「バルドル、この者は頼みました!我々は向こうを見てきます!」
「俺たちも行くぞ!」
「おう!流石にあんな悲鳴を聞いちゃ寝てられねぇ!」
不審者をディーゴの部下に任せて俺たちは悲鳴の方向に駆け出す。
不審者が窃盗を目的としていないのであれば、恐らく誰かしらへの襲撃や暗殺を狙っていた可能性が高い。
と言うか実際に殺されそうになった以上、思考がそちらに向くのだ。
俺たちを害する事が目的であるならば、モルダの言うように仲間の危機を放って眠ってなどいられない。
そして何の邪魔も入らず、レオノーラとナーヤの部屋の前まで辿り着き、扉を開ける。
「無事か!二人とも!」
「きゃーーー!!!」
「うおぁ!?」
「なんだ!?」
先陣を切って部屋の中に駆け込もうとした瞬間、扉横の壁に『ドン!』と言う鈍い音と共に衝撃が走る。
次いで『ドサッ!』と言う音が足元から聞こえ、何かと思って視線をやると、そこには白目を剥いた見知らぬ人物がいた。
俺は思わず驚愕の声を上げて飛びのくが、後ろにいたモルダにぶつかってしまった。
「え、あ、り、リョータさん、たち、だったんですね……す、すす、すみません。び、ビックリ、しちゃって……」
「こっちもビックリしたよ……でも無事そうで良かった。」
「ところでコイツ、さっきの奴と似たような恰好してるぜ。」
「さっきの……?リョータたちも襲われそうになったんですか?」
部屋に入ろうとしたのが俺だと気が付いたナーヤは、いつも以上に吃りながら不審者を投げつけてきたことを謝罪する。
一方、モルダは横から顔を出して俺の足元に転がる人物をまじまじと眺めると姿恰好が先程の不審者と似通っている事に気が付き、その事に関してレオノーラに尋ねられたので一旦、情報共有をする事にした。
「そ、そうだったんですね……。」
「そっちは眠ってたんだよな?よく無事だったな。」
「その、こ、この部屋の前の廊下って、音が、な、鳴るんです。」
「音?」
「あぁ、この廊下は老朽化が進んでいまして。誰かが通るたびに床が軋んで音がするんですよ。いい加減改修しなくては、と思っていましたが、今回に限っては後回しにした判断が功を奏しましたね。」
どうやらこちらの廊下は古くなっていて通るたびに音が鳴るようだ。
先程は慌てていて音に全く気が付かなかったが、確かに不審者がうろついていて音が鳴り続けていたのであれば、目が覚めてもおかしくはない。
「そ、それで、ずっと廊下から音がしていて、こ、この部屋の扉が開いて……こ、怖くてベットの隅で、毛布を被って、小さく、なっていたのですが……足音が、こ、こちらに近づいてきて……毛布を、剥がされて……つ、突き飛ばしちゃって……誰だか確認しようと、してたら、また廊下から、音がして、いきなり扉が開いて……手元にいた、こ、この人を投げちゃって……」
「突き飛ばしたのか……」
「ぶん投げたのか……」
「まぁ流石に死んではいないでしょう。」
「…………」
床に倒れ伏した不審者を尻目に、俺たちはナーヤの底知れぬ力に慣れて来たのか、あまり驚かなくなり、その一方で実際に目にしたディーゴは愕然としていた。