはまた来る事を伝え、アニエスから教会関係者に話を通してもらうように頼む。
少なくともこれでアニエスに会いに来て追い返される事や捕まる事は無いだろう。
そして帰還しようとするが……
「アニエス様、失礼致します。」
「あ、キールソンさん……」
「何やら芸人を呼ばれたと兵から聞きましたが、事実ですか?」
「はい……」
「世俗の遊芸を欲するのは聖者としての自覚に欠けておられるのでは?」
「すみません……」
「それだけならまだしも、誰にも伝えずに身元も明らかではない者を通すなど、御身に何かあってからでは遅いのですよ。貴女はご自身が思われている以上に強い影響力を持つのです。日頃からお伝えさせて頂いておりますが、その事を忘れ遊興に耽るのは控えて頂きたい。」
「あの……」
「あぁ、お前たちは帰りなさい。それと命が惜しいのであれば次からは他所で頼まれたとしても、不法侵入のような真似はしないように。我々は理性的ですが、殺されてもおかしくないので。」
その前に以前王都でアニエスの付き人をしていた男が部屋に入ってくる。
キールソンと呼ばれた彼はこちらを一瞥した後に、能面のような表情でアニエスに説教を始める。
肩を落としてしょんぼりとする彼女を見かねて声をかけようとする、逆に俺たちも軽くとは言え説教される。
実際、不法侵入じみた事をしたのは事実だから、何も言い返せない。
火に油を注がないように、アニエスが説教されている姿を尻目に俺たちは帰還するのであった。