「どうにも口が堅いようで、これと言った情報はまだ手に入っていませんね。」
「そ、そうか……ところでその、これって法に触れるんじゃないか……?」
「ご安心ください。問題ありません。」
「そうなのか?」
「ここは窓もなく、密閉された部屋なので人目に付きません。」
「いや問題……うん、まぁ、うん…………」
それはつまり見つかったら問題になる、法に触れると言っているのと同義だが、相手はこちらを害しようとして来た相手だし、今更警邏に報告するのもどうかと思って俺はやんわりと首を縦に振った。
助けてくれたディーゴたちを売るみたいだし、これからも手を貸してもらう協力相手だし、情と利の両方からも、この選択は間違っていないだろう、多分。
「ところでどこの人間なのか目星は付いてるのか?」
「いえ、流石にこうも直接的に襲撃を仕掛けてくる相手には思い当たる節がありませんね。窃盗や破壊といった手段で妨害に出られる事はありましたが、人員に対する襲撃はこれまで一度もありませんでした。それに今は各方面との関係も昔ほど悪くはないので、妨害自体もほとんど行われていません。」
いったん話題を変えて襲撃者の心当たりについて聞いてみるが、ディーゴ曰く直接的に害して来る相手には思い当たる節は無いとの事だ。
そして襲われたのはディーゴ商会の人間ではなく、俺たちルーメンの外から来た人間。
そうなると……
「もしかしてだけど、教会の人間だったり……」
「それは…………」
昨日の件を考えると、狙われる理由はある。
ディーゴはそれを否定しようとして、しかしそれが出来ずに視線を彷徨わせる。
心の中で薄々その可能性を感じつつも、目を背けていたのだろうか。
目を瞑り、ゆっくりとため息を吐いて、そして頭を振るって話を始める。
「確かに、いくら重要度の低い建物だからとは言え見張りがいない訳ではありません。見つからずに侵入するのは至難でしょう。しかし信心深い者が見張りであれば、その限りではありません。良くも悪くも、うちの商会は信心深い者が多いですから。」
「説得されて、侵入を許可したって訳か。」
「裏が取れたら昨日の見張りを調べて罰を与える必要がありますね。」
「問題はその裏をどうやって取るか、だな。ここまで口を割らなかった奴が、当たりを付けられたからと言って喋るとは思えねぇからな。」
状況から考えた結果、あくまでも可能性が高いと言うだけで、実際にどうなのかは分からない。
そこをまずは明らかにしなくてはならないが、どうしたものか……
「うーん、踏み絵でもさせるか?」
信仰心の強い教会の人間が相手。
半ば拷問じみた尋問をされても口を割らない。
そうなると精神的に追い詰める必要がある。
ならば先人に倣ってみるのが良いかも知れない。