「しかしこの者の言う事も道理です。ディーゴ殿、商会が襲撃されたことに関しては痛ましく思いますが、その証言だけで教会に犯行を教唆した人間がいるとは言い切れませんな。」
アンジェロを説得しようにも、証言以外の材料が無い。
このままでは有耶無耶にされてしまう。
そう思っているとディーゴが話を続ける。
「この話にはまだ続きがあります。襲撃犯は三名おり、うち二人は捕らえました。そして残る一人は捕まえませんでした。」
「捕まえ『られなかった』では無く、捕まえ『なかった』ですか。」
「商会の者に後を付けさせたところ、その者は最終的に教会の敷地内に入り、そのまま出てきませんでした。」
俺も気付かない間に、そんな事をしていたのか。
火事に気を取られて、ディーゴが追跡を命じていた事に全く気付いていなかった。
しかしそれならば、あそこまで厳しい尋問を行う必要はなかったのではないだろうか?
まぁ犯人の証言も説得の材料には成り得るので引き出したかったと言う事だろう。
そして尋問の際に俺が踏み絵を提案した事は絶対に言わないようにしなくては……
ヴェンディセイの反応を見るに、知られたが最後、投獄どころか命を奪われかねない。
襲撃されて命を狙われたわけだが、少なくともこの場では安全なのだ。
藪をつついて蛇を出すなんて御免被る。
「他の出入り口から出て行った可能性もありますが。」
「五名の部下に追わせ、四方にある外に繋がる道のそれぞれに監視の者を派遣しましたが、誰も犯人が出てくるところを目撃していないのです。」
俺がディーゴの手腕に感心している間にも話は進んで行き、レナードの反論を否定しつつ襲撃犯は教会の敷地内に逃げ込んで出てこなかったと告げられる。
「しかし教会には秘された通路も多いです故、そこを通って逃走した可能性もありますぞ。」
「それこそ自分は教会の関係者であると言っているような物でしょう。それとも、教会では説法の際に隠し通路の場所も広めているとでも?」
「…………」
それでもレナードは反論を繰り広げるが、ディーゴの意見を受けて眉間に皺を寄せながら閉口する。
実際、以前捕らえられた時にナーヤが助けに来てくれるまで、隠し通路があるなんて思いもしなかった。
その隠し通路もレナードに教えてもらったらしいし、教会関係者でもない一般の人間が教会の隠し通路を把握し、教会に罪を擦り付ける形で逃走経路に組み込むなんて不可能だろう。
まぁ教会の評判を落とす為に、もしくはディーゴ商会と関係を悪化させる為に、徹底的に情報を収集して実行された策謀と言う可能性もあるかも知れないが、それは陰謀論が過ぎると言うものだろう。
そもそも、そんな事を調べて周っているとしたら不審者として捕まって牢屋行きだろうし。