「おい、何やってんだ!」
「ちっ……!」
しかしその刃が振り下ろされる事は無かった。
不審者の背後にはモルダが怒りの形相で立っており、敵はそちらを一瞥して忌々しそうに舌打ちをする。
その隙に俺は不審者から距離を取り、別の燭台を手に取って構えた。
予想外の救援に生きる希望が湧き、戦う気力が湧いて来る。
「なんかうるせぇと思ったら、誰だテメェ?物取りにしちゃ随分と物騒じゃねぇか。」
「…………。」
「だんまりかよ。」
モルダが不審者に何者か問うも、相手は沈黙を保って答えない。
確かに彼の言うように盗みに入ったのであれば、見つかった時点で逃げる事を優先するだろう。
口封じをするのも理解は出来るが、顔を隠していてどのような人物か分からない上に、俺が背を向けて逃げようとしていたにも関わらず追撃をしてきた。
つまり盗みは目的ではないのではなかろうか。
しかし何はともあれ、一つマズい事がある。
「モルダ!せめて何か武器は無いのか!?」
「ねぇ!うるさくて目が覚めてすぐ来たからな!」
助けに来てくれたモルダは丸腰だった。
自信満々に言い切ったが、そこはせめて何か持っていてほしかった。
相手は短剣を持っているのだから、不安しかない。
「大丈夫なのかよ!?」
「大丈夫だ!安心しろって!」
事も無げにモルダは不審者へとゆっくりと歩み寄る。
不審者はこちらを警戒しつつもモルダの方を向いて短剣を構える。
そして攻撃がギリギリ届かない距離まで両者が近づき、
「はっ!」
「当たるかよ!」
不審者が距離を詰めて攻撃に移る。
小刻みに斬撃と刺突を繰り出すが、牽制程度のものでモルダは難なくそれを躱す。
そして不審者は大きく振りかぶり、袈裟斬りに短剣を振り下ろす。
が……
「そらっ!」
「っ!」
その瞬間を待っていたようにモルダは身体を捻って攻撃を躱しつつ、不審者の短剣を持っている方の腕を掴む。
そのまま彼は体重を掛けて不審者を引き寄せ、バランスを崩した所で背後から押し倒した。
倒れ伏した不審者は腕を捻られ、剣を床に落とすとモルダがそれを掴んで適当な方向に投げ飛ばす。
「モルダ!」
「ま、ざっとこんなもんよ。」
「よく武器も無いのに無傷で制圧出来たな。」
「昔住んでたところで護身術として教わってな。つっても、多対一だったら通用しないし、相手が長物を持ってて距離とられてもダメなんで、基本的には逃げろって教わってたんだけどな。」
「いや、すごいぞ。今度教えてくれよ。」
「おう、良いぜ。」
無事に不審者を制圧出来た事に俺は胸を撫で下ろしてモルダへと近づく。
一時はどうなるかと思ったが、助かって良かった。
後はこの不審者をどうするかだが……