異世界転生後輩   作:一之三頼

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懲戒解雇ですね

「…………」

「もう一度だけ聞きましょう。次は有りませんよ。誰から命じられましたか?」

 

黒幕を裏切る事に悩んでいるのか、ヴェンティセイは答えない。

ディーゴは再び尋ね、そして暗に『答えなかった場合は始末する』と態度で示す。

 

「……分からない。」

 

僅かばかりの沈黙ののち、ヴェンティセイは口を開くが、その答えは有って無いようなものであった。

 

「分からない?誰が自分に命じたのか分からないのですか?」

「それって相手の事を名前が分からないって事か?それとも本当に何も分からないのか?」

「顔を合わせて命令されない。名前も聞いていない。ただ扉越しに任務を命じられるだけだ。」

 

見た目が分かっているなら、絵に描いてもらうなり、特徴を教えてもらうなり出来たかもしれないが、それすらも分からないようだ。

扉越しとなると声くらいしか分からないが、余程特徴的な声をしていない限りは伝えるのも難しいだろう。

 

「でもそれって間違った任務に就く可能性とか、本来命令する奴じゃない奴から命令されたりすることもあるんじゃねぇか?」

「向こうはこちらの名前を知っているし、任務を命じられる時に符丁を示される。それで判別する。」

 

モルダの疑問も尤もで、ありていに言ってしまえば無関係の人間に騙されたり利用されたりするのではないだろうか。

俺もそう思ったが、どうやら対策をしているようで符丁、言うなれば暗号、合言葉のようなものを用いているようだ。

 

「ちなみにその符丁ってのはどんなのだ?」

「相手がこちらの部屋の前でドアを何回かノックする。そして聖典を諳んじたら、こちらは諳んじられた節の数にドアをノックされた回数分の数字を足した節を諳んじる。これが為されて初めて任務が言い渡される。」

 

興味本位で聞いてみたが、何とも難しそうと言うか、複雑と言うか……

聖典を諳んじるって、聖職者なら誰でも出来るのだろうか?

俺も読み込んだわけでは無いが、ぱっと見たところ、結構分厚くて中身の情報量も多そうに見える。

まぁでも、それくらいやった方が安心ではあるか、と思い納得する。

 

「それで、どうやって侵入したのですか?重要性の低い建物ではありますが、出入り口には見張りを置いています。警備に穴があるのであれば把握しておきたいですね。」

「裏口の男に金を握らせたらアッサリ通された。」

「彼は商会組合に情報共有をしたうえで懲戒解雇ですね。少なくともうちの商会とルーメンにある商会、その支部にも情報が伝達されるでしょうから、今後は余程遠くに行かない限り再雇用の芽は無いでしょう。」

 

ディーゴが侵入経路について質問すると、返って来た答えはヒューマンエラー、と言うか収賄による不正だった。

それを聞いたディーゴはとても冷たい笑顔で一人の職員、いや元職員の去来を決定する。

まぁ買収されたのだから当たり前の反応だが。

 

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