ディーゴに連れられて俺たちは昨日ぶりに大聖堂を訪れる。
彼が予想していたように、何事も無く、ましてや誰かに襲われることも無く目的地にたどり着く事が出来た。
大聖堂も何事も無いかのような、何事も無かったかのような落ち着いた雰囲気だ。
しかし、だからこそ怪しさを感じる部分もある。
「…………!」
俺たちの姿を視認した瞬間にその場を離れる人間、こちらと目を合わせないように別の方を向く人間が僅かにいた。
僅かだからこそ、この場においては強い違和感として残るのだ。
そんな怪しい振舞いをする人間を無視してディーゴは進んで行く。
そして大聖堂の中で反応を示さずに居続けていた教会関係者に話し掛けた。
「やぁ、こんにちは。いきなりで申し訳ないですが、教皇猊下とお話をさせて頂けませんか?」
「ディーゴ商会長。本日はそのようなご予定は伺っておりませんが……」
「緊急の用件でして。」
「うーん……普通の人ならお引き取り願う所ですが、貴方であれば取り次いでも問題は……」
その人物はディーゴから教皇への面会を乞われ、最初こそ断ろうとするが、その後は僅かに逡巡してから首を縦に振る方に天秤が傾く。
いきなりの面会でも許される程の立場と信頼を有するとは、流石はディーゴと言ったところか。
それにしても教皇はどのような人物なのだろうか?
想像もつかないので、実際に会うのが少しだけ楽しみだ。
しかし同時に不安もある。
もしも教皇が厳しい人物だった場合、いや、それだけならまだ良いが、今回の襲撃事件の犯人を擁護するような人物、もしくは裏で糸を引いていたとなれば、厳しい展開になるだろう。
ディーゴがその点を考慮していない訳がないとは思うが、ついその可能性を考えてしまうのだ。
「お待ちを、教皇猊下はお忙しくしていらっしゃいます。後日改めてお越し頂いてもよろしいでしょうか?」
しかしディーゴが話をしている間に考え事をしていると、そこに割って入ってくる人物がいた。
端的に言うと、彼はディーゴと教皇を会わせる事は出来ない述べたのだ。
「おや?教皇猊下が本日ご多忙とは初耳ですね、ウィム殿。」
「う、レ、レナード殿!?」
「よもや主の御前で偽りを申す事などありませぬな?」
「あ、貴方こそ何を仰られますか、背信は許されざる罪ですぞ!そもそも貴殿が」
更にそれに対し、異を述べる人物が現れる。
その人物とは俺たちを助け、そして忠告したレナード枢機卿であった。
彼は中年の教会関係者、ウィムと呼ばれた男を責めるように詰問する。
一方のウィムも口角泡を飛ばし、レナードに対して反論を繰り広げ、これでは教皇に会うどころではないと思っていると……
「皆様お揃いで何やら喧々諤々としていらっしゃいますな。一体何をお話しているのですか?」
「あ、アンジェロさん!」
「「教皇猊下!」」
「教皇……猊下…………?」
更に更に新たな人物が現れ、意見をぶつけ合う聖職者二名に声を掛ける。
その人物は俺の知り合いであり、好々爺然とした人物でもあり、ホッした。
高い地位にある人物では無くとも、仲介をしてくれるのであれば助かる。
しかし当の聖職者二名からは姿勢を正して『教皇猊下』と呼ばれ、それを耳にした俺はフリーズした。