俺がアルステッドの事を思い浮かべている間も、ディーゴは話を続ける。
「もっとも、こちらが先にそのような手段を採れば教会側もなりふり構わず動き始めるでしょうから、あくまでも見せ札となりますが。それに舐めた真似をしてくれた相手には反撃こそしたくはありますが、別に教会そのものを破壊したいわけでもなければ、今後の関係を全て断ちたいわけでもありません。」
「なるほどな、レオノーラとモルダは最初から危険が無いって分かってたのか。」
「なるようになるかな、と。」
「どうせここに居ようが教会に行こうが狙われるだろうし、あんまり関係ねぇって思ってたぜ!」
「覚悟決まりすぎだろ……いや、まぁ実際その通りっちゃその通りなんだけどさぁ……」
一方のレオノーラとモルダは別にディーゴの言う安全性については一切気にしていなかったようだ。
俺は仲間たちに対して頼もしさと呆れのどちらを感じれば良いのだろうか。
前向きと言うか、泰然自若と言うか、考え無しと言うか……
取り敢えず一旦この仲間たちの事は置いておくとして、
「襲われる心配をする必要がない理由は理解出来た。で、大聖堂に行って何をするんだ?」
大聖堂に向かう目的を発案者のディーゴに問い掛ける。
流石に理由もなく襲撃犯の根拠地に向かう訳がないし、まさか無事であることを煽る為に行くとも思い難い。
「教皇猊下に直談判をさせて頂きましょうか。」
「教皇!?」
確かに抗議と言う意味では特段おかしなことではない。
しかしその相手は想像をはるかに上回る存在だった。
「凄いな、ディーゴ。そんな偉い人にコネクションがあるなんて……」
思わず呆気に取られながらも、俺は素直に賞賛の言葉を口にする。
確かに教会とは日頃から取引をしている話は聞いていたが、まさかそんな大物とも繋がりがあるとは想像もしていなかった。
「少なくともリョータは人の事を言えないと思いますよ。」
「それな。」
「いや、俺はそんな……あー……うん、言われてみれば、それもそうか。」
ディーゴの反論にモルダも同調し、最初こそ彼らの前で手を振って否定しようとしたが、思い返してみるともっともな意見であることに気が付いた。
居たわ、めっちゃ偉い知り合い。
ついさっきも思い起こしていた人物。
次期国王、アルステッド。
教皇、宗教のトップと並べても見劣りしない存在。
ラディウムから付き合いで、親しみやすい振舞い、雰囲気、対等な姿勢で話をする事を望まれている点から、国の頂点に座す存在である事が抜け落ちそうになるが、彼との繋がりは凄まじいコネクションであることは疑いようも否定のしようもない。
「リョータは自分が重要人物である自覚をもう少し持つべきかと。」
「自覚、なぁ……そう言われても俺は普通の一般人だし……」
「リョータ自身が普通の人だったとしても周囲がそう見てくれるかは別問題ですよ。」
「う~ん……」
レオノーラからも窘められるが、実感が湧かないものはどうしようもない。
ともあれ、今後どうするかが決まった事だし、準備をして大聖堂に向かうとしよう。