「では次に、もう一人の襲撃犯についても教えてくれますか?」
「……分からない。」
「分からない。また『分からない』ですか。」
「特定の誰かと組んで仕事をする事がない。大抵は顔も名前も能力も知らない人間と組まされて動く。」
どこまでも徹底して情報を機密にしようとするようだ。
それほどまでに知られたくない、と言う事か。
しかし……
「任務で一緒になる人間すら分からないのは仕事にならないんじゃないか?」
「誰かと組んで動く場合は予め集合場所と時間が決まっている。その上でさっき話した符丁で通じ合うから問題ない。」
「面倒くさいと言うか、効率悪そうだな……」
「同じような情報しか持っていないだろうが、確認したいなら本人に聞けばいい。俺にした事と同じことでもしてな。」
やり口がとても煩雑で思わず呆れの声が零れる。
しかもさり気なく犠牲者を増やそうとしてるぞ、こいつ。
教義で善行とか楽園とか言ってる割に、やってる事は悪行だ。
最後の一言があったせいで自分が味わった苦しみを他人にも与えたいと考えているようにしか見えない。
ともあれ、もう一人の襲撃犯にも一応裏を取る意味でも尋問をした方が良いだろう。
「それと、一つだけ訂正する箇所がある。」
「訂正?」
「『もう一人の襲撃犯』と言っていたが、この任務に割り当てられた人間は三人いた。」
「三人……?」
「待てよ、それってもしかして……!」
ヴェンティセイの訂正、襲撃犯の人数。
それを聞いたディーゴは顎に手を当てて考え込み、俺も昨夜の事を思い返してみる。
そしてすぐに思い当たる節があった。
それはレオノーラとナーヤの部屋に居た襲撃犯が投げ飛ばされてすぐ、外から聞こえて来た叫び声。
『火事だーーー!!!』
そう叫んだ人間は何処にもいなかった。
消火に協力してくれた数人の人々の声はいずれも違っていたし、何よりも全員が叫びを聞いて駆け付けてくれたのだ。
つまり第一発見者は何処にもいなかった。
もしもその第一発見者が襲撃犯の仲間だとしたら?
そもそも第一発見者が火を放ったのではないか?
では何故火を?
それも道の真ん中で特に建物へ延焼して被害が出たりしないような位置で……
騒ぎを起こす事が目的だった?
何故騒ぎを起こす必要があった?
もしかして襲撃犯の二人が逃げる時間を稼ぐためか?
そう考えれば辻褄が合う。
点と点が線で繋がっていく。
「ディーゴ!」
「三人目の襲撃者、小火騒ぎを起こした人間、ですね?」
「あぁ!」
どうやらディーゴも同じ考えに至ったようで確認をするように返答をする。
今後どう動くかはまだ決まっていないが、この情報は方針決定に影響を及ぼすだろう。
ヴェンティセイを捕まえられた事は大きな成果と言って間違いない。
これこそ不幸中の幸いと言うやつだ。