「何故このような所に!?」
「何故も何も、私が大聖堂にいる事がそこまでおかしなことですかな?」
「い、いえ!決してそのような事はございません!」
ウィムが慌ててアンジェロに尋ねるが、そもそも彼がここにいるのは本人の言う通り何もおかしくはない。
むしろ彼が教皇その人であることについて聞きたいところだが、驚愕のあまり声が出ず、
「それで、一体何の話をしていたのでしょうか?」
「そ、それは……」
「猊下のお耳汚しをするほどの話では……」
「ディーゴ商会長、聞かせて頂けますか?」
「教皇猊下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。猊下にお目通りを願いたく馳せ参じた次第でございます。」
「ほっほっほ、そのように堅くならず、楽にして下され。」
「それでは、お言葉に甘えさせて頂きます。」
その間にも話は進んで行く。
ウィムとレナードはアンジェロが関わる事を厭うような物言いをするも、それを遮ってアンジェロはディーゴに語り掛けた。
「猊下にこのような事を申し上げるのは大変申し訳なく思いますが、教会の手の者に商会が襲撃されました。」
「それは誠ですかな?」
「ディ、ディーゴ殿!そのような戯言で猊下のお耳を汚されるなど、許されませんぞ!」
「ウィム、貴方は暫しの間、口を閉じていなさい。」
「偽りではありません。襲撃犯を捕らえ、口を割らせて話を聞きました。」
そしてディーゴの計画通り、教皇、アンジェロに直談判出来た。
アンジェロは驚いた様子こそ無いが、僅かに眉尻を下げて聞き返す。
一方のウィムは口を挟もうとして、喋るなと言われていた。
「その者は今、どこにいますか?」
「商会で待機させています。」
「教会に属しながら、そのような悪行を働くとはなんと許し難い。我々が始末をつけるべきでしょう。ディーゴ殿、お引渡し頂けます?」
「お断りします。」
「何故?」
「そもそもこの件には命令を出した人間がいます。裁くべきはまずその者からでしょう。」
「なるほど、では誰を裁くべきであると?」
「分かりません。」
「分からない?誰に命じられて犯行に移したか分からないと?それでは犯人は教会の誰かに命じられ、商会を襲撃したと?そのような証言は教会に濡れ衣を着せる為に騙っている虚言ではないか!信ずるに値しませんぞ!」
「ウィム、口を閉じているように言ったはずですが。」
「しかし!」
「ウィム。」
「むぅ……」
レナードは冷静に襲撃犯、ヴェンディセイとトレディチの引き渡しを要求するが、ディーゴはそれを断り、命令した人間について言及する。
しかし、それが誰かは分かっておらず、その事を話すとまたしてもウィムが口を挟んでくる。
そしてアンジェロから黙っているように強く言われ、ようやく口を閉じた。
確かに証言だけでは証拠として不足しているが、あの二人を引き渡せば間違いなく証拠を隠滅され、闇に葬られるだろう。
故にここで引き下がって『偽証を用いた不逞の輩』として彼らを処分させるわけにはいかない。