「この前アンジェロに聞いた話だと『ウハヤエ教では善行を積んだ人間は死後、『楽園』って所で過ごせて、悪行を働いた人間はその重さによって大きくなる苦しみに苛まれる』だったか?」
「だいぶかいつまんだ説明ですが、概ねその通りですね。では主を模した偶像を足踏みにするのはどれほど重い罪になるのか、是非とも彼に実践してもらいましょうか。」
「っ!!!」
正直、前の世界に居た頃から宗教や信仰とは縁のない生活を送っており、あまり詳しくは無いが、ウハヤエ教に関しては先日アンジェロから受けた説明による知識ならある。
なんか罪深い事をさせようとしている事だけは理解出来ている、つもりだ。
着々と話が進んで行き、不審者は遂に明確に反応を露わにした。
「罪だと!そのような事を強要する貴様らにこそ罪があるだろう!」
「おや、喋りましたね。さっきまでは口すら開かなかったのに。」
「罪って言っても、オレ別にウハヤエ教の信徒じゃねぇし。」
「俺たちを襲った奴に罪云々言われても、なぁ。取り敢えず効いてるっぽいし軽く十回くらい踏ませるか。」
口を割らなかった不審者が遂に声を発したのだ。
それを聞いたディーゴは口調こそ驚いたようなものだったが、表情は相変わらず無表情だ。
この後に何が行われるかを理解している不審者は俺たちに罪があると言って思いとどまらせようとするが、それは意味を成さない。
俺とモルダは信徒では無いし、ディーゴは信仰心こそあるかも知れないが商会の長として感情と合理を分けて考える事が出来るのだから。
「椅子に縛ってる片足だけ浮かせられるか?」
「バランスが悪いので後ろに傾けますね。手を離せばまた戻るのでそれでやりましょう。」
「踏み絵に使う偶像って何かあるか?」
「高価な物を使うのはもったいないので、慶事に教会で配布していたこのシンボルにしましょう。頂き物をこのような事に使うのはあまり良い気分ではありませんが、仕方がありません。」
踏み絵を強要すると決まればとんとん拍子に話が進んで行く。
その間も不審者は身をよじって抵抗しようとするが、椅子がガタガタ言うだけで何の意味もなさない。
ここまで拒絶反応を示されると、なんだか楽しくなってくる。
良くない感情ではあるが、こちらを襲ってきた不審者相手ならまぁ……うん。
「さて、ではまず一回目……」
「ま、待て!」
「どうかしましたか?」
「きょ、教会の品をこのように使うなんて、失礼極まりないだろう!」
「そうですね。それじゃあ続けますね。」
「止めろ、止めろぉぉぉ!!!」
暴れる不審者、構わず踏み絵をさせようとするディーゴ、それを眺める俺とモルダ。
傍から見ていると不思議な事この上ない絵面なんだろうな、と思う。
あ、一回目の踏み絵だ。不審者が涙を流している。