「大聖堂に……はぁ!?大聖堂!?」
「随分と大胆な選択ですね。」
「正気とは思えねぇ。が、面白そうだぜ!」
ディーゴが予想だにしていなかった事を言い出した。
しかも『行きましょう』って事は大聖堂に向かう人員には間違いなく俺たちも含まれているだろう。
一方のレオノーラとモルダは僅かに驚きながらも、特に困惑はしていない。
「落ち着いて考え直せ!大聖堂って言ったら俺たちを殺そうとして来た奴がいる所だろう!?そんな所に行ったら今度こそ殺されかねないぞ!」
「落ち着くのはリョータ、貴方ですよ。」
「これが落ち着いていられ痛っ!」
「落ち着いたか?」
「……あぁ、けど何も頭を引っ叩かなくたっていいだろう。」
思い直すようにディーゴの肩を掴んで揺さぶりながら説得を試みる。
しかし逆に俺の方が諫められた挙句、モルダに頭を叩かれてしまった。
一旦ディーゴからは手を放し、話を聞いてみる事にしよう。
「話を戻しますが、大聖堂に行って襲われることに関しては心配しなくても良いでしょう。」
「理由を聞いても良いか?」
「そもそも彼らは『暗殺』と言う手段を用いて人目に付きづらい深夜に仕掛けてきました。確かに成功率の面でその選択をするのは分かりますが、それならば前回潜入した時に殺害されていてもおかしくはありません。」
「そりゃあ俺たちとアニーには関わりがあったし、彼女の前で知り合いを殺すなんて立場的に出来なかったんじゃないか?」
「だとしても『入口まで送る』なり何なり、適当な理由を付けて引き離し、その上で潜入を罪に問う事で始末する事も出来たはずです。言ってしまえば迂遠なんですよ。」
言われてみれば、確かに殺せるタイミングはあったはずなのに、わざわざ一度返してから刺客を送り込むなんて余計な手間をかけているように感じられる。
ここに至ってようやくディーゴの言わんとする事が理解出来た。
「つまり表立って俺たちを害する事は出来ないって事か?」
「立場や地位、名声と言うのは武器になりますが、同時に足枷にも成り得るものです。教会の人間ならば教会内部で殺人事件や誘拐事件なんて起こしたくはないでしょうし、もしもボクたちが帰らなければどうなるかは相手も想定しているでしょう。」
「帰らなければ、どうするつもりなんだ?」
「商会の持ちうるコネクションを全て使って教会の醜聞を広めます。次期国王陛下の耳にも間違いなく届くでしょうし、陛下は親転生者派と噂のお方。ウハヤエ教への扱い方にも確実に影響が出るでしょうから軽はずみな行動は出来なくなります。」
大聖堂に行っても襲われる心配をする必要がない理由が、想像以上に大事になっていた。
アルステッドが転生者に親しみを以て接しているのは事実だが、流石に知り合いの数人が害されたからと言って王国を揺るがすような事はしない……しないよな?
なんだか不安になって来た。
次に会った時にルーメンでの話をする場合は言葉を選ぼう。