「さて、貴方には二つの道があります。」
先程の恐ろしく冷たい表情は鳴りを潜め、柔和な表情でディーゴは不審者へゆっくり近づいて行く。
「一つはこのまま魚の餌になり、破門されたまま悪行だけが残る事で死後に永遠の苦痛を味わう。」
しかし声は平坦に、不審者の耳元で淡々と脅し文句を述べ、
「そしてもう一つは贖い、善行を為す事で少しでも楽園の門を開く事に努める。」
その平坦な声のまま希望を与える。
「さて、主であればどちらの人間に救済をもたらしたいと考えるのでしょうか?」
「…………!」
最後の一言を告げ終え、ディーゴは不審者から離れた。
彼の言葉は希望を失って項垂れていた不審者に響いたようで、顔を上げてディーゴに視線を投げかける。
先程まで光を灯していなかったその眼には、諦めきれないと言わんばかりの渇望の火を宿していた。
「さっきまで俺の事を非難してた奴のやり口とは思えないな。」
「今後の進退を鑑みて、舐められたまま終わる訳にはいきませんので。」
踏み絵の件であたかもヤバい奴みたいな扱いをされたままなのは釈然としないので、先程こちらを非難して来たディーゴの説得の手口に軽く皮肉を言う。
それに対し、彼は特に気にしていないように、暗に『当然の事をした』と返す。
その姿を見て、俺も堂々と『これが一番効率的だ』と主張した方が良かったのかと感じさせられた。
まぁ、これ以上この件でぐちぐち言うつもりは無いし、不審者の話を進めよう。
「取り敢えずお前の名前を教えてくれないか?」
差し当たっては不審者の名前を尋ねる。
いつまでも不審者呼ばわりでは不便だし、最初の問いかけとしては軽い者の方が良いだろうと言う考えもあってそれを聞いた。
「ヴェンティセイ……」
「ヴェンティセイか。」
「…………」
「どうした、ディーゴ?」
「いえ、質問を続けましょう。貴方はウハヤエ教のいずれかの人間に差し向けられた。間違いはありませんね?」
「無い。」
不審者はヴェンティセイと名乗る。
それを聞いたディーゴが訝し気な表情を浮かべているのが見え、気になって問い掛けるがはぐらかされた。
質問はそのまま続き、予想通り教会の人間であることが確定する。
流石にこの流れを断ち切ってディーゴに尋ねる訳にもいかず、話を続ける。
「今回の襲撃任務、何が目的ですか?」
「この男たちと、もう一人、女を殺す事。」
「!!!」
「まぁそうだろうなぁ。」
一方のモルダは何事も無いかの様に振舞うが、俺はいざ自分たちが狙いだと言われると、驚きを隠せない。
「なんで俺たちが狙われたんだ?」
「理由は聞いていない。」
ではその狙われた理由は何か、それを問うが明らかにならない。
黒幕は下手人に動機までは明らかにしていないようだ。
「では誰から命じられましたか?」
そしてディーゴは最も重要な情報をヴェンティセイに尋ねる。