「ただいま。」
「あ、お、お帰り、なさい……。ぶ、無事、だったんですね……。」
「途中で危うく捕まるところだったけどな!」
「えぇ……!?だ、大丈夫ですか……?」
「あぁ、順を追って話すよ。」
ディーゴの商館に戻って来た俺たちをナーヤが出迎えてくれた。
危ういタイミングもあった事を話すと彼女は驚き、不安げな表情をする。
どうせだから彼女に今日あった出来事を話しておこう。
「……って事があったんだ。」
「そ、そんな事が、あったんですね……。も、もう一度助けに、行く事に、な、ならなくてよかったです……。」
「あの時捕まってたら、最悪助けてもらう前に殺されてたかも知れないけどな!」
「ひぇ……」
「そもそも以前の様に監視がいないなんて事も無いでしょうね。」
「うぅ……」
「あんまり脅かしてやるなよ。捕まらなかったんだから、それ良かったって事でいいだろ。」
話を終えてナーヤは胸を撫で下ろして安心する。
しかしモルダとレオノーラが彼女を揶揄うように、しかし正論を口にすると、ナーヤは再び最悪の結果を想像してしまいあわあわとしだす。
半ば呆れ気味に二人を嗜め、改めて話を続ける。
「アニーも少しだけど元気になったみたいだし、捕まらずに帰って来れたし、良い感じだぜ!」
「ただあのキールソンと言う男は不安要素ですね。」
「アニーが『聖者らしくない』行動を嫌いみたいだし、アニーが教会の人に自身の下まで通しても良いって言っても、キールソンがそれを止める可能性も十分にあるからな。」
アニエス自身が俺たちの面会を許しても、キールソンがそれを許すとは限らない。
立場の上ではアニエスの方がキールソンよりも高い位置にいるはずだが、それは名目上のものだけのように思えた。
「アニーの自由がかなり制限されていると思います。」
「王都で会った時も、俺がアニーと話そうとするのを間に割って入ってきたからな。」
「しかも厳しそうな男でした。」
「従者ってよりはお目付け役って感じか。アニーに元気が無かったのって、もしかしてあいつのせいでもあるんじゃねぇか?」
「その線もあり得そうだな……。」
追い返された事もあって、俺たちは正直に言ってキールソンに対してあまり良い感情を抱いてはいない。
むしろ彼がアニエスに悪い影響を及ぼしてるのではないかとすら勘ぐってしまう。
「ともかく、明日もう一度アニーを訪ねてみよう。」
「アニーが口利きしてくれたんなら、少なくともまた捕まるなんて事はねぇだろうしな。」
「問題は通してもらえるか、ですね。」
どうなるかは分からないが、アニエスと再会できた喜び、そしてキールソンと言う男に対する一抹の不安を抱えながら、俺たちは休むのであった。